Short2
□喫煙者の楽しみ
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喫煙者というものはどうしても肩身が狭く辛いものだ
やれ副流煙だの、やれ未成年者が真似するだの、やれ肺ガンになりやすいだの、やれポイ捨てだの……嫌なイメージしかない
かと言って、若気の至りでかっこいいからと言う理由で吸う奴らもいる
そして、その未成年者の親は、喫煙者がいけないと言うのだ
「本当、肩身が狭いよね」
「ああ?」
「なんでもないよ」
思わず思った事を呟いてしまった、いきなり話の途中で意味のわからない事を言ってしまったので隣にいる静雄がこめかみに血管を浮かせた
それを宥めて、私はまた静雄の愚痴を聞く
今日はどうやら、借金を取りに向かったのはいいが、貯め込んでいた奴がまたネチネチしていたようだ
話し方がどうも臨也と被ったらしく、静雄は近くにあった落下防止の手すりでソイツをぶっ飛ばしたようだ
「アンタも苦労してんだね」
「すげぇムカついた」
「まあ、アチラさんは何でキレられたのか分かってないだろうけど」
そう言い合って私は静雄の頭をぐしゃぐしゃと撫で回す、そんな私の手を静雄は少し照れているのか乱暴に退かした
私と静雄の関係は、至って簡単な関係だ、高校が一緒で趣味が合い、意気投合して仲良くなった仲だ
静雄には特別な怪力があったが、話す分には関係がないので私は全く気にしなかった
静雄は最初こそはなるべく私に被害が及ばないように余所余所しかったが、私が気にしてない事が分かると普通に接するようになった
「ナマエ、そう言えばお前、煙草吸うようになったのか?」
「何よ、悪い?」
「だって女が煙草吸うなんて、デメリットしかねぇだろ?」
「煙草のデメリットなんて男も女も関係ないよ」
「関係なくても吸うな、前にも言ったろ、ナマエに何かあったら俺は数少ないダチを一人失っちまう」
「……そんなに言うならやめる」
胸ポケットに入れておいた煙草の箱を静雄に見られてしまい、案の定やめろと言われた
前にも一度吸っていた時期があったが、同じ事を静雄に言われやめたのだ
だが、依存性のある煙草をそうやめられずまた吸ってしまったのだ
「全く、お前は本当に自分の体を大切にしねぇな」
「あたりかまわず喧嘩をする静雄に言われたくないよ」
「俺は丈夫だからいいんだよ」
また静雄と言い合って、私は胸ポケットの煙草の箱を開ける
確か残り一本あった筈だと思い出して、見てみると記憶通り、一本だけ哀愁を漂わせて残っていた
それを取り出し咥えると、静雄はあからさまに嫌な顔をした
「テメッ……さっき言ったばかりだってのに……」
「これで煙草やめるからさ……一本だけ」
「……チッ」
静雄に最後だからと頼むと、しぶしぶ承諾してくれた
隣で静雄の紫煙が漂う中、私は自分の煙草に火をつけようとした時、ライターが無い事に気がついた
丁度、静雄と会う前、ライターのオイルが切れてしまって捨ててしまったのだ
「どうした?吸うんじゃねぇのか?」
一向に吸わない私を横目に見て、静雄はそう言った、私はそんな静雄に煙草を咥えたまま、ライターがないを事をジェスチャーで伝えた
そんな私を見て、静雄は一度溜め息をつくと、指でしっかり煙草を支え、私にスッと近付いた
正しく目と鼻の先に静雄の顔が来た時、私の煙草と静雄の煙草が重なった
そして静雄が息を吸うと、私の煙草に火がついた
「……ほらよ、これならライターなんて要らねぇだろ?」
「…………静雄、意外と大胆なんだね」
「うるせぇ、火ィ付けてやったのにそう言う事いうな」
俗に言うシガレットキスをした静雄を茶化すと、静雄はさっき私がしたように頭をぐしゃぐしゃと撫で回した
私は静雄のようにその手を退けようとはせず、そのまま撫でられたままでいた