Short2
□約束は守ります
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初恋は実らない……一体誰がそんな事を言ったのだろうか
その説をことごとく打ち砕いた人物が私の旦那だ
私の旦那はどうやら本当に私が初恋の相手の様で、あの時の誤ちを時々思い出す、誤ちと言っても現に私は幸せだが、欲を言えばもう少し恋愛をしても良かったのではないかと思うのだ
話を戻そう、事の発端は私が中学生の頃、中学生ならおそらく誰でも体験するであろう教育実習だ
初日は私の旦那……カーズは私の事なんて見向きもしなくてただ積み木を積んだり、絵を書いたりして遊んでいたのをなんとなく覚えている、本人によると照れてしまいそんな事をしていたなんて言っていたがそんな雰囲気は一切なかった
思えばその態度が全ての元凶だったのかもしれない
どうしても皆に好かれたくて私はあの日、カーズに話しかけたのだ
「えっと……カーズ君……だよね?」
「……そうだ」
「一緒に遊ばない?」
「おまえはどうせ、すぐにいなくなってしまうのだろう?」
「え?……う、うん、そうだね」
「……しかたないからあそんでやる」
そう答えたカーズの態度に私は嫌われているのかと思ってしまったが、実際のところ遠回しに離れるのが悲しかったのだとカーズと結婚した今なら分かる
カーズは感情をあまりオープンに出そうとしない人だ、前も急に無言で抱きついてきたと思ったら、カーズの同僚、エシディシさんが私の事が可愛いとか言っていたようで心配になったそうだ
そんな、昔から難しい思考回路をしていたカーズが、私に告白をしたのは、私が教育実習を終えて帰る頃だ
「……ナマエ、かえってしまうのか?もう、ここにはこないのか?」
「うん……残念だけどね」
「……おれは、ナマエとはなれたくない……ッ……ナマエ!!おれがおおきくなったらナマエをむかえにいってもいいか?このカーズのよめになれ!!」
「えぇ!?……うん、まあ……いいよ」
「!!ほんとうか!?やくそくだぞナマエ!!」
カーズを幼稚園児だからといって甘く見ていた私の生涯の選択ミスはここにあった
教育実習の思い出も薄れてきて、聞かれないと思い出せない程の記憶になってきた時、私はある人とすれ違った
その人は髪の毛がとても長く、黒っぽい紫が合う人だったのを覚えている、そう、私は一度カーズとすれ違った事があるのだ
カーズがまだあの約束を覚えているのを知らずに、私はそのまま道を歩いていた、すると急にすれ違った人が手を掴んできたのはある意味トラウマ物だ
「えっ!?なに!?」
「ナマエ!!久しぶりだな!!」
「え?なんで名前……?」
「私だ!!カーズだ!!本当に久しぶりだな!!」
「……??」
「後少しだけ待ってくれ…そうすればあの約束を果たせる……今はまだ学生だが、はやくナマエを迎え入れれるようになってみせるのだ」
「……話が読めないのですが……」
「しかし、ナマエ…以前より可愛くなったな……もっと話していたいが今から少し用事があるのだ、すまない……会えて本当に良かった」
「……聞いてねぇよコイツ」
カーズはペラペラと私が引いているのも気付かず話し続けているだけだった、なんとなく怖い感じがしなかったのはやはり昔会った事があるからだろうか
それからは特にカーズに会う事もなく、いつも同じ生活をしていた
そんな生活が音を立てて崩れるのは私がそろそろ三十代になる頃だった