Short2
□催涙雨
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この思いをすぐには伝えようとはしなかった、近々受験もあるしなによりナマエと同じ高校に入ってから言いたいという感情があったからだ
それまでは静かに、ナマエが高校に入った時と同じように過ごした、それが辛かった時もあったが我慢した
一年後、無事にナマエと同じ高校が受かったと通知が来て俺は天にも登る気分だった
これでようやくナマエに言えると、我慢する必要はないのだと
卒業したらすぐに言おうと考えながら卒業式までナマエに言いたい言葉を必死に考えながら過ごした
だが、結局そんな俺の努力は水の泡になる事になった
「行方不明だって……」
「見付かったのは学校指定のカバンだけ……」
「警察も捜査してるけど多分無理じゃないかなぁ……」
あの日と同じように一番星が輝き出した頃、ナマエの家の周りには沢山の人がいてそんな事をヒソヒソと話していた
行方不明、ナマエが行方不明、昨日から家に帰ってこない、学校を出て帰宅してからの行方が分からない
俺はただ呆然と立ちすくむしかなかった、警察が俺にナマエの行方を知らないか聞いてくるが俺にはさっぱり分からなかった
母さんが俺を落ち着かせようと背中を撫でるが俺はそれどころじゃなかった
なんで今なのか、なんで俺が気持ちを伝えるまで神様とやらは待ってくれなかったのか、なんで俺はもっと早く言わなかったのか
そんな憎悪や後悔がグルグルと頭を駆け巡るのだ、ひとまずその場は収まり、また調査を続けていくと言われ、家に戻される
部屋に戻ってからも俺はグルグルと頭が回る感覚が離れなかった
「じゃあ仗助、また今度ね」
そう話したのがいつ位前だろうか、あれがナマエと交わした最後の言葉?なら俺のこの気持ちはどうなってしまうのだ?
ナマエの顔を思い出せば思い出す程ポタポタと涙が溢れてくる、男の癖に泣くなと以前泣いてしまった時ナマエに言われた言葉が頭を過ぎったがもう遅い
まるで涙腺が崩壊してしまったようにポタポタポタポタと涙が溢れてくる
「ナマエ……!!」
涙声でそう呟いた言葉はきっと誰にも届かないのだろう、ナマエ本人にもきっと届かない
まるで燃えてしまったようにナマエは消えてしまったのだ
ナマエが持っていた学校指定のカバンからは何か燃えたような臭いが付いていたと言われているのだから