10000HIT御礼企画

□16、指先
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16、指先


コツコツとリズミカルな音が鳴り響く、それに合わせるようにカリカリとノートを鉛で削る音が響く

私はそんな音を聞きながら、瞼が落ちていくのを感じていた

……眠い……なぜこんなにも眠いのか……理由はただ一つ、昨日夜遅くまでパソコンで絵を書いていたからだ

美術はいつも平均より少し上ほど、そんな私がなぜ絵なんて書くのか……以前立ち寄ったゲルテナ展覧会で絵の凄さに魅了されたのだ

と言っても趣味程度で人に見せるようなものではない

そんな考えをしていても眠気はどうしても覚めない、覚める気配もない

私は一つ溜め息をつきながら眠気覚しに先生の横顔をスケッチする事にした

こうすれば少しは眠気も覚めるだろう

シュッシュッと他の音とは別のテンポの音が私の耳に入ってくる

時々黒板を写し、時々先生の横顔をスケッチする……そんな風にやっていると前より眠気は覚めた気がした


「あら、ナマエアンタ絵書けるのね」


唐突に横の席のオネエ口調のギャリーの声がした

いきなりの事で思わず肩をすくめてしまったが、派手な音は出てなかったので安心した


「ギャリー……ちょっと見ないでよ」

「あら?どうして?」


ヒソヒソ声でギャリーに言うと、ギャリーも同じようにヒソヒソと聞いてきた


「どうしてって……恥ずかしい」

「フフッ……恥ずかしがる事ないわよ綺麗だったわ」

「またまたぁ……」


ギャリーはいつもこうして優しい笑顔で言ってきてくれる

元々、受ける授業が何個か被っているので仲がいいが、私が絵を書いていることは秘密にしていたのだ

以前、友達が集合時間に遅れた時でも、ギャリーは笑顔でいた、なので今回の私の絵も同じような物だろうと思った


「それにしても珍しいわね、ナマエが授業を無視して絵を書くなんて」

「実は、昨日あんまり寝てなくて……眠気覚しに」

「フフッ……ナマエらしい」

「笑い事じゃないよ……」


何故こんな事をしているのか理由を言うとギャリーは笑いながらそう言ってきた

まだまだ心地よいリズミカルな音が響いている、おそらくもう一度眠気覚しに何かしないと確実に意識がなくなる

だが、絵を書くことは多分もう無理だ、ギャリーが居て集中ができないし、なりより恥ずかしい

何か他の眠気覚しはないのかと考えていると、ギャリーが私の肩をつついてきた


「ん?」

「ナマエ、アンタがこの時間起きていたらアタシからご褒美あげるわよ」

「え?なに?もしかして奢ってくれるとか?」

「フフッ……それは言わない」

「ふーん……まあ、程々に頑張るよ」

「ええ、そうして頂戴」


ギャリーの提案に乗り、私はなるべく授業に集中するようにして眠気を覚ましていった

少し前に絵を書いていて眠気を覚ましていたお陰か、無事その授業は眠らずに済んだ


「ふぁ……あー……」


皆が教室から出る中、私は長めの伸びをしていた

すると、隣に座っていたギャリーが


「しっかり起きてたみたいね」


と、少し偉そうに言ってきた


「まぁね……私が本気を出せばこんなもんよ」

「眠気を覚ますのに本気なんているかしら」

「多分ねー……ギャリーだってそのワカメ、維持するのに本気出すでしょ」

「どういう意味よ」


ギャリーの言葉に少し適当な事を言っていると、ギャリーは私にツッコミを入れてから荷物をまとめ始めた


「あ、ちょっとギャリー、約束」

「ん?……ああ」


荷物をまとめ始めたギャリーに私は慌てて授業中のあの約束の事を言う、するとギャリーは思い出したように声を出して、荷物を鞄に入れた


「じゃあ、手を出してナマエ」

「ん、お金でもくれるの?」


ギャリーに言われたように手を差し出すと、ギャリーは片手で私の手の甲の部分を包んだ

もしかして、十円玉一枚とか?それは流石に……チロ●チョコぐらいしか買えないじゃん……つーか、あるのか?

そう思いながらギャリーの次の行動を待っていると、指先に柔らかい感触がした


「…………ッ!!!?」


一瞬、何が起きたのか分からず、目を白黒させていると、ゆっくりと私の手から顔を上げたギャリーが


「フフッ……指先のキスの意味って知ってる?」


と、得意気に言ってきた、そしてパニックになっている頭を必死に左右に振ると


「賞賛……まあ、それぐらいは分かるわよね」


と、耳元で囁いてきた、そんなギャリーこ行動についに顔を赤くしてしまっていると、次の授業開始のベルが鳴った

私は次の授業は無いがギャリーはどうなのだろうと、どうでもいいことを気にしていると


「あら……いいところで……じゃあねナマエ」


と、ギャリーは少し駆け足で教室から出て行った

結局、指先にキスされてから一度も
言葉を発さなかった私は、ギャリーが教室から出た瞬間、小さい声が出た


「……なに……いまの……」


どうやら私にはキスというものはまだ早かったらしい

その後、教材を取りに来た先生の言葉で私は動かなかった足がようやく動いた

次会った時、一体どんな顔をしたらいいのだろう……




指先……賞賛(ほめたたえること)
 

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