Short2

□煙たいキス
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乾燥した草が焼ける音が微かに聞こえ、そしてすぐに溜め息をつくような息を吐く音が聞こえた、少しして部屋の中に充満する煙の臭い

私はこの臭いが大嫌いだ、息をすると煙が肺に入っていく感覚が何より嫌いなのだ


「ゴホッゲホッ……うぇ……」


思わず咳き込むと、あからさまに嫌な顔をする土方さん

真選組の中で一番のヘビースモーカーの土方さん、その土方さんの助手と言うか、専属の女中みたいな感じの立ち位置が私ナマエだ

タバコが嫌いな私と大好きな土方さん、何故こんな立場に就いてしまったのだろうか、ある意味神様のイタズラなのだろうか、イタズラとしては冗談が過ぎる

手で口を押さえ咳き込んでいると土方さんは一旦口からタバコを離し、私の名前を呼んだ


「ナマエ……」

「なんですか」

「……そんなあからさまに咳き込むな、なんかスゲェ悪い事してるみたいじゃねぇか」

「現にしてますでしょ、タバコ、消して下さい」


土方さんは少し目を釣り上げて私にそう言ってきた、負けじと私も土方さんが持っているタバコを指さしながら言うと、今度は顔を歪ませた

タバコを持っている右手を器用に使い頭を掻きながら土方さんはタバコを一旦灰皿に立て掛けた


「……お前なぁ、いい加減慣れろよ、そんなんじゃ俺と一緒に居る時間が短くなるぞ」

「……土方さんが禁煙すれば事が済みます」

「……チッ」


土方さんは困ったようにそう言ってきたが私はそのまま自分でも正論を言ったと思う程の正論を言った

そういえば言い忘れていたが、私と土方さんはこんな関係なのに付き合っている、もちろん屯所内では内緒だ、なにより恥ずかしい

私は好きだからこそ土方さんにタバコをやめて欲しいのだ、肺が真っ黒な土方さんなんて嫌だから

最も、もう手遅れかもしれないが……それでも私はやめて欲しいと思う


「土方さん、土方さんの肺が真っ黒になったら私は寂しいですよ」

「……もう手遅れだ」

「……このニコチン中毒が……」

「ナマエ、今結構ドスの利いた声がしたんだが……?」


こういう時は全く折れてくれないのが土方さんだ、自分の信念を貫いてくれるのはとてもいい事なのだが、それではダメなんだ

私と一通り話した後に土方さんはまた慣れた手つきで立て掛けていたタバコを吸い始めた

また充満する煙に私は自然と眉間にシワが寄る、やはり何度も目の前で吸われているがどうも好きになれない

元々煙を肺の中に入れるのという行為が理解できない、お風呂に入っている時湯気を吸ってしまって咳き込んでしまうのに何故この人は煙を肺に入れるのか

肺と言うのは結構大切な臓器なのに、生命を維持するのにも重要な臓器なのにそんなに無下に扱っていいものなのだろうか

そう思いながら私は土方さんがくわえているタバコを睨み付ける、土方さんがもし倒れてしまったり息切れが酷くなったらこのタバコのせいに私はするだろう

そう思うとなんだかムカムカして、私はまた更にタバコに睨みを付けた


「……ナマエ、なにしてんだ」

「なんでもないです、土方さんは気にしないでください」


土方さんが不思議そうにそう言ってきたが私はそのまま気にするなと言う

と言うか、私が土方さんの体調を気にしているという事がバレるとなんとなく恥ずかしいのだ、もちろん付き合っている以上そういうのは当たり前かもしれないが、いつも素っ気ない態度をしてしまうので改められるとなんとなく恥ずかしいのだ

我ながら不器用な生き方をしてしまっていると思い、思わず溜め息をついてしまった、身体を土方さんから正面に戻し、私は近くで漂うタバコの嫌な臭いをあまり吸わないように気を付けながら書類に目を通す

すると、トントンと軽く肩を叩かれた、何事かと思い顔を向けると同時にタバコの煙の臭いがして、正面には土方さんの少し長い睫毛が見えた

唇には柔らかい感触がしてからようやく土方さんからキスをされている事を知り、私は顔が熱くなるのを感じた

それにしても土方さんがさっきまでタバコを吸っていたからか、タバコの煙の臭いが直に来る、これは辛すぎる

土方さんを離れさせるため、肩を強めに押すと、土方さんは少し名残惜しそうに離れてくれた


「……ッ土方さん!!なんて事を!!」


土方さんに向かって怒鳴ると、土方さんは右手に持っていたタバコをまた吸いながら


「こうすればタバコに慣れるかと思ってよ」


と、ケロッとしながら言ってきた、そんな土方さんの言葉に私はまたキスをした事を再確認して顔が熱くなった

それを見て土方さんはニヤリと笑うが、私は構わず怒鳴る事にした


「やめて下さいよ!!もう、タバコの煙の味が口の中に広がってます!!」

「そのタバコの煙の味が俺とのキスの味」

「ギャァアアァアァァア!!サラッとそう言うの言わないでください!!」


なんとなく形成が逆転してしまったような気がするが、ひたすら気のせいだと思いたい

それから私達はしばらく、タバコの煙の臭いが充満した部屋で言い合いをした、よくキスが甘い味だと言う人もいるが、私の場合は大半が苦い味だ

どうにかなるなんて思ってはいない、最近は苦い味もいいかもしれないと思い始めているが、土方さんにはきっと調子に乗るだろうから秘密にしておく

なによりタバコは体に悪いのだから
 

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