10000HIT御礼企画
□6、頬
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6、頬
※男主注意
美術館を脱出してから、初めて会った時より明らかに親しくなったイヴの家で、俺はソファーに座って本を読んでいた
何故俺がイヴの家に居るかと言うと、同じく美術館で出会ったギャリーにイヴの家でパーティーをすると言われ、来たのだが……
俺を見るなりイヴは慌てて家を出て行ってしまった、それを追いかけてギャリーも行ってしまったと言う、なんとも哀れな結果になった
今は冷静を装ってこんな小難しい本を読んでいるが、内心俺の心は荒んでいる
「……イヴ……明らかに俺を見てから出て行ったよなァ……」
必死に文字の羅列を読もうとするが正直、全く頭に入ってこない
不幸中の幸いか、イヴの両親は仲良く買い物に行っているが、今帰ってきたらおそらく俺は警察に連行されるだろう
そう思うと二人には早く帰ってきて欲しいが、どんな顔でイヴに会えばいいのか……
本を閉じて、丁寧に本棚に戻し、俺はボーッと窓から外を眺めた
「乙女心は良く分からん……」
そう言えば前も似たような事があった気がする……以前俺は少し年上の女性と付き合っていたのだが、不良に絡まれ、彼女の安全も考えて一目散に逃げ出したのだが……
「戦いもせず逃げるなんてダサ過ぎ」
と、罵られた挙句、平手打ちを喰らい、別れた
その気になれば殴り飛ばしていたさ!!だが俺は彼女の安全を考えて逃げたんだ!!戦略的撤退なんだ!!なのに……平手打ちとか……本当にへこんだ
まあ、俺の苦い体験談は放っておいて、今はイヴだ
「俺……アイツに何かしたのか?」
そう呟いても全く答えは出てこない、もしかして、この格好が気に食わなかったのか!?ギャリーのボロコートよりマシだと思うぞ!?
そう思いながら俺は自分のカーディガンを見る、普通に無難な物なのだが、イヴは気に食わなかったのか?
唸っていると、後ろから扉の開く音がした、ゆっくりと振り向くとギャリーに隠れるようにコートの端を掴んでいるイヴが見えた
どうやら、連れて戻って来てくれたようだ、俺は密かに深呼吸をしてから話す事にした
「悪かったな、ギャリー」
「いえ、大丈夫よナマエ、イヴもちょっと逃げ出したのは反省してるって、ね?」
「うん……」
ギャリーの言葉にイヴはゆっくりと頷いた、そんな様子を見て、イヴが心を開いているのはギャリーだけなのかと思ってしまう
「……悪いな、俺はお暇させてもらうわ」
ズキンと傷んだ気持ちを隠すように、俺はポケットに手を入れ、ギャリーの横を通り過ぎながらそう言った
そんな俺を慌てて止めようとするギャリーだが、少し乱暴に手で払い玄関に向かった
扉を開けようとした時、左腕に微かな重みを感じた、ゆっくりと下を見ると、眉毛をハの字に歪ませて、悲しい顔をしたイヴが俺にしがみついていた
「あ……ナマエ……」
「……なんだ?まだ何かあるのか?」
俺は最低な男だと思う、こんな小さい子に冷たく言い放つなんて
だが、俺は変な気遣いをして欲しくないからこう言うのだ、向こうが嫌いという前に俺が嫌いだという雰囲気を出せば相手も楽だろう?
そう頭の中で片付けて俺はゆっくりと、しかし強くイヴを振り払おうとした
その直後だった、俺の頬に柔らかい感触がしたのは
「…………?ん?」
思わず間抜けな声を出してしまったが、俺は何が起きたのかさっぱり分からなかった
そんな俺を他所に、後ろでギャリーがキャーッと感激のような声を出しているのが聞こえた
ゆっくりと腕にしがみついていたイヴを見ると、顔が真っ赤でいつもの落ち着いたイヴからしたら珍しいと思った
「……ナマエ……ごめん……その、私……別にナマエが嫌いとかそう言うのじゃなくて……なんか、緊張しちゃって……逃げちゃったと言うか……」
「…………」
「ごめんなさい……ナマエは私の事嫌いなのに、頬に…その……キスしちゃって……」
「キ……ス……?」
イヴの言葉に思わず俺は聞き間違いかと錯覚する、こんな小さな子が俺にキスするなんて、唇ではないけどキスなんてそうそう仲がいい人じゃないとしないぞ?
そう混乱しながら、俺はゆっくりとギャリーを見る、するとギャリーはニヤニヤしながら俺を見ていた
「……イヴ」
「……な……何?」
「俺がイヴを嫌いになるなんてある訳無いだろッ!!」
俺はそう言いながらイヴを抱き締めた、ギャリーはまた女子のように騒ぎ出したが、スルーしよう
今はただ、俺が捕まらないかと言う事と、イヴの顔が真っ赤過ぎる事が心配だ
頬……親愛(その人に親しみと愛情をもっていること)