Short2
□催涙雨
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(仗助視点)
俺には二個上の先輩がいる、その人と俺は昔から家が近く、幼馴染みと言う関係だった
先輩と後輩と言う関係が形として出たのは丁度中学に入ってから、今までは二個年齢が上なだけだと思っていたので不思議な感じだ
俺が中学一年の時はその人……ナマエは中学三年、受験もあったためか自然と以前より話す事は少なくなっていた
「ナマエさんはさぁ、好きな人とかいるんスか?」
「なによ仗助、急にそんな事聞いてどうしたの」
「別に……最近ナマエさん、元気なさそうだったから」
「流石モテる男は違うねぇ……受験やなんやで忙しいのよ」
一緒に帰る事は小学校から変わっていない、夕日を尻目にナマエと話す、中学生特有のセーラー服は見慣れてないからか、少しナマエには似合わない気がした
話しているとなんとなくナマエが話題を逸らしている様に思えて、少し真面目に心配になってしまったが、おそらく俺の気のせいだろう
一番星が輝き出した頃、俺達はようやく自分の家に着き、また明日といつものように挨拶をして家に入った
それをナマエが中学を卒業するまで繰り返し、ナマエが高校に無事受かって入学をした時から俺の帰宅方法は変わった
初めの一週間程はやはり違和感があったが、日に日に一人に慣れていった、時々友人と帰った事もあったがやはり俺はしっくり来なかった
ごく稀にナマエが帰宅している所を目撃するが、なんとなく恥ずかしくて挨拶はしなかった
高校に入ってからナマエのセーラー服が似合うように見えたのは何故だろうか
「あれ?仗助久しぶり」
夜ふかしをしてしまい眠気がピークに達した帰り道、聞きなれた声が聞こえ一気に意識が正常に戻った
振り向くとやはりセーラー服が似合うナマエがヒラヒラと手を振りながら立っていた
「ナマエさん……久しぶりッス」
「いやぁ、本当に久しぶりだね、背ェ伸びた?」
ペコリと頭を下げるとナマエはそのまま手をポンポンと撫でるように頭に乗せてくる
だがやはり身長が伸びたせいかナマエは少し背伸びをしていた
身長も見た目も少し変わったが、いつも帰り道で見た夕日だけは変わってなかった
それからやはり一番星が輝き出した頃、俺達はそれぞれの家に着いた、また今度と挨拶をして家に入る
「…………ナマエ……」
玄関の扉を完全に閉めきった時、俺は無意識にナマエの名前を呟いた、それと同時にギュッと胸が痛くなる気がした
久しぶりに会えた事に喜んでいるのか、それとも嫌がっているのか、しばらくナマエの笑顔が離れなかった俺にはよく分からなかった
その感情に気が付いたのはしばらくしてからだ、俺が以前ナマエに質問した時と同じように友人に聞かれた時だ
好きな人とかいないのか?その言葉を聞いて真っ先に出てきたのは笑顔のナマエ、それと同時にまたギュッと胸が痛くなる感覚がした
きっと俺はナマエの事が好きなんだろうと直感的に思った、質問してきた友人を茶化しながら俺は頭の片隅にナマエを思い浮かべながら帰宅した