Short2
□生きるか死ぬか
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私の家に不思議な同居人が来たのはもう随分と前になるかもしれない
同居人の話の前に私の事を軽く話そうと思う、私は俗に言う"死にたがり"だ、人生に疲れて、仕事にもやりがいと言うものが無く、全てに無関心……
そんな私は他人から見たらとても不気味で奇妙な特徴のようなものがある、私は死にたがりなのに死ねないのだ
例えばビルの屋上から飛び降りたとする、するとどうだろうか、私だと下にあった何かがクッションになって軽く骨折する程度だったり、毒を飲んでも何故か効かなかったり、手首でも斬ろうかとカミソリを取り出して斬ろうとしても刃毀れなどで斬れなかったりと……様々な事が私の死を妨害するのだ
私の話が終わったところで同居人の話をしようと思う
「ディアボロ、別にアンタが料理しなくてもいいのに……包丁で死ぬよ?」
「フン……誰がそんな危ない橋を渡るか、キングクリムゾンを使って料理をしたという結果だけを残す……」
「いや、ちゃんと料理しろよ」
彼の名前はディアボロ……実はいうと同居しているのに名前ぐらいしか知らない、あとは彼の運命ぐらいだ、それ以外は教えてくれない、日本人ではない事は確かだがどの国の人なのかは知らない
そんなディアボロの運命は、死に続けること……なんでもある少年の能力というものに当たり、死に続けるようになったとか……
どこまでが現実で、どこまでが妄想なのかは知らないが、とにかくディアボロが死に続けるのは事実だ
彼との出会いはとてつもなくシュールでロマンチックの欠片もないものだった
「うわぁっ!!ゴキブリッ!!」
「ぐあああああッ!!!?」
それが彼との初めての会話だ、ゴキブリが出てきたので即座にスリッパで叩いたところ、何故か彼がゴキブリとスリッパの間にいたのだ
それからなんだかんだで一緒に生活する事になった、おそらく私は彼がいればいつか巻き沿いを食らって死ねるかもしれないし、彼は私がいれば死ぬ確率が減ると言う所からだろう
「ギャァァアアァァアァ!!包丁がァァァ!!」
「ほーら、言わんこっちゃない」
「ナマエがしっかり料理をしろと言うから……!!」
「私が悪いって言うの?そんな事言うと道路沿いに連れてくよ?」
「グッ……もう車には轢かれたくない」
「車ってどんな感じ?」
「……それを聞いてなんになる?」
「私の気分が晴れる」
「…………相変わらずだな」
ディアボロといつもの会話をしながら料理が完成するのを待つ、だが、一品は血に塗れているであろう、食材が勿体無いが、貧しさで死ぬのも悪くなさそうだ
ディアボロはまだ懲りずに料理を続けているが、時々悲鳴が聞こえるのは勘違いではないだろう、私の家のシンクを血で汚さないで欲しい
「ディアボロ……ってなにしてんの」
「グッ……ナマエッ……急に冷蔵庫が落ちてきたのだッ……」
「…………」
一度悲鳴が聞こえたあと、静かだったので見に行ってみるとディアボロは冷蔵庫の下敷きになっていた
そんなディアボロを私は呆れながら助け出す、冷蔵庫の下のディアボロを足で蹴りながら私が入るスペースを作り、心臓の所に一番重そうな部分を当てる、するとさっきまで重かった全身が軽くなり、難なく冷蔵庫を足と手で上げる事ができた
簡単に持ち上がる冷蔵庫を見て、私はまた溜め息をつく、また死ねなかったと
だが、そんな私とは対照的にやはりナマエは凄いだの、何故そんなに生きていられるだの、死にたがりなのが勿体無いだの言ってるディアボロは結局コンロに火をつけた時のガス爆発で死んだのだ
そして、ススだらけになったシンクを拭いていると切ない顔のディアボロが帰ってくる
これが最近の私の大体の日常である