Short2

□君の姿は眩しくて
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校庭から発せられている数を数えていく声が校内まで聞こえてくる、チラリと横目で窓から校庭を見てみると野球部が筋トレをしていた

少し眺めていると同じクラスの野球部の男子が私に気が付き、愛想のいい笑顔でこちらに手を振ってきたので思わず私も振り返してしまった


「何やっているんですかナマエ」


完全に手を止めてしまった私を少し怒ったような声色でそう言うジョルノ、驚いてしまいジョルノの方を見たまま固まってしまう

そんな私をジョルノは不思議そうに眺めてもう一度口を開いた


「だから、何やっているんですかナマエ」


さっきと同じような言葉を言ったジョルノ、今度は驚かず私は軽く笑いながら


「ごめんごめん……同じクラスの野球部がこっちに手を振ってきたから……」


と謝りそう言うとジョルノは視線を私から校庭に向けて私に手を振ったのは誰かと聞いてきた、そんなジョルノの言葉に私は少し戸惑いつつも、手を振った彼の場所を伝えた

ジョルノは彼が分かったようで納得したような雰囲気で窓から視線をずらした


「アイツか……それよりナマエ、はやく書いてください」

「えっ、あ……ごめん」


ジョルノは私にはやく日誌を書くよう伝えて、また椅子の背もたれに深くもたれた

私は今日日直で日誌を書いている、しかし日直の仕事の中で一番厄介な日誌を書くのを帰りまで忘れていたのだ、だからこうして教室に居残っている訳だが……先に帰ればいいのにジョルノは私が書き終わるのを待っているのだ

私達は確かにお互いに寮で部屋も近いので一緒に帰るが、わざわざ日誌を書き終わるのを待たなくても……

そう思いながら私は今日の出来事を書いていく、何故教師はこういうのを書かせるのだろうか、学校なんて大体が毎日同じ繰り返し変化なんて時々しかない、友達との会話は盛り上がるがそれは教師に教える程のものではない

かと言って"今日も一日いつもと変わりない普通の日でした"と正しい事を書くと何故か怒られる、理不尽にも程がないだろうか、そう思い思わず溜め息をつきながら仕方なく今日の出来事を書いていく

"今日は日誌を書くのを忘れてしまい、ジョルノ君を待たせてしまいました、ジョルノ君はいつも私と共に帰りますが何故でしょうか?今年で五年程ジョルノ君と友達をやっていますが彼の考えている事はよく分かりません、彼はきっと私の予想を上回る思考回路をしているのだと思います"

そこまで書くとようやく行が埋まり、残すはあと一行になった


「はぁ……ちょっと休憩」

「何回休憩しているんですか、ほら、はやく」

「だって、あと一行を埋める言葉が出てこない……」

「……これだといつ帰れるか分かりませんね……」


溜め息混じりにそう言うジョルノに私は思わず少し怒りを感じてしまう、そんな事を言うのなら私なんて放っておいて帰ればいいのに

カバンから本を取り出したジョルノに私は頬を膨らましながらそう思った、最後の一行を埋める言葉を考えているとふと、また校庭の方に目が寄った

カーンッと鉄製のバットでボールを飛ばした音が響きボールが高く高く飛んで行くのが見えて、誰が打ったのだろうと思い思わずホームに目をやった

どうやらあのホームラン風の高いボールを打ったのはさっき手を振った同じクラスの男子だったようだ

結構野球上手かったのかと思いながらホームに向かって嬉しそうに走る彼を見る、すると彼の方もまた私に気が付いたようでこちらに向かって笑顔を見せた

もしかすると私ではない別の人にその笑顔を見せているのかもしれないが、なんとなくそんな考えは無くなっていた

ふと別の視線を感じ正面を向くと、明らかに不機嫌なジョルノの顔が見えた、きっとまた早くしろなんて言ってくるんだろうななんて思いながら軽く謝り最後の一行を考える


「ナマエ」


ようやく何を書くのか考え終わり、一文字書き始めた時ジョルノに呼ばれた

また怒られるかななんて思いながら少し下げていた顔を上げると、ジョルノは私に顔を近付け自分と私の口元を本で隠した、丁度ヒソヒソ話をする時のようにだ

ジョルノは悔しい事に顔はいい方なので至近距離に整った顔があり、少し恥ずかしくなるがジョルノと目が合う事はない、先程からずっと校庭の方を見ている


「あの……ジョルノさん……?」

「……」

「いつまでこうして近くに居るんですか?変な噂立ちますよ?"妖怪至近距離コロネ"って……痛ッ」

「黙ってください……」


ジョルノに慣れない敬語で話しかけると軽く頭を叩かれた、それでもジョルノは終始視線を校庭に向けているので何を見ているのかと気になり私も目を向けた

バチリッと音がしてもおかしくない程野球部の彼と目が合った、彼は私を見て少し驚いた顔をしていた、改めて手を振ろうとした時少し上げかけた手はジョルノによって制された

彼は少しの間私を見ていたがそのまま気まずそうに視線を下げて部活動に専念し始めた、その直後ジョルノは本を降ろし椅子に深く座った

そこでようやくジョルノの意図が分かり、私は持っていたボールペンが乾かないようにカチリとノックをして日誌の上に置いた


「なにしてんのジョルノ」


ボールペンを持っていた手で頬杖をしながらジョルノにそう言うと、ジョルノは読んでいたページにしおりを挟み静かに閉じた


「……別に……なにか問題でも?」

「大ありだよ……"妖怪至近距離コロネ"より酷い噂が立つよ」

「それが目的です」

「……私これからきっとジョルノのファンとかにイジメられるわ……あ、もしかしてそれが目的?」

「そんな訳ないでしょう、それが目的なら彼女達にナマエの情報を渡すのが一番です」


ほんの少しだけ怒っている私とは違いジョルノは淡々と答えていくだけで、考えている目的が良く分からない、本当にジョルノの考えている事はわからない

相手の魂胆が分からずイライラとしてくる中、ジョルノがゆっくりと口を開いた


「三回」

「……?」

「三回です、ナマエが自分から校庭を見て彼と目が合ったのは」


そう言うジョルノはなんだか少し拗ねているようにも見えて少しだけ笑ってしまいそうになるが、ジョルノの言葉がそれを許そうとしない

一体何を言っているのかと思わず戸惑ってしまい思考までもが停止してしまったように固まってしまう

固まった私をいい事にジョルノは黒髪から金髪に変わった髪の毛をセットを崩さぬように掻き上げ


「少しだけ……子供じみた嫉妬してしまったんです」


なんて若干頬を染めながら言ってきた、私はようやく大きく溜め息をつく事ができ、ジョルノの言葉に返事をする事なく日誌の最後の一行を走り書きして埋めて日誌を閉じた

ゆっくりとジョルノの方を見るともう頬は元の色に戻っており、なんだか少し残念に思ってしまった、その代わりに夕焼けがジョルノの金髪に反射して、キラキラと綺麗な色になっているのが分かった

日誌を提出しようと席を立つと、ジョルノは私が動くのを制するように腕を掴んだ、何も言わないがなんとなく言いたい事は分かったので、私はまた大きく溜め息をつき口を開いた


「"でもそんなジョルノ君ですが、私は嫌いではありません"」


先程走り書きした文字と同じ事を口にするとジョルノは一瞬固まったがフッと笑い出し、私の腕を離してくれた

日誌を提出して学校を出た時、また校庭の方から野球部の練習する声が聞こえたが、またジョルノが子供じみた嫉妬をすると困るのでなるべく目を向けないようにした

代わりにジョルノの金髪を見ていたが、黒髪もいいが金髪も中々似合っていると思い私は少し羨ましくなった
 

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