Short2

□夢を見たまま死ねばいい
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「愛してる」

私の首筋に顔を埋めながら聞きなれた言葉を発する金髪の男、ツンとする女物の香水を少し漂わせているのはきっとまた女の生き血を吸ったのだろう

こんな奴に色目を使う人間にも鳥肌は立つが、今こうやって私を大切にすると言っておきながら暗闇に閉じ込めるコイツにも鳥肌が立つ

私が嫌がっているのに気が付いていないのかそれとも気が付いているのか、どっちにせよ表情が分からないので心境は不明だ


「なあ、ナマエ、お前はこのDIOを愛しているか?」


鳥肌が立つ程甘ったるい声色でそう言うDIO、これが至高の喜びだと言う女もいるが私はその思考回路が分からない

甘ったるい声色はどこか人を見下した感情も混じっている


「なあ、ナマエ」


早く返事を寄越せと言わんばかりに首筋に顔を埋めながら言うDIOの腕を私は掴む


「私は死んでしまえばいいと思ってるよDIO」


そう言うと少し怒ったような雰囲気を出すがすぐに肩を震わせて笑いだし、私の喉と瞳を手で覆いながらDIOは薄く笑いだす

気持ち悪い手で触らないで欲しい、鳥肌が立ってしまう、この気持ちの悪い感触が嫌だ

そう思ってもこのどうしようもない吸血鬼は手を離す素振りも見せない、ついには私の首筋に手を伸ばし始めるので私は止めるために握っていた腕に爪を立てた

すると私の抵抗に気が付いたのかDIOはまた笑い出した、耳元で笑わないで欲しい気持ち悪い


「ナマエ抵抗しても無駄だ」

「……私がここに来た時、許可なく私に手を出すなって言ったよね?」

「…………」

「私の言いたい事がわかったのなら、さっさとこの気持ちの悪い手を退かして」

「……ナマエはもう少しお淑やかになった方がいいな、まあ、抵抗されると逆にやる気になる輩もいるが……このDIOはそんな趣味はない」

「だったら離して」

「…………」


DIOの言い分を全て強い口調で返すと、DIOは渋々と言ったようにようやく手を離した

ゆっくりと振り向くとDIOの目に私が写っていた、それすらも気持ち悪くて私はDIOの目から視線を外す

ああ、本当に気持ち悪い、こんな奴死んでしまえばいいのに、コイツが死ねば私は自由になれるのに

そう思いながら私はDIOの首元にある傷を眺める、いっそここから血が溢れ出して死ねばいいのに

私の願いは届かず、DIOは首元から血が溢れ出して死ぬのではなく、体がほぼ半分に分かれて死ぬという死に方だった

なんて清々しいのだろう、今まで憎んでいた奴が見るも無残な姿で地面を這っている

物陰から少し前から見ていたが、なんとも最高な死に方をしたのだろう、最期の断末魔なんて最高としか言えない声色だった

私は意気揚々とDIOに近付く、すると驚いた事にDIOはまだ生きていた、不死身だと言うのは本当のようだ、だが、どうやら傷の修復は出来ないそうで苦しみ悶えている


「ハッ………ッ…ハッ……ナマエ……?」

「やあDIO、いいザマだね」

「……ふッ……た、助けて……くれるのだろう?……この…DIOの、ために」


相当辛いのか息も絶えだえで私に助けを求めるDIO、そんなDIOを私は見下ろしながらどうトドメを刺してやろうか考える

このまま見捨てるのもいいが、まだいい案があるはずだ、そう直感して私はDIOを見下ろしながら考える

DIOは私の返事をあの時のように名前を呼びながら催促している、なんて図々しい奴なのだろう

そう思いながら私はゆっくりとDIOに手を伸ばした、そしてDIOの口元に手を差し出し、血を吸ってもいいと目で伝えた


「ナマエ……!!」


DIOは本当に嬉しそうに私の手に歯を立てた、だが私の血を吸ってもDIOはほとんどさっきと変わらない肉塊だ

それもその筈、今DIOが話しているのはただの幻だ、私の幻を見て幻の手に歯を立てているのだ

これが秘密にしていた私のスタンド能力、嫌いな奴程ハッキリとした幻が見えるのが特徴だ、つまり私は本当に心底DIOを嫌っていたのだ


「ざまあみろ、今のお前は惨めだよDIO、そのまま死んでしまえ」


まだ必死に喉を動かしているDIOを睨みながらそう言い残して私はその場から立ち去った

心の底から清々しい晴れ晴れとした気持ちが込み上げ、私は思わず大きく口元を歪めてしまった、なんて清々しいのだろう
 

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