30000HIT御礼企画

□中型犬、十四郎
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仕事帰りになんとなくペットショップに立ち寄り、愛犬、十四郎の首輪を新しくしようと物色する

十四郎に似合う色を重点的に見ていると、ふと目に止まった首輪があった

色は濃い緑、どちらかといえば黒に近いが、無駄な装飾もなく、所々にある黄色のアクセントも十四郎に似合いそうだ

一目惚れして、迷わずそれを購入する事にした


「ほら、十四郎、新しい首輪だよ」


モフモフの毛を私の足に寄せている十四郎に首輪を見せながらそう言う

クールな十四郎だが、尻尾が取れそうなぐらい揺れているので喜んでいるのだろう

表には出さないが、嬉しそうにする十四郎に私も嬉しくなって、そのまま首輪を付けた

思った通り、十四郎によく似合っていて、私は十四郎をわちゃわちゃと撫で回した

そして、仕事の疲れもあって、十四郎に首輪をつけてからすぐに寝る事にした、明日は休みだが、朝一に新しい首輪で十四郎の散歩に行こうと考え、眠りについた

一番最初に違和感を感じたのは目を覚ましてすぐだ

目を覚ますとすぐにいい匂いが部屋に充満している事に気が付いた、一瞬親が来たのかと思ってしまうが、それなら真っ先に私を起こす筈だ

疑問に思っていると、私の寝室の扉が開いた

不法侵入者かと警戒した時、私の目に写ったのは、サイズを間違えて買ってしまいタンスの肥やしになってしまった私のジャージ上下を着て、何故か犬の耳と尻尾、そして首輪をつけた黒髪の男の人だった


「目を覚ましていたのかマスター」

「…………」

「?どうした?お前は朝は強い方だろ?」

「誰だよッ!!!!」


馴れ馴れしく私にそう言ってくる男の人に私は今日一番の大声を出してツッコミを入れた

そんな私を見て、目の前の黒髪の男の人はポカンとしている


「誰って……十四郎だ」

「……は?」

「お前の愛犬、中型犬の十四郎」

「…………十四郎……?」

「そうだ、昨日は新しい首輪、ありがとうな」

「……十四郎は犬ですけどッ!?」


黒髪の男の人の言葉にますます疑問が湧いてしまう、この男は何を言っているのか、少なくとも私はストーカーとかされていたりはしていない筈だ

だが、この目の前の男はペラペラと昨日の私の行動を話したり、自分が十四郎だと言う、そんなファンタジーな事があってたまるか


「いや、本当は俺も驚いてんだよ、気が付いたら人間になってるし……」

「本当に誰ですか!!警察呼びますよ!?」

「待て!!マスターは俺が保健所に連れてかれてもいいのか!?」

「いっそのこと牢屋に連れて行かれろ」

「…………マスター……」


男の言葉に私は冷たく答える、そんな私の言葉を聞いて男はあまり顔には出していないが何故か尻尾がしゅんと項垂れている

なんとなくその姿が犬の十四郎と被ってしまったが勢い良く振り払う

コイツはただの不審者だ、惑わされるな、ちょっと十四郎に似てるからって……!!

そう思い、私は動きを止めている男を退かし、寝室を出て十四郎を探す


「十四郎!!どこ!?十四郎!!」


私が犬の十四郎をあの不審者に突き出せば諦めるだろうと思い、十四郎の名前を呼ぶ

十四郎はいつもいい子だからすぐに私の声に反応するのだが、一向に来る様子がない


「なんだ?マスター、どうかしたのか?」

「お前は呼んでないわ!!」

「でも十四郎、十四郎ってよ、俺の名前呼んでんじゃねぇか」

「……いい加減に……!!」


まだ、自分が十四郎だと言い張る不審者に一度ガツンと言ってやろうかと思い、勢い良く振り向いた時、不審者の右手首に薄らと縫い目が見えた

確かに十四郎は赤ちゃんの時、親に強く噛まれて右手首を何針か縫った事がある、が、だからと言ってコイツが十四郎と言う理由にはならない

一瞬、不審者の言う事を信用してしまいそうになったが、馬鹿げた考えは振り払う


「……十四郎、反省のときのアレやって」

「なっ!?」


不審者に静かにそう言うと、驚き出した不審者

十四郎は悪い事をした時、反省として、三回回ってワンと鳴くのをやらせている

もしこの不審者が信じ難いが本当に十四郎なら、主人の命令を守り、三回回ってワンと鳴くだろう、逆に本当の不審者だと反省のときのアレは分からない

不審者の可能性が高いので、警戒しながら見つめる

すると、不審者は気まずそうに頭を掻きながら、やれば信じてくれるのかと言ってきた、そんな不審者の言葉にゆっくりと頷くと


「……チッ…………ワンッ!!」


と、舌打ちをしながらだが、確かに三回回ってワンと鳴いた

ちょっとカッコ良くやろうとした所に笑ってしまったが、これでこの不審者は本当に十四郎だと言う事になった

溜め息をつきながら信じると言うと、十四郎は少し顔を赤くさせて私の肩に顔を押し付けてきた


「……本当に十四郎なんだなぁ」

「だからさっきからそう言っているだろマスター」

「……信じ難いけど、その首輪とか、手首の縫い目とか、行動が物語っているもんね」

「……フンッ……」


戸惑いながらも十四郎の背中を撫でると、嬉しいのか尻尾を取れそうなぐらい振り出した

犬の癖に相変わらずツンデレだな……なんて思いながら十四郎が満足するまで背中を撫で回した
 

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