Short2

□君がいないなら意味がない
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それから約一週間、ナマエと過ごす日々を一日一日大切にしたが結局ナマエは行ってしまった

最後にナマエは薄らと涙を浮かべていたが俺は前日に涙を流しきったので涙は出てこなかった、そんな俺を見て相変わらずだと笑ったナマエの笑顔をまだ覚えている

結局俺はナマエに自分の気持ちを伝える事が出来ず、ナマエが乗っている車を見送った、今でも少し後悔はしているがナマエが死んでしまったわけではないのでいつでも言えるだろうと自分を言い聞かせた


「はぁ……」


生徒立ち入り禁止の屋上に密かに座り、思わず溜め息をついた時、フェンス越しにベンチに座るシーザーを見付けた

ナマエが引っ越してからもシーザーとの仲はなんやかんやで続いていて、今では俺のナマエに対する感情を知る唯一の人物だ、だがそれももう意味を成さないだろう、ナマエは引っ越してしまったのだから

近くを通りかかった女子を口説くシーザーを見ながら俺はまた小さくため息をついた


「俺もそろそろナマエから離れねぇとなぁ……」


いつまでもナマエの事を引きずっていると逆にナマエに悪い感じがして思わずそう呟いたが、心のどこかでは自分の気持ちに反した言い訳だと分かっている

俺はナマエが好きだ、どうあがいても、どう自分を誤魔化してもそれは変わらないだろう

現に今でも涙を薄ら溜めながら困ったように笑うナマエの顔が忘れられないのだから

今では一人で登下校しているが、時々校門前でナマエを待ってしまっているのもきっとナマエが忘れられないからだ

ナマエから聞いた約五年と言う単語がどれ程長いのか俺には分からない、ナマエと一緒にいる一年はあっと言う間でそれが五回繰り返されるなら苦労はしないだろう、だが俺一人の一年はどの位だろうかそれが五回繰り返されるとどうなるのだろうか

なんて女々しい考えまでしてしまう、本当に俺はナマエの事が好きだったのだと改めて思い知らされる


「ナマエ……」


小さく呟いた言葉は唐突に強く吹いてきた風の音によってかき消された

それがなんだか悲しくて、俺のこの気持ちを早く伝えておけば少しは未来が変わったのかも知れないなんて思ってしまった


「……ナマエ……!!」


もう一度呟いた言葉は初めとは全く違う、俺らしくない震えた声で発せられた、それと同時に俺の頬をゆっくりと涙が濡らしていった

以前ならこの昼休みの時間は笑い合う時間なのに、今の俺は悲しみでいっぱいで人一人がいなくなるだけでこれ程変わるのかなんて酷く冷静に思ってしまう
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