30000HIT御礼企画
□大型犬、DIO
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いつものように仕事を終わらせてマンションの鍵を開ける、すると私がドアノブを捻る前に扉は開いた
傍から見たらホラー的な出来事かも知れないが私は特に怖がらず小さく溜め息をついた
「また勝手にあの首輪つけたのDIO?」
「マスター、おかえり」
若干噛み合ってない会話をしながら私は目の前に立っている巨大な金髪の人物を手で軽く押しながら部屋に入った
DIOは私の愛犬だ、金色に近い毛並みの大型犬で少しわがままだが散歩の時のマナーや外出時の落ち着きは偉い子、だが目の前に居るのはただただ巨大で首には緑色のハートが付いた首輪をして金髪に混じって犬耳を生やし尻尾も生やした男ではないか
信じられない事かもしれないがこれが私の愛犬DIO(人間ver)だ、イタイ人だと思われるかもしれないが本当の事だから仕方ない
「今日は少し遅かったが何かあったのか?」
「別に……あー、確か後輩に晩ご飯誘われたんだった」
「…………」
「大丈夫だよ、DIOが居るんだから早く帰ってくるから」
「……フン、このDIOの飼い主なのだからしっかりと最期まで面倒を見ろよマスター」
リビングに向かって歩きながら後ろからノシノシと着いてくるDIOとそんな会話をする
DIOは犬だからか結構独占欲が強く、私の帰宅が誰かと一緒にいて遅れると結構面倒な事になるのだ、特に男子関係だと不機嫌になる、嘘をつこうにも相手は犬、嗅覚が凄まじいので誤魔化しは不可能だ
上着をハンガーにかけて、いつものところに引っ掛ける、そしてそのまま冷蔵庫に向かって歩き、適当に食材を取り出す
「DIOはそのまま食べる?」
「ああ、二、三日は人間の姿でいるつもりだ」
「犬だとなにかと過ごしにくそうだもんね」
適当に食材を調理しながら向かいの椅子に悠々と座っている愛犬に話しかける、DIOは時々こうして勝手に人間の姿になっては数日で飽きたように犬に戻るのだ
厄介な首輪を買ってしまったと思いつつ、こうして愛犬の素直な気持ちを知るのは世界で私だけだと思うとなんとなく特別な感じがしていい気分だ
そんな事を考えていたためか、包丁で手を少し切ってしまったようで、指先に痛みが走った
「った……うわー血だ……」
反射的に肩をビクつかせながら指を見るとぷっくりと円の形をしながら血が溢れてきた、確か表面張力が働いているんだったっけ、なんて考えている間に血が溢れ出してきた
思ったより深く切っていたようでその血が止まる気配はない、早く止血しないと下手したら病院行きかもしれない
だがそんな冷静な考えとは裏腹に久しぶりに指を切ったので止血の仕方が良く分からない
「うわあ……どうしよう……!!」
パニックを起こしていると騒がしい私に気が付いたのかDIOがこちらにゆっくりと近付いてきた
DIOに絆創膏を持ってくるように頼んだがDIOは言う事を聞かず私の目の前までヌシヌシと大きな体を揺らしながらやってきた
何、なんか悪い事をした!?なんて考えているとDIOは怪我した私の手を掴み、血が出ている指をくわえた、所謂"料理してたら恋人が指を切って応急処置だと言い血を舐めるシチュエーション"だ
だがアレは他人の血を舐めるというある意味危険な行為なのだが、DIOは犬ながらもそれをやったのだ、感染症でもおこしたら大変だ
「ギャアアア!!DIO何やってるの!!」
「ドラマでやってたからな」
「そのドラマはフィクションです、本当にやったら危ないんだから……」
叫びながらDIOの口の中に入れられた指を引っ張り出し、水で洗いながらDIOに説教をする
そんな私の言葉にDIOはニヤリと口角を上げて
「本当にこのDIOが大切なのだな、仕方のないやつよ……」
と満足そうに呟いて、さっき座っていたソファーに戻って行った
もしかするとDIOは帰ってきた時に話していた後輩に嫉妬でもしていたのか、そう思うとなんとなく自分の愛犬が可愛く見えて、思わず笑ってしまった