Short2

□その言葉は氷のように
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私には昔からの幼馴染みのドッピオと言う友達がいる、いつから知り合ったのかはあまり覚えていないが気が付いたらいつも傍に居てくれたのがドッピオだった

辛い時も悲しい時も、もちろん嬉しい時も楽しい時もいつも傍に居てくれて私の感情を分かちあってくれていたし、私もドッピオの感情を分かっていた

ドッピオは昔から一人で電話ごっこをするのが好きで、私はなんとなくだがそれが苦手だった、私が良く知ってるドッピオがドッピオじゃなくなるような気がしたからだ

私達が大人になっても縁は切れなかった、噂ではドッピオがギャングに入ったと聞いたがドッピオはいつものドッピオだ、ただ……少しだけ電話ごっこをする頻度が高くなった気がするだけだ

例え噂が本当だとしても私はドッピオの友達を辞めないつもりだ、ドッピオはよく私が離れるのを嫌がっていたので嫌がる事はなるべくしたくない


「ナマエ今度はあのケーキ食べよう」

「うん、いいよ」


今日も私はドッピオとイタリアの街を歩く、二人で気になったものを交互に見て買い物をする、最近はドッピオがよく買ってくれたりプレゼントしてくれたりしてくれて、一応女性の私は優しい気遣いに感謝している

ケーキ屋に入り、席に座って二人でメニューを見て何を食べようか話をする、それだけでも楽しいと思うのは少し変だろうか

店員に注文をし終えるとドッピオはすぐ戻ってくると言って手洗いに行った、特にやる事もないので適当に近くに置いてあった雑誌を読みながら待つ事にした

ペラペラとあまり興味を持たないページをめくっていると、雑誌のページに影がかかった、誰か近くに来たと分かり顔を上げると見知らぬ男の顔が二人分視界に入った


「どうしました?」


声をかけると二人は顔を見合わせてから少しだけ私の方に寄り声をかけてきた、軽い口調でペラペラと私に対してお世辞を言いながら強めに腕を掴み私を席から立たせた


「あのっ……ちょっ……」


腕を振り払おうとしても振り払えず、空いてる方の手で頬でも叩いてやろうかと思ったが、その手も別の男に掴まれてしまった

グイグイと私の意思と関係なく店から出されようとされる、周りにいる人や店員は見て見ぬフリをしている、久しぶり本当に恐怖した、恐怖のせいか声も出ないし段々と力も込めにくくなってきた気がする


「離しっ……」


掠れる声で離すように言おうとした時、私達の前に顔を俯かせて表情が見えないドッピオが立っていた、いつの間に戻ってきたのだろうか

それよりもだ、こんな二人の男に逆らったらドッピオはどうなってしまうのだろう、この店には男の人が何人かいるがそんな人達でさえ関わりたくないと思う男達だ

私の記憶からしてドッピオには喧嘩という文字は似合わないし、争い事なんてドッピオとは縁がない

十中八九ドッピオは返り討ちにあうだろう、そう思い私は思わずドッピオを止めようと思い声を上げようとした瞬間


「今すぐ……ナマエから手を離せ……その汚い手を……離さないなら切り落とすぞ……」


とドッピオから出た声とは思えない低い声が聞こえてきた、よく見るとドッピオの表情も見た事がない位歪んでいるし、目付きもまるで別人のようだ、それに圧倒的な殺意を感じた

本能的に危険だと思ったのかゆっくりと男達は私の腕から手を離し、ソロソロと私達から離れて行った


「ドッピオ……?」


ジッと男達を見つめ、動かないドッピオに恐る恐る声をかけるとドッピオは少しだけこちらを向いたと思うと、今まで見た事ない笑顔をこちらに向けた


「ナマエは危なっかしいな」


やはり声色も違う気がする、そう思った時少し遠くにいた先程私に絡んできた男達が急に何かが潰れたような声を出して倒れたので慌てて男達を見下ろすと顔面から血が沢山出ていた、それを見た別の客が悲鳴を上げた、客達が騒ぐ中ドッピオだけが静かに店の出口に向かい、私を手招いていた

もう一度男達を見下ろすと、鼻の骨などが折れているのか顔はひしゃげていたが、それ以前に出血し過ぎている、もしかしたら手遅れかもしれない

そう思うと血の気が引きその場に倒れそうになる、すると出口からドッピオが戻ってきて大丈夫かと声をかけながら私を支え、ゆっくりとまた出口に向かって歩き出した

私は今ほど私を支えているドッピオの手が怖いと思った事は無いだろう、ドッピオは何もしていなかったがあの男達をあんな風にしたのはドッピオなのではないかと思った

自然と本能的に身体が恐怖を表に出してくる、震える肩、血の気が引き指先が冷えきっている、そんな私の変化に気が付いたのかドッピオは少し驚きながらもとりあえず店の外へ私を軽々と持ち上げて運んでくれた


「ごめんね……僕少し感情的になりすぎたかな?」

「う……ううん……大丈夫、ちょっとビックリしちゃっただけだから」


今私は自然に笑えているのだろうか……店から私を連れ出したドッピオは近くの公園のベンチに私を座らせてから私の鞄の中に入っていたペットボトルを取り出して渡してくれた

一口飲むとドッピオは少し気まずそうに話しかけてきた、声色が元に戻っていて少しはホッとしたがドッピオに対する恐怖心は完全には消えない


「ねぇ……さっきのは……」


意を決してドッピオに先程の事を聞いてみた、私の声が震えてるのは気のせいではないだろうペットボトルを持つ手が震えているのも分かる、私は今ドッピオが怖いのだ


「……」


ドッピオはただ黙ってじっと先にある噴水を眺めているだけだった、答える様子がないわけではない、なんと言おうか考えているような表情だ、私はなにか話題を変える事も答えを催促する事もできずただじっとドッピオが口を開くのを待ってるだけだった


「ナマエは僕が守るよ」


不意にドッピオが声を発した、慌ててドッピオの方を向くとドッピオもこちらを見ていた、だがその瞳に何か違和感を感じた、ドッピオの目はこんな雰囲気だっただろうか、こんなに独特な形をしていただろうか

じっと瞳を見つめているとドッピオは私の手を掴み恐ろしい程優しく微笑んだ、なにか言おうと思ったがドッピオが怖く感じて喉が掠れて声が上手く出なかった


「僕が、どんな手を使っても、ナマエ以外の人間がどんな事になっても、僕がずっと守るよ、だからさ……」


ドッピオ一瞬強く私の手を握った瞬間一瞬だがドッピオの片方の瞳の形が明らかに変わったのが見えた、だが瞬きをした瞬間元のドッピオの瞳になっていた

まるでドッピオの中に他に別人がいるようにも感じた、そんな私の考えも気にせずドッピオは手を握っていない方の手で私の頬を撫でた、優しく優しく、壊れ物を扱うような手つきで私の頬を撫でながら口を開いた


「ナマエは僕を見てくれるだけでいいよ、僕から離れないで」


優しく軽い口調でそう言ったが私にとってはその言葉は酷く重く感じた、まるで枷でも付けられたように自由が奪われた気がした、ドッピオは離さない勢いで私の手を掴む

先にある噴水から霧のような水滴が風に乗って流れてきて私の頭を物理的に冷やしていく、背筋が凍ったように冷たく感じるのもこの噴水の水滴のせいだと願いたい
 

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