10000HIT御礼企画

□21、足の甲
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21、足の甲


私はこれでも一国を守る武将に付き従う部下だ

主はいつも私を信用してくれている、戦を無事終えると、私の頭に手を置いてゆっくりと撫でてくれる

そんな主が私は大好きだった、主も私を宝物だと言ってくれた

あんな奴が私達の領土に来るまでは


「少し物を尋ねたいのだが、卿の宝はなんだ?」


あの男はまるで当然のように私の主の茶室にいた、そして口角を不気味にあげてそう言ってきたのだ

私の前にいた主はすぐさま刀を抜いた、無論私も

だが、一瞬、黒い羽の様な物が宙に浮かんだ時、私の主の首には忍によって刀を突き付けられていた


「ッ!!主!!」


慌てて主の元に向かおうとしたが、主は手を出して私の動きを制した


「もう一度聞こう……卿の宝はなんだ?」


男は主に近付き、頬を乱暴に掴んでまた同じ問いをした

主はそんな男を鼻で笑った、そして一瞬私の方を見て、宝はないと言った

それを聞いて、男は何かを察したのか、主から手を離して、私の方へ寄ってきた

刀を構え直している私を見て、主は逃げろと言ったが、主を置いて逃げる部下がどこにいる


「何者だ……貴様!!」

「何、私は宝が好きなだけだ……それが、例え生き物だろうと、私の物にしたい、欲望に忠実なのだよ」

「……主の宝を手に入れれば、主は助かるのか?」


男の言葉に私はそう答えた、それを聞いて主は息を呑む

しかし、男は主とは逆に、また口角を不気味にあげ、顎に手を添えた


「宝次第だが……よほどの事がない限り助けるだろうな」


それを聞いて、私はゆっくりと刀を落とした

そんな私の行動に、男は関心の声を上げ、主はやめろと叫ぶ


「……卿の宝はこの娘か?」


男はゆっくりと振り向き、主にそう聞いた、主はただ呆然としているだけだ

それを見て、肯定と取ったのか、男はまた私の方を向いて


「宝を頂く代わりに、なにか礼をしなくてはな……」


と、呟いた、そしてゆっくりと主に近付いた、すると首に刀を突き付けていた忍が私の背後に来た

そして、まるで動きを封じるように、私の両手を掴んだ


「待てッ!!なにをする!?」

「宝の代わりに……卿の宝には、絶望を与えよう」


男は低い声でそう言い、主の首を掴み、止めようとする私を横目に爆発を起こした

爆発音と共に、私は忍に連れられて城の屋根に降りた

視界が霞む中、今度は男が忍に連れられて私の前に現れた


「ふむ、少々派手にやり過ぎたか…?放心状態だ」


男の言う言葉は私にはあまり聞こえなかった、ただ主が死ぬ時の場面が網膜に張り付いていて涙が出てくるだけだ

膝をついた私の足を掴み、ゆっくりと足の甲に接吻をする男


「私の名前は松永久秀……これからは私が卿の主だナマエ」


どこで私の名前を知ったのか、松永と名乗った男はそう言ってきた

私はただ涙を流しながら、後悔をする

私が別の返答をしていたら主は死ななかったかもしれない


「……ッ……主……」


目を手で覆いながらそう言うと、私の腕を掴み、松永は目を見て


「今の卿の主は私だ、ナマエ」


と、言ってきた、その目を見ていると、ジクジクと吸い込まれていきそうになる

まるで布が水を吸うように、ジクジクと私の心に入り込んでくるこの男

恨みの感情を表に出して睨むが、松永はただ笑っているだけだ

新しい玩具を買ってもらったような子供のように




足の甲……隷属(他の支配を受け、つき従うこと、隷従)
 

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