Short2
□後悔先に立たず
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ジョセフの心臓と喉にある毒薬が溶解するまであと約五日……昨日はカーズとジョセフの赤石の取り合いが崖で起きたがなんとか奪い返した
そして今、エシディシが送った宛先のホテルの前に俺達は居た、正確には建物を監視しているのだが
祖父からの因縁の事もあってシーザーと共に真剣にホテルを眺める俺達とは違い、ジョセフなんだか気が抜けてる感じがする
そんなジョセフをシーザーは気に食わないようで少し睨んでいるようにも見えた
ちなみにシーザーの態度は以前変わらず俺も少し諦めている、元に戻って欲しいのも山々だが、今の態度が一番落ち着くと言うか……名前を呼んでくれただけでもいいのだ
そんな事を思っているといつホテルに潜入するか作戦が立てられ始めた、シーザーは少し焦っているように見えたが祖父からの因縁だ俺だって焦っている、だがこういう時こそ落ち着くべきなのだ
「俺は反対だ」
そんなジョセフの声に全員が振り返った、ジョセフはカーズ達が永く生きているからこそ太陽の対策を考えていない訳が無いと言った
なんとなく分かる気もするが、シーザーがそんなジョセフの言葉を否定する、そして段々と二人の勢いが激しくなっていき、今シーザーに言ってはいけない言葉をジョセフが放った
「会ったこともねえ先祖の因縁なんかクソ喰らえだスカタン!!そんな事でテメーが死んだらマヌケだぜ!!このアホがッ!!」
そんなジョセフの言葉を聞いて、俺は怒りに震えるシーザーを押さえようと手を伸ばした、だがシーザーはついにジョセフを殴った
「言ってくれたな…ジョジョォォォ!!」
それから殴り合いになる二人を俺はリサリサ先生とメッシーナ師範代で止める
ようやく二人は落ち着いたが、シーザーはまだホテルを睨んでいる、そんなシーザーを見てリサリサ先生は夜カーズ達を待つ事にすると伝えた
だが、あんなにリサリサ先生には素直だったシーザーはリサリサ先生の言葉を否定した、そしてベランダから飛び降りようとする、そんなシーザーの肩を俺は強めに掴んだ
「……ナマエ兄さん……」
「シーザー、落ち着け」
今までシーザーのやる事に何も言わなかったためか、シーザーは俺の言葉を聞いて微かに目を見開いた、リサリサ先生達も若干驚いているように感じた
「ナマエ兄さん!!兄さんも分かるだろう!!俺達の祖父からの因縁じゃないか!!」
「ああ、分かる…だが落ち着け、今のお前は冷静じゃない」
「……ッ!!冷静になんて……ナマエ兄さんどうしたんだよ!!」
「今行ってもどうにもならないだろう、お前一人でどうにかなる相手じゃない、もし二人いたらどうするんだ?」
「…………ッ……ナマエ兄さん!!」
俺の言葉にシーザーはどんどん怒りを露わにしていく、そんなシーザーを俺は少し冷たい目で見ながら口を開く
「お前が死んだら話にならないんだよシーザー、行くんじゃない」
そう言った俺の言葉にシーザーは怒りが爆発したのか、俺の胸倉を強く掴んできた
リサリサ先生達が止めようと動き出すが、俺は構わずシーザーの頬に拳を叩き込んだ
ゴツリと鈍い音がして、シーザーはベランダの柵に飛んでいった、俺の拳はまだジンジンと痛んでいる
俺がシーザーを殴った事に驚きを隠せないのかリサリサ先生達は目を見開いて俺とシーザーを見ていた、シーザーは俺に殴られた頬を押さえながら俺を呆然と見ていた
「そこで少し頭を冷やすんだお前は冷静になってから来い、どうしても祖父からの因縁に決着をつけたいなら俺も行く」
呆然としているシーザーにそう言い残して俺はベランダから飛び降り、雪の中を歩き出した
まだシーザーを殴った拳は痛んでいる、初めてシーザーを殴ってしまった、初めてシーザーと喧嘩をしてしまったと少し罪悪感を感じながらホテルに向かった
「……ハハッ……これで……俺も……いい兄貴に……なれたか……な……」
全身が痛い、神砂嵐をまともに食らったのだから当然なんだろうが、これは痛すぎる
お陰で俺もホテルの中もボロボロだ、今にも崩れそうだ
弱々しく呟いた俺の声に反応したのか、ワムウが近付いてきた、トドメでも刺そうとしているのかなんて少し他人事に考えながら俺は荒い息を繰り返す
「……ワムウ……悪い……な……」
ワムウに一言そう言ってから、俺は短いナイフをワムウの解毒剤のピアスに向かって投げた
痛みに耐えて投げたナイフは勢い良く飛び、ワムウのピアスに引っかかり、壁に刺さった
そんな俺の行動にワムウは驚いた、解毒剤はジョセフに必要なものだからだ
「貴様……!!何故解毒剤のピアスを……!!」
「……ジョセフさ……俺とは…違って、シーザーと仲良く……やってるみたい……なんだわ……そんな奴を……失うわけには……いかな…いだろ?……」
「……弟の為か……」
「いや…………ジョ…セフの為でも……ある……それに……ツェペリ家は……ジョースター家に……なにか託すもんさ……父さんは……シーザーを守ったしな……俺だけ……なんもしないなんて……カッコ悪いだろ……?」
「…………」
ワムウに向かってこんな事を言うなんて俺はどうにかなってしまったのだろうか、なんて考えながらボッカリ開いた壁の穴を見る
しかし、そこには誰もいなくて、せめて最期に会いたかったなんて思った時、俺の真上の天井が落ちてきた
天井がほんの少し俺に当たった時、壁の向こうに見慣れた金髪が見えた気がした
「ナマエ兄さんッ!!!!」
これで俺も誇り高い立派なツェペリ家の仲間入りだ…シーザー、お前はすぐに来るんじゃないぞ、もっと長生きしてお爺さんになったら来い
そう言いたかったのに俺には時間が無かったようで、シーザーの声が聞こえた瞬間意識は無くなった