10000HIT御礼企画
□22、爪先
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22、爪先
「ナマエ、正直に言え」
「……はい」
「俺のマヨネーズどこやった」
「それは私を壁ドンしてまで言う事ですか?」
私、ナマエは真選組の女中だ、そんな私は実は真選組鬼の副長、土方さんと付き合っている
まだ付き合って間もないが、付き合う前からの仲なので、お互いに理解していると思っている
だが、私はあるタブーを犯してしまった、土方さんと付き合っている私が決してやってはいけない事だ
「……いいか、ナマエ、お前もよく知っている通り俺はマヨネーズが好きだ」
「……はい」
「だからこそ、人に取られないようにマヨネーズ専用の冷蔵庫だってある」
「そこまでしますか」
「いいから聞け、昨日まではマヨネーズは十以上は行くほどあった」
「どんだけ買い溜めてんですか」
「なのになんで今朝見たら一本もないんだ!?」
「……」
さり気なく一言ずつに、土方さんが言った言葉にツッコミを入れる、しかし、ある言葉にツッコミを入れるのを忘れてしまった
土方さんの読み通り、マヨネーズを隠したのは私だ、だが、それには理由がある
ちゃんとした理由とは言わないが、何と言うか……自分でも感情的に動いてしまったのを反省している
だが、マヨネーズ愛の土方さんが私の取った行動を許す筈も無く、今こうして俗に言う壁ドンまで聞いてきているのだ
知ってますか土方さん?壁ドンってヘタしたら犯罪行為らしいですよ
そんな事を呑気に思い浮かべていると、土方さんは私が頑なに理由を言わないためか、溜め息をついて座ってしまった
なんとなく、私も土方さんに続いて座ると、土方さんは視線だけ動かして私を見たあと、手馴れた手つきで煙草を吸い始めた
その一連の動作を見ていると、なんとなく隠し事をしてはいけないような気持ちになってしまう
なんだこれは、これが土方マジックか……
そんな事を思いながら、恥ずかしいが何故マヨネーズを隠したのか話す事にした
「土方さんは……」
「あ?」
「土方さんは、ずっとマヨネーズばかりで……ちょっと嫉妬しました」
「…………」
俯きながら言うと、自分でも馬鹿げた理由だと思う、絶対土方さん引いてるよな
そう思っていると、土方さんは溜め息をつきながら私の頭を少し強めに叩き
「そんな馬鹿げた考えは早く捨てろナマエ」
と、言って部屋を出て行こうとした、そんな余裕を見せる土方さんに少しムカついて、私は土方さんの足を掴み、自分の方に向けた
予想外の事に土方さんは背中から倒れ、痛みで目を瞑った
その瞬間、私は土方さんの爪先にキスをした
土方さんはパチクリと瞬きをして、私の方を凝視していたが、土方さんが何か言う前に私は先に部屋を出た
実は自分でやって恥ずかしくなったのは言わない
爪先……崇拝(尊いものとして、心からうやまうこと)