Short2
□煙の匂い
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ナマエとそんな話をしたのは大分昔だ……カーズを大気圏外に追い出してからしばらくして、俺は不動産会社を建てた
思えば、俺はナマエと違って、今だに一度も煙草を吸ってない
「ちょっと吸ってみようかな……」
そう呟いて、記憶を頼りにナマエが吸っていた煙草と同じ銘柄の物を買い、家のベランダで吸ってみた
煙草をくわえて、火をつけるとすぐに煙が口の中に入ってきた
「ッ……ゲホッ……!!」
体験した事もない苦しさに思わずむせてしまった、そして今度はしっかりとくわえて息をゆっくりと吸ってみた
じわりと肺の中に煙が入っていくのを感じて咳き込みたくなってくるが我慢する
そして、煙草を口から離し、煙を吐くとナマエのように上手くいかなかったけど白い煙が口から出てきた
一気に懐かしいナマエの匂いが辺りに広がった
「……ゲホッ……やっぱ俺には無理……ッ……気持ち悪いだけだぜ」
ポツリとそう呟いて、ベランダの柵に煙草を押し付けて揉み消す、そしてまた何度か咳き込んで、柵にもたれる
「なぁ、ナマエ、シーザー、師範代……早く帰ってこないとスージーが作った飯……冷めちまうぜ……」
そんな事を呟いた瞬間、俺は三人を思い出して泣いてしまった
だが、きっとこれは慣れない煙草の煙のせいだと勝手に決めて、俺は涙を流し続けた
天国というものがもしあるのなら、多分今の俺を見て三人は笑っているのだろうか……
俺はゆっくりと持っていた煙草の箱を握り、ひたすらに涙を流した