Short2
□再会、笑顔
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リサリサ先生との握手を終えて、俺は一呼吸置いたあと意を決してシーザーの方を向いた
リサリサ先生とジョセフは俺とシーザーを見ているだけだ、多分この先俺が殴られても二人は見ているだけだろう
シーザーは目を見開いたまま俺の方を見ているだけで今のところ殴ってくる様子はない、殴ってくる事を前提に事を進めるのは少しシーザーに悪いが仕方のない事だ
「……シーザー……」
「…………ナマエ兄さん……」
シーザーの名前を呼ぶと俺の名前を少し戸惑いつつ呼んできた、ふと視線を下に向けるとシーザーの拳は震えていた
勝手にシーザーを殴り勝手に飛び出してそれっきりの兄に怒りを抱いているのか、それとも再会を喜んでいるのかそれは分からない
ボーッとシーザーの拳を眺めていると、シーザーは俺に向かって足早に歩き出した
いよいよ俺が殴られる時か……別に昔シーザーが悪だった時怒鳴られた事も時々殴られた事もあったのでコイツの拳には馴れているが、流石に痛いのはなるべく避けたい
シーザーが拳を少し上に振り上げたのを見て俺はゆっくりと目を瞑った、今はこの弟の重い拳に耐えるしかない、本当、弟に人を殴らせるなんて出来の悪い兄だ、いや今更か……
そう思った時、シーザーの拳は俺の肩にゆっくりと乗った、身構えていたのがアホらしく思える程優しくシーザーは俺の肩に手を置いた
「?……おい?」
「ナマエ兄さん……」
シーザーの方を不思議に思いながら見てみると、シーザーは目に涙を溜めて俺の名前を呟いた
そんなシーザーの背中に俺は笑いながら手を添えて
「ごめんなシーザー……ただいま、今帰った」
とシーザーに向かって小さく呟いた、するとシーザーは溜め込んでいた涙をポロポロと流しながら涙声で返事をした
そんなシーザーの声に俺は泣きそうになるがグッと耐えて、ジョセフとリサリサ先生の方を見ると二人は何故か俯いていて静かに涙ぐんでいた
何も二人が泣く事は無いのにと思いながら俺は思わず苦笑した
しばらくシーザーに泣き付かれたが、ジョセフとリサリサ先生の涙が止まった頃にはシーザーも涙を止めていた、だがシーザーは泣きやんだ後も俺から離れようとはしなかった
談話室のソファーに座っていてもシーザーが必ず隣にいたし、少し飲み物を買いに行こうとするとシーザーも立ち上がり俺の隣を歩いていたりと、俺の視界には必ずシーザーが映っていた
少し疑問に思いながらも、自動販売機とやらに向かう、ちなみにジョセフとリサリサ先生は途中で部屋に戻るそうだ
自動販売機の前でジョセフとリサリサ先生と別れて、俺はジョセフに教えてもらった通りに硬貨を入れた
シーザーは相変わらず俺の横に立っているだけで飲み物を買おうとする様子はない、疑問に思いながら俺は紅茶のボタンを押す、すると見本と同じ紅茶が出てきて本当に今の技術は凄いと思いながら蓋を開けた
「ナマエ兄さん」
「んー?」
紅茶を一口飲んだ時、シーザーが急に俺の名前を呼んだので蓋を閉めながらシーザーの方を向いた、するとシーザーは何となく緊張した表情をしていた
ゴクリと紅茶を飲み込んだ時、シーザーは一瞬長く瞬きをして俺の方を見た
「俺はもうナマエ兄さんを失いたくない、ナマエ兄さんも知っているだろうワムウもこのASBに参戦しているんだ……ここでは死なないが俺はナマエ兄さんが傷付いているのを見たくない……」
シーザーは辛そうに眉毛を下げながら俺を見てそう言った、その言葉に俺は少し心が痛んだ、だが俺も波紋戦士だ戦わなくてはならない
俺は少し俯いているシーザーの頭に手を置いてくしゃりと髪の毛を撫でた、シーザーは少し驚いたように目を大きくして俺の方を見た
「シーザー悪いが俺はお前と同じ波紋戦士だ、確かにワムウと会うのは怖い、あの神砂嵐をまた受けると思うともっと怖い、だが俺はもう逃げないって決めたんだ」
そう言うとシーザーはゆっくりと瞼を閉じて頷いた、そんなシーザーの行動を見て俺は笑いながら手を離す
シーザーは分かったと小さく返事をしたが、あまり賛成しているわけでは無いようだ
それからすぐに俺はASBの戦いに呼ばれてしまいシーザーを完全に説得する事は出来なかった、しかもワムウと戦う事になってしまい観客席からシーザーの怒鳴り声が聞こえた気がした
結果はボロボロだがなんとかワムウに勝つ事ができたので良しとする、ワムウは控え室に戻る時俺に握手を求めてきたのでこれからの事も含めて握手を交わした
立派な戦士になったと言われ喜びながら部屋に戻るとシーザーに何回も質問攻めにあったのは言うまでもない
だが俺はこのASBに来れて良かったと心から思っている生まれ変わるよりこちらの方が住みやすい、俺はまだ質問してくるシーザーの頭にナマエ・A・ツェペリとしての手をもう一度置いた