Short2

□ただひたすら
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私はこのかぶき町でちょっと有名な職に就いている、と言っても俗に裏社会と呼ばれる場所での話だが……他人の情報を金さえあれば教えると言う簡単な仕事をしているのがこの私、ナマエだ

ある時、新しい情報を集めている最中に少しトラブってしまい腹部に銃弾を食らった私は死を覚悟した、そんな中私を助けたのが今居候させてもらっている万事屋のオーナー、坂田銀時

裏社会では私が死んだと言う噂が立っているし今までなんとかバレずにいた職場もどうやらバレてしまっているようだ、今となってはこのまま万事屋ファミリーに入ってしまおうかなんて思い始めている


「ただいま」

「おかえりなさいナマエさん」


私の元職場の周りにいた人間が居なくなったのを確認して、久しぶりに元職場から荷物を取りに行く事にした私は二、三日万事屋に居なかった、そんな私を迎えてくれたのは新八だ

新八にただいまともう一度言って、荷物をリビングに置くために扉を開けた


「あ、ナマエ」

「神楽ただいま」


リビングでは神楽がソファーに横になりながらテレビを見ていた、のそのそと体を起こして私に手を振ってくる神楽、そんな神楽の傍に座り持っていた荷物を机の上に置く


「なにを持ってきたアルか?」

「んー……まあ、着替えとか服とか…あとは奇跡的に残っていたデータとか」

「大変ですね、ナマエさんも……」


私の荷物を横から顔を覗かせてそう言ってくる二人、新八の言葉に思わず苦笑いをしてしまった


「っと……今日は私が料理当番だったな、今から作るよ」


ふと、まだ晩ご飯を食べてないと思いそう言ってソファーを立った、新八は自分がやると言っていたが居候の身なのでこれぐらいはやらないといけない

トントントン……とリズミカルな音を立てながら野菜を切っていたが、急に腰周りが重く感じた

初めは驚いたが原因がなんなのか分かり、私は溜め息をつきながらも原因を無視して調理を進めた

おかずの種類は三つ、後はみそ汁にお米、一汁三菜とはよく言った物だがこれ位のバランスが一番いいのだろう

出来た料理を運びテーブルに置いた時、新八はボーッと私を見ていた


「あの……ナマエさん?」

「んー?」


新八は少しずり落ちた眼鏡を上げながら私の腰あたりに付いている、先程の重さの原因を指さしながらゆっくりと口を開いた


「それ、なんで銀さんがそんな所にいるんですか?」


新八のその言葉に私は自分の腰あたりに付いている人物を思い出し、また思わず溜め息をついた

原因は私にも不明だが何故か知らないけど私の腰にはあの万事屋のオーナー坂田銀時、通称銀さんがぶら下がっている

ほぼ引き摺られているような状態の銀さんはなんとも情けない格好だ、それなのに表情はムスッとした表情で面倒くさい事があるのが目に見えて分かる


「銀さん重い」


新八や神楽の目を気にして私は銀さんにそう言ったが銀さんが口を開く様子はない

私は仕方なく銀さんと二人で話すためにまた銀さんを引き摺りながら台所に向かった


「で、なんで銀さんはひっつき虫に転職したの?」


台所に着いて二人っきりになったのはいいが今だに銀さんは口を開こうとはしない、このままではお米を取りに来たと言う口実の意味がなくなってしまう

私は急かすように銀さんの頭をガシガシと撫でてみた、すると銀さんはその私の手を腰から手を離して掴んだ

そして銀さんは私の手を掴んだままゆっくりと立ち上がって、私を見た

銀さんの目はいつもよりなんとなく哀愁が入っていて私は思わず口を閉じてしまう


「……どこかへ行っちまったのかと思った……」


銀さんは少し枯れたようなか細い声でそう言ってきた、しかし私の耳には確かに届いていて思わず目を見開いてしまう

確かに私はすぐ戻ると言って出掛けたが、銀さんにとってのすぐは二、三日は含まれてないのだろう

きっと沢山の心配をかけてしまったのだろう、銀さんはなんとなく誰かが居なくなるに対して人一倍恐怖を感じている気がする


「……うん、ごめん」

「ナマエ、出掛けの俺が居ない時だったから、心配した」

「うん、一言言うべきだったね……」

「…………少し怖かった」


銀さんと向かい合いながら話すとどれ程心配をかけてしまったのか実感した、銀さんは今まで見た事がない程切ない表情で私を見ていた

そんな銀さんにもう一度謝ると銀さんは返事の代わりに私の肩に額をつけて私の手を指を絡めながら握ってきた

正直な所そろそろ二人の所に戻らないと気まずい雰囲気になりそうなのだが離してくれそうにもないので私は仕方なく諦める事にした

二、三日しか会ってないだけなのに何故こんなにも久しぶりに思えてしまうのか謎だったが、きっとそれ程銀さんを頼りにしているのだろう
 

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