Short2

□色褪せぬ
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私は皆と共に過ごしていく中で信頼と言うものを確かに感じていた、少しの事では壊れないような信頼

それなのに何故私は身に覚えもない罪に問われて皆に責められているのだろうか

思えば皆の雰囲気が変わっていったのはあの新人が来てからだと思う、私と同じ女の子でとても嬉しかった筈、けれどどこか雰囲気に違和感を感じていたのを覚えている


「ナマエ……お前、今まで俺達を騙していたのか?」


銀時のその言葉に私は思わず我に返った、一体いつ私が皆を騙したと言うのか、根拠のない事で皆が責める事はない筈だ

ふと、銀時の影に隠れるようにこちらを見ているあの新人の姿が見えた、まるで私を嘲笑っているかのような笑みでこちらを見ていた

確か新人は最近同性の私より皆の所に顔を出していた、そしてよく私を拠点から離れさせるような頼み事をしていた

疑うのは良くないが、こうして笑みを浮かべている所や少し前からの異常とも言える行動、なんとなくこの事態の犯人が分かった気がする


「どうなんだよ……ナマエ」


銀時が再び私を問い詰めた、その声色は震えているようにも聞こえていてまだ確信がないような雰囲気だ

助けを求めるなんて私らしくないけど、この状況はどうにも慣れない、一か八かの気持ちで私は銀時に救いを求めるように口を開いた


「私は……間者なんかじゃない……その情報を流した本人が間者だよ……」


思った以上に自分の声は震えていて、これでは信じてもらえないかもしれないと思ってしまった、現に周りを囲む他の皆は非難の声を上げている

様々な暴言が飛び交う中、銀時はゆっくりと私に向かって手を伸ばした、きっと私を叩くつもりなのだろう

自分でも驚く程客観的にそんな事を思いながら、私は痛みに耐えるため静かに目を瞑った

私を襲った衝撃は痛くもなくとても小さい物だった、ポスンと言う音がしてもいい程の物だった


「……?」

「お前がそこまで言うのなら、きっと本当なんだろうな」

「銀時……?」


銀時の言葉に周りを囲む皆の非難の声が消えた、誰しも銀時の言葉に驚きを隠せないのだろう

しかし、桂や高杉や坂本は分かっていたかのような穏やかな表情をしていた、きっと銀時がこう言うのを分かっていたのだろう

私がポカンとしていると銀時はゆっくりと振り向いて、あの新人の方を向いた


「確か……噂を流したのはお前だよな?」


銀時の言葉に周りを囲んでいた皆が新人の方を向く、新人は一人焦っているようにも見える

しかし、ある程度犯人の目星がついた私にはその行動が私の勘を決定付ける事になった、あまり信じたくないがどうやら私を陥れたのはこの新人で間違いないだろう


「なんであんな噂を流した?」

「それは……!!」


新人が戸惑う中銀時は着実に追い詰めていた、もちろん新人の周りはいつの間にか桂や高杉が固めていた、私の傍には寄り添うように坂本が居て、大丈夫かと聞いてきた

中々口を開かない新人に高杉は別室で聞く事にしたらしく鬼兵隊の一部と一緒に部屋を出て行った、それが何を意味するのか分かったのか今まで非難の声を上げていた皆は小さく私に頭を下げた


「……大丈夫だったか?」

「うん……信じてくれてありがとう……」

「まあな、俺はナマエを信じてるし?」


ほとんどの人が部屋から出て行った後、銀時が私にそう声をかけた、私が銀時に礼を言うと少し照れたように頭を掻いた銀時

そして坂本と桂が私に外傷がないか調べ始めたので銀時は部屋を出て行った


「……二人も、高杉も、なんで私を信じてくれたの?」

「ワシはナマエが嘘つくような奴とは思わんからのォ、あの噂も信じとらんかった」

「俺もだな、新人の言葉よりやはりナマエの言う事が信じられると言う物だ……きっと高杉も同じような理由だろうな」


銀時達が来る前に叩かれたりした部分に湿布を貼ってもらいながら桂達にそう聞くと、二人共同じような答えをした

改めて私は皆に信頼されていると思い、もう一度二人に小さい声で礼を言った、後で高杉と銀時にも礼を言うつもりでいる

やはり私達の信頼と言う物は簡単には壊れない事が分かり、少しだけ安心した
 

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