Short2

□笑顔が離れなくて
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(静雄視点)


俺がトムさんが勤めている会社に入って少し後にある女が入社したと聞いた、俺にとっては後輩となる存在だったが、女というのは脆くて俺はなるべく近付かないようにしていたからどんな奴なのかは知らなかった

そもそもここは借金を取りに行く仕事場、女ならすぐに根をあげるものだろうと思っていた

だが、俺の後輩……ナマエは俺の想像を覆す存在だった


「えっと……静雄先輩?平和島先輩の方がいいのかな……平和島先輩!!今日はトムさんが休みなそうなので、私、ナマエと回収に行くらしいです!!」

「……そうか」


俺が想像していたのは身長は少し低めで、どこにでもいる社会人だった、だが目の前にいるこの女……ナマエはパッと見たら中学生にも見えてしまうほど小さい奴だった

それなのに履歴書にはしっかりと二十歳を少し超えた年齢が記されていた、信用していない俺の視線に勘づいたのかナマエは運転免許証を見せてきた、しっかりとした社会人だった

俺は少し溜め息をついた後、ナマエを連れて回収作業に向かう事にした

ナマエは自称人見知りらしくまだ会って少ししか経ってない俺に一言も話してこなかった、俺としては好都合でヘタに話しかけられるのもムカつくし、なによりナマエについて俺は何も知らないのだ

回収作業は驚くほどスムーズに終わり、俺達は会社に帰る事にした、だが途中ナマエが立ち止まった


「どうした?」

「えっ!?いや……」


まるで遠くの何かを眺めるようにショッピングモールを見ているナマエにゆっくりと歩み寄り声をかけると同時にショッピングモールを覗いてみた

丁度ナマエの視線の先にはジャンクフードチェーン店があり、そこはシェイクが甘めの味だと噂の店舗だった

二、三回瞬きしてからナマエの方を見てみると、顔を真っ赤にして俯いている、何が恥ずかしいのかと思いながら俺は少し緊張しながらもナマエの頭に手を置いた


「……平和島先輩……?」

「……丁度俺も甘いもんが飲みてぇって思ってたところだ……一緒に飲むか?」


視線だけナマエの方を向けながらそう言うと見るからに嬉しそうに口元を緩ませて勢い良く頷いた

やはりこう見てみると子供っぽいななんて思いながらショッピングモールの店内に入る

店員にシェイクを二つ頼み店内で飲む事にした、シェイクを渡すとナマエは目を輝かせながら礼を言い受け取った

まるで犬にでも餌付けをしているようで少し笑ってしまいそうになったがナマエが見ているのでなんとか堪えた


「美味いか……?」

「ハイッ!!とっても!!……あ、すみませんお金……」

「いいっていいって、お近づきのしるしに」

「……あ、ありがとうございます」


ナマエがお金の事を気にしたがここは少し先輩らしくしたくて断るとナマエは少し申し訳なさそうな顔をしたが一口シェイクを飲むとまた少し口元を緩ませた

コロコロと表情が変わるなんて思ったが俺も言えた事ではないかと思いながらシェイクを吸う

ふんわりと甘い味が広がってきて、これでは口元が緩むのも無理はないなと思いながらナマエの顔を見ながらシェイクを飲み続けた

それからは真っ直ぐ会社に戻ったが、帰宅着てからもまだナマエの柔らかい笑顔が頭から離れなく、少し困ってしまった

可愛い後輩と言うのはこういう物かなんて思いながらシェイクを飲んだ時交換したナマエのメールアドレスを眺めながらそう思った
 

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