Short2
□流石のクレDさん
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少し歳を取った先生の声が教室内に響く、ほとんどの人がノートを取っているため、シャーペンの芯が削れる音がする
そんな授業中真っ只中の空間で、私は一人自分の指をじっと眺めていた
よく見ると分かるのだが、左人差し指の爪の横の皮が少しめくれている、これではきっと服の繊維の隙間に挟み、べロッと剥けてしまうだろう
そうなる前に私はいつも逆の手で摘み、力の限り捲るのだ
「……またやってしまった……」
とても小さい声で私は思わずそう呟いた、理由は簡単だ、力の限りささくれを引っ張ったのはいい、だが……
「血が出た……痛い」
いつも引っ張り過ぎて血が出てくるのだ、しかもジンジンと痛みが来る
今が最後の授業でよかった、これならすぐに治してもらえるだろう
そう思った直後、タイミングよく授業が終わった、そして帰りのSTを終わらせ、私は指を気にしながら門に向かって歩いた
門の前ではもう仗助が待っていた、元々幼馴染みの私達にとっては行きと帰りを一緒に行くのは最早癖になってしまってる
「お待たせ仗助」
「別にそうも待ってねぇよ」
「あれ?康一君と億泰君は?」
「康一は由花子と、億泰は先生に呼ばれてな、先に帰ってくれってよ」
「へぇ……そっか」
そう言い合い、私達は門を出た、私が指の事を言おうとした時より前に、仗助は視線を下に降ろして小さく溜め息をついた
そんな仗助を見て、思わず私は身構えてしまう
「また皮めくったのかよ……」
「ごめんごめん」
仗助は私の手を少し雑に掴むと、溜め息混じりにそう言った、そんな仗助に私は軽く謝る
「知ってたか?指の皮とかめくるのって、一種の軽い自傷行為らしいぜ」
「えー、嘘だ」
「マジだよ、だからあんまりめくり過ぎんなよ?」
「……ん、分かった、少しは気をつける事にする」
仗助は少し軽い口調でささくれの事を言った、が、内容は完全に私を心配している、そんな仗助に私はなんだか申し訳なくなってしまった
少し気分が落ちてしまった私の手を包み込むように掴み、仗助はクレイジー・ダイヤモンドを出した
私も以前、スタンドの矢に射られたのでスタンド使いになり、クレイジー・ダイヤモンドは見えるが、今日はいつもより少し悲しい顔をしているように見えた
そもそもスタンドに感情はあるのかなんて思いながら、ゆっくりと治っていく指を眺めた
「ほら、終わったぞ」
「ありがとう、仗助」
「しかし、ナマエってよく血が出るまで皮捲れるよな、痛くねぇの?」
「……痛いんだけど、なんか捲っちゃうの」
「普段はほっぺた摘まれるだけで機嫌損ねるのにな」
いつもの帰り道を歩きながら仗助とそう話す、しばらくいつものように話していたが、急にパタリと会話が途切れてしまい、なんとなく物足りない感じがして私は思わず自分の指先に手を伸ばした
その私の手を仗助はクレイジーダイヤモンドで静かに掴んだあと、今度は仗助自身の手で掴んだ
「こうすればもう捲らねぇだろ?ささくれ」
少し不機嫌そうにそう言う仗助を見て、私は密かに口角を上げて、仗助の指に自分の指を絡めた