Short2
□小さな耳
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(ポルナレフ視点)
「痛くなかったか、それ」
エジプトへ向かう旅の途中で同じ部屋になったナマエと各々のベッドでゴロゴロとしていると、ふと目に止まったのはナマエの耳に薄らと痕があるピアス痕
思わずそれを指さして痛くなかったか聞いてみた、するとナマエは一瞬俺の言葉を聞き返してきたが何の事か分かったように耳を軽く手で覆った
ピアス痕がもうほぼ完全に塞ぎきっていている所を見るとどうやら随分と前のピアス痕らしい、現に俺は一度もナマエがピアスをしているのを見た事がない、出会ってあまり日にちが経ってないのもあるが今こうして間近で見ないと分からないくらいの痕だ
「ああ、これね」
「ナマエってピアスしてたんだな」
「してないよ、一度も」
ナマエは指先で痕の部分を撫でた、素朴な疑問で俺はどんなピアスをしてたのか聞こうと思い話を振ると予想外の答えが返ってきた
「どういう事だよ?」
「うーん……元彼氏が半ば無理矢理開けてきたって言った方がいいのかな?まあその時にスタンド出しちゃって殴っちゃったんだけど、もうピアスは開けられてて……みたいな?」
「……日本の男子は皆そうなのか……?」
どういう事か聞くとナマエはピアス痕を撫でながら日本男子のありえない一面を思い出すように話した、そんなナマエの話に俺は思わず固唾を呑んで聞き入ってしまった
ナマエに彼氏がいた事も驚いたがどうやらソイツとは二、三日の付き合いだったようだ、原因はピアスの事と彼氏の浮気、どうやらナマエは悪い男に引っ掛かりやすいタイプのようだ
そんなナマエを俺は心配してしまった、スタンド使いだからと言ってもホイホイと男に付いて行ってはいけない、思わず日本人の女は顔だけでなく思考も子供らしいのかと呟いてしまいナマエに怒られてしまった
「ポルナレフは?ピアスは自分で開けたの?」
「まあな、ピアス付けるとナイスガイに見えるだろ?」
「んー、どうだろ」
「そこは即答してくれよ……」
ニヤリと笑いながらピアスを付けた理由を言ったがナマエからは曖昧な返事が返ってきて思わず項垂れてしまった
そんな俺を見てナマエはケラケラと笑う、顔を上げながらその笑顔を見るとなんとなく安心するような気分になる
ナマエは日本人だからか、顔は若干幼いような顔をしていてなんとなくシェリーを思い出してしまう、そして妹のように接してしまう、シェリーと重ね合わせるなんて失礼なのは知っているがどうしても放っておけないような存在だ
「まあ、これからナマエが変な男に引っかからないように俺が見張っていてやろうか?」
ヘラヘラと馬鹿にした笑いをナマエに向けながらそう言うと少しだけ目を見開いて顔を赤らめたナマエ、そりゃあそうだ言った俺が言うのもアレだが今のは明らかに告白っぽい言葉だ
ナマエの見開いた瞳に似たように目を見開いている俺が写っている、しかしナマエはそのまま顔を横に向けて俺から視線を逸らした
「ポルナレフなんかに見張られなくてももう大丈夫だから」
素っ気ない言葉だったが若干声が上擦ったように聞こえたのは気のせいではないだろう、ナマエの言葉に俺も何故か恥ずかしくなってしまいフイっとそっぽを向いてしまう
しばらく無言のままでいたがなんとなくナマエのピアス痕が気になって目を向けてみた、そこには相変わらずナマエのピアス痕が残っていて折角見つけたこの痕も残り何日で消えるのだろうかと思い、少しだけ悲しくなった
「ナマエ」
「ん?」
「そのままでも似合ってるが、また恋人できたら開ければ?」
「……そうだね」
ナマエにそう言うと少しだけ反応が遅かったがそれもいいかもしれないと言ってきた、小さく笑ったナマエに俺も頬が緩んでしまう
俺だったらそのピアスの穴を閉じらせる事ないのにな、なんて思いながら俺はまたゴロゴロと暇を持て余した、まあ今はこの距離が俺には心地いい