Short2

□頑張った君に
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(シーザー視点)


昔の俺はだいぶ荒れていた、殺人以外の犯罪には手を染めていた、だがそんな俺にも大切な奴はいた

親のせいで貧民街で暮らしていたが、それに似合わず綺麗な顔、綺麗な心を持っていたナマエという女

それもその筈、ナマエは犯罪は愚か、人に向けて拳も振り上げられないほど優しかった

どんなに相手が悪くても、泣きそうな顔をして謝ってくるのだ

そんな正反対なナマエと俺が知り合った理由は親が顔見知りだったのだ

まだナマエの親が貧民街で暮らす事になる前、俺とナマエは一度挨拶をした


「シーザー君、すまないがナマエと仲良くしてやってくれないか?この子、どうしても人と接するのが苦手でね……」


そう言いながらナマエの父親は俺に視線を合わせて言ってきた


「……ッ……よろしくおねがいします……」


そんな父親に続いて俯きながら俺に挨拶をしてきたナマエ、そんなナマエを無言で見ているとナマエは顔を赤くしたり青くしたりした

コロコロと変わる表情をもう少し楽しみたかったが、俺はナマエの手を掴んで


「よろしくな、ナマエ」


と、言った、すると嬉しかったようで満面の笑みで返事をするナマエ

それが俺とナマエの出会いだった

それから最初はぎこちなかった俺たちだったが、少しずつ会ううちに仲良くなって兄妹の様になったのだ

だが、そんな楽しい時間もあっと言う間に過ぎて、ナマエは何も言わずに貧民街へ行ったのだ

その後に続くように俺の父親も波紋の修行のために俺達を置いて行ってしまった

バラバラになった後、再会したのは最悪な場所だった

俺が強盗をしようと忍び込んだ家がナマエの家だったのだ


「……シーザー……?」

「ッ!!!?」


夜は大体遅くまで起きていたナマエと思わぬところで再会した俺は動揺のせいか、何も言わずに仲間とナマエの家を飛び出した

それからナマエは俺の噂を頼りに俺に度々会いに来た

危険だと言って何度も家に返したが、それでもナマエは俺の傍を離れなかった

だが、ナマエはまた俺から離れて行った、ほぼ毎日来ていたのにパタリと来なくなったのだ、それと同時に俺は自分の父親の意志を継いで波紋の修行に入った

俺達は二度と会えないと思っていたのに、奇跡というものはある物なんだな……


「ナマエ……」


ずっと呼びたかったその名前を口にすると、目の前にいるナマエはニッコリと笑いながら振り返ってきた


「シーザー、久しぶりだね」

「あ……ああ」


あの頃と変わらない綺麗な声色で返事をしてきたナマエに俺は少しだけ照れてしまった

そして、ナマエは俺をソファーに座らせてコーヒーを煎れて俺に渡した


「それにしても久しぶりだね」

「ああ……そうだな」


懐かしそうにそう言うナマエに俺は素っ気ない返事をしてしまう

それよりここはどこだろうか……さっきまで俺はスイスに居たはず……そして、カーズ達のホテルを見つけて……?それでどうしたんだろうか……?

砂嵐がかかったように思い出せなくて唸っているとナマエがクスリと笑いだした


「ここがどこか分かってないみたいだね、シーザー」

「!!」


思っていた事をズバリ当てられ、少し目を見開いているとナマエはコーヒーを飲みながら


「シーザーはちゃんと柱の男っていう人達を倒して、私に会いに来てくれたんだよ?忘れちゃったの?」


と、少し驚く事を言ってきたが、そう言われた瞬間、ハッキリとカーズ達を倒した俺とジョジョ、リサリサ先生とメッシーナ師範代の姿が思い浮かんだ

あまり信じられない事だったがナマエに言われるとなんだか真実のような気がする


「そうか……そうだったんだな……ハハッ、ド忘れしていたよ……」

「まだボケるには早いよ?シーザー」

「ほっとけ」

「そんな言い方はないんじゃない?スケコマシーザー君」

「……誰から聞いた」

「んー?ジョセフかな?」

「……あの野郎……!!そう言えばジョジョとリサリサ先生達は?」


ナマエの言葉にジョジョ達の事を思い出す、二人はどこに行ったか聞いてみるとナマエはコーヒーを飲み終わったようでカップを受け皿に戻して


「ジョセフはスージーQと結婚して新婚旅行、リサリサ先生も二人に付いて行ったよ、ジョセフのお母さんだったんだって」

「なんだと!?」

「まあまあ、落ち着いて……」

「あの二人が……親子だと……するとなんだ?俺は……俺はァァァ!!」

「シーザー……落ち着いてってば」


サラリと衝撃的発言をされて俺は少なからずショックを受けた

なぜ俺が知らなくてナマエが知っているのか謎だったが、そんな事は考えられなかった

それから少しして、よくやく落ち着いた俺にナマエはチョイチョイと手招きをした

何事かと思い、ナマエの隣に座ると、いきなりナマエの方に引っ張られ、倒れ込んでしまった

俗に言う膝枕と言うやつだ


「なっ!?ナマエ?」

「シーザー、色々とお疲れ様」


思わずナマエの方を見たが、ナマエは落ち着いた様子で俺の頭を撫でてそう言ってきた

その言葉に俺は退く気を無くしてナマエの好きなようにさせた

ゆっくりと頭を撫でられて眠気が襲い、俺はゆっくりと意識を無くした


(ナマエ視点)


「ごめんね、シーザー」


そう言いながら寝てしまったシーザーの頭を撫でる、さっきシーザーに言った事の最初の方は嘘だ

シーザーはあの二人と柱の男は倒してない、シーザーは逆に敗北したのだ

ジョセフと言う仲間に自分のバンダナと解毒剤入りのピアスを置いて……

私はずっとシーザーを待っているつもりだった、いつか、シーザーが家庭を持って、おじいちゃんになって……後悔のない人生を歩んでから会うつもりだったのだ


「なのになんでこんなに早く来ちゃうのかなァ……」


溜め息混じりにそう言って、私はまたシーザーの頭を撫でる

シーザーと私が、まだ貧民街にいた時、私はシーザーに会いに行っていたが急に行けなくなってしまった

理由は簡単だ、貧民街で暮らしていたせいか、父親がクスリに手を出し、それを止めようとした私は呆気なく殺されたのだ

そう、ここの正体は俗に言うあの世……

シーザーには悪いが、私が死んだ事は教えたくなかったので嘘をついたのだ、記憶までねじ曲げて……


「バレたら……怒るだろうなァ……」


なんで俺に嘘をついた!!と怒鳴るシーザーの姿を思い浮かべながら私はシーザーの髪の毛を触った


「でもまぁ……お疲れ様」


予定より早く来てしまったが、これも運命というものだろう……そう思いながら私はソファーの背に凭れた
 

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