30000HIT御礼企画

□大型犬、元親
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私の飼い犬は産まれつき片目が見えていなかったようで、ペットショップに売れ残っていてとても寂しそうだった

元親……名前をつけたのは飼ってからだが、元親を一目見た時私はこの子を飼わないといけないと勝手に思った

店員は売れ残りがいなくなるからか、終始気持ちが悪くなる程に口元を釣り上げていたのを今でも思い出す

元親を飼ってすぐにした事は、片目を隠す事だった、なんとなく元親自身も気にしているようだったから私は元親の白色の毛並みに似合う紫の眼帯をミシンで作り、元親に着けた

気に入ってくれたそうでキャンキャンと鳴く元親を見て、私もなんとなく顔が綻んだ

元親は大型犬で、今となっては昔のコロコロとした可愛らしい毛玉の姿はもうなくて、今はツンツンとした毛がなんとなくワイルド感を引き出すカッコイイ犬だ

そう、元親は犬なのだ、それはどう足掻いても変わる事はない絶対的な事……なのに……目の前にいるこの男は……


「……不法侵入です、直ちにこの部屋から出てください、そして警察に出頭してください」

「……えっ」

「その前にその片目につけている私の愛犬の眼帯を返してください」

「……いや、俺……俺が元親なんだが」


呆れた事に自分が元親だと言い張っているのだ

状況を簡単に説明しよう、昨夜はいつものように元親をベッドルームのカーペットに連れて寝るのを確認してから私はその横のベッドで寝た、そして目を覚ますともう元親の姿はなく探していたらクローゼットの前に元親の眼帯と犬耳をつけて少し小さめのズボンだけを履いた不審者が立っていたのだ

上半身は何故か裸で、よく見ると履いてるズボンは私のズボンだ、これは新手の変態なのかと疑った


「もう一度警告します、直ちにこの部屋からズボンと元親の眼帯を置いて出てってください」

「いや、だからマスター俺は……」


なんと驚く事にこの不審者は私の名前まで調査済みだそうで、軽く名前を呼んできた

思わず体をビクつかせると、不審者は大きな溜め息をついた後、頭を掻きながら


「いいか……信じられないだろうがよく聞けよ……俺はお前の愛犬元親だ、もちろん今はこんな姿だから信じられないだろう、だが本当だ、ちなみに原因はおそらくマスターが昨日の晩俺につけた新しい首輪のせいだと思う」


と、現実味のない事をペラペラと喋り出した、そんな不審者の言葉をもちろん私は信じられなくて、勇気を出して一発頬を平手打ちした

パシッと乾いた音がした、痛い……夢ではないらしい、なら目の前の不審者と戦わないといけない事になる……そう思ったら物凄く面倒くさくなり溜め息をつこうとした時、目の前の不審者が顔面蒼白でボーッと立っていた


「……?あの……」


思わず声をかけた時、不審者は急に慌て出し、初めから分かっていたようにタンスの上にあった救急箱を私の目の前に持ってきて


「おまッ……マスター何やってんだよ!!痣になったらどうすんだよ!!」


と、自分の事のように私の頬の事を言ってきた、不可解な行動に思わず目を白黒させていると、不審者は小さめに切ったシップを私の頬につけた

思わず私が不審者を退かそうと手を伸ばした時、不審者の目がなんとなく元親に似てるような気がして私の動きはピタリと止まってしまった

するとそれに気が付いたのか不審者……もとい、元親もどきはニヤリと歯を見せて笑ってきたので思わず目潰しをしてしまった

攻防戦の末、しばらく家に置く事になってしまったがなんとなく行動が似ていたりするので最近は疑いよりも信じる気持ちの方が強くなってると思う


「……元親、買い物行くけど何かいる?」

「マスター今……俺の名前……」

「何?何かいるかって言ってんの」

「……何でもねぇ……俺も行くわ」

「いいけど帽子被ってね、クソ犬耳」

「ひでぇ!!」


元親もどきと買い物に行く事になったが、終始元親もどきはヘラヘラ笑っていたので少し名前を呼んで後悔した

まだ元親だという事は断言できないが、なんとなく元親だろうという気持ちは出ているがそれは秘密にしておく
 

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