10000HIT御礼企画
□2、額
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2、額
(佐助視点)
屋根裏からコッソリと可愛らしい寝顔をして寝ているナマエちゃんを眺める
すっかり大人な顔になって……昔俺様が遊んであげて、騒いでいた頃とは最早別人のようだ
兄の旦那も鼻が高くなるほど立派なお姫様になって、最近は縁談ばかりだと愚痴をしてきたが、どうやら話はついたようでなによりだ
「ほーら、いいお姫様が足出して寝てたらお婿さんに嫌われちまうぜ?」
音もなく床に着地して呟きながらナマエちゃんの布団を直す
そして、すぐ横に座り、その寝顔を見守るように見つめる
少し目に隈ができてるな……全く、これから嫁入りするっていうのに何やってんだかこの子は……
小さく溜め息をつきながらもなお、ナマエちゃんを眺める
「佐助!!佐助!!」
「ハイハイ、なんでございますか」
「私さ、大きくなったら佐助をお婿さんに貰ってあげる!!」
「そりゃあ無理ってもんですよ、俺とナマエ様じゃ、身分が違いすぎる」
「……身分……」
「そ、身分、だから嬉しいけどもそれは無理」
「……身分かぁ……」
「あの、ナマエ様、聞いてる?」
「……父上に媚びれば許してもらえるかな」
「ちょっと怖い!!何この子!!腹の中真っ黒なんだけど!!旦那ァァ!!」
そんな会話をしたのも随分と昔……だが、それからも相変わらずナマエちゃんは俺をお婿さんにすると言っていた
だが、やはり現実は上手くいかず、ナマエちゃんはしっかりとした武家に嫁入りする事になった
何度か縁談を断ってきたナマエちゃんだったが、流石にもう子供らしい事は出来ないと理解して渋々だが承諾したようだ
「まあ、目一杯幸せになりなよナマエちゃん」
ナマエちゃんの髪の毛を血で汚れ、真っ黒な俺の手でゆっくりと退かして額に接吻をする
今まで我慢してきたんだ、これくらいいいだろ?神様とやら
そう思いながら俺はまた音を立てずに素早く屋根裏に戻り、侵入者が来ないか監視した
せめて、俺を忘れるくらい、血で汚れ切った俺なんて吹き飛ばすくらいの綺麗な眼差しのあの旦那の元で幸せに
額……祝福(幸福を祝うこと、また、幸福を祈ること)