30000HIT御礼企画
□小型犬、臨也
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昨日は帰宅が遅かったせいか、夕方ぐらいに眠気が襲ってきた、今日は休日やる事もないし臨也……愛犬にはご飯をもうあげたので心配するような事はない
どうせなら寝てしまおうと思いソファーで横になり目を瞑るとスッと一気に睡眠体制に入っていき、私の意識は瞬く間になくなった
急に体になにかが掛けられた感じがして目が覚めた、しょぼしょぼとする目を擦りながら周りを見渡すと見慣れた黒色が見えた
どうやら愛犬が毛布を掛けてくれたようだ、なんて頭のいい愛犬なのだろう、私の愛犬は寝ている私を静かに見下ろしていた……見下ろして……いた?
私はソファーで寝ていた筈だ、ソファーの上にいる私を犬の臨也が見下ろすなんて不可能な事だ、それによく見てみるとあれは本当に臨也なのか?犬独特のふさふさしている耳は分かる、だがその下は明らかに人型だ
犬耳……地球上には様々な趣味を持った人がいるがその中でも恐らく特殊な方の娯楽、犬耳狐耳猫耳エトセトラ……そんな特殊な方であろう犬耳のアクセサリーを付けた不審者が私の目の前にいる、幸い不審者は向こうを向いているので私が目を覚ましているのには気が付いていない
このままたぬき寝入りを決め込んでもいいのだがその隙にヘソクリに手を出されてしまったら私はきっと破産する
「…………」
意を決し、息を殺しながら身体を起こして不審者との距離を詰める、よく見るとこの不審者私の部屋着を着ている……決定、コイツは一発殴った後警察に突き出しこの部屋着は燃やそう
頭の中でこの不審者の処刑方法を考えつつも慎重に行動に出る、しかし不審者のある行動によって私の行動は水の泡になった
ピコピコッと音がしてもいい程の速さで不審者の頭の上にある犬耳のアクセサリーが動いたのだ、なんとアクセサリーは可動式だった、冷静にそう思えばよかったもののいきなりの事だ、私は本当に犬耳が動いたと勘違いしてしまい
「……えっ」
と気の抜けた間抜けな声を出してしまったのだ、それが聞こえたのか不審者はゆっくりと私の方を向いた
「マスター、起きてたの?」
嬉しそうにでも驚いたような声色で不審者は私にそう言った、振り向いた不審者は悔しい事にイケメンの分類に入る顔付きだった、それよりもだコイツは私の名前を何故か知っていた
知らない人にしかも不審者に自分の名前を呼ばれる程鳥肌が立つ物はないだろう、それはきっと恐怖や嫌悪感で生理的に立ってしまうものだと思う
ドクドクッと嫌な音を立てながら心臓が鳴り響いた、息も何故か荒くなって脂汗まで出てくる始末、そんな私を不審者はただ不思議そうに見ていた
「……マスター?」
「……ッ私の名前を……呼ばないでよ……誰よ、アンタ」
また私の名前を当然のように呼んでくる不審者、その声が鼓膜を震わした時またゾクリと鳥肌が立った、ここで負けてはいけないと私は震える手を無理矢理握りながら声を出した、情けない事に私の声は震えていたが不審者の耳には届く
私の言葉を聞いて不審者は一瞬目を見開いたがすぐに元の細めの目に戻り、ニコッと口角を上げて楽しそうに
「俺はマスターの飼い犬の臨也」
と高らかに声を発した、どうやらこの不審者はストーカーで特殊な趣味で思い込みが激しい人物のようだ、よく見てみるとコイツの腰辺りには犬の尻尾の様なものと首には首輪までついている
ここまでくるともうコイツを怖いとなんて思わなくなってくる、ナイフを持っていたとしても私は多分恐怖心よりも怒りの方が勝ってしまうだろう
そう思った瞬間私は不審者の脛を蹴り飛ばしていた、痛みにもがく不審者の首輪を無理矢理掴んだ時外れてしまい、その直後目の前には愛犬が脛辺りを痛そうに舐めているのを見て思わず目眩がしたのはまた別の話だ