Short2

□薄味パスタ
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さっきからやたらリゾットさんの声が遠くに聞こえる、まるで私を慰めるような声色だ


「言っていいものかと迷ったが……これだけは言っておく……プロシュートは"もし自分に何かあったら気にせずに忘れてくれ"と言っていた……すぐに忘れろとは言わない……気負わずにな……」


気まずそうにそういうリゾットさんの言葉が理解できなかった


「……大丈夫か?」

「はい…………大丈夫です……すいませんでした……」


リゾットさんの言葉に思わず謝ってしまった、何に対しての謝罪なのか、私自身分からなかったが、リゾットさんはそのまま静かに返事をして電話を切った

きっと、もうこの電話番号は繋がらないだろう……プロシュートがどんな仕事をしていたのかは詳しく教えてくれなかったが、なんとなくそんな気がした


「……あ、パスタ、茹でっぱなしだった」


電話から無機質な音が流れるのをしばらくボーッと聞いていたら夜ご飯にと茹でていたパスタの事を思い出した

まだ少しクラクラする頭で、私はキッチンに向かって茹でっぱなしのパスタを鍋から取り出す

適当に皿に盛って、同時にお湯に入れておいた簡単に作れるソースをかける

ソースのいい匂いが部屋に充満する中、私はテーブルにパスタを置いて、飲み物を置いてから椅子に座った


「……」


少しの間パスタを無言で眺める

さっきまでお腹がペコペコだったのに急に食欲がなくなった

そう言えばプロシュート、今度久しぶりに私の手料理が食べたいとか言ってたなァ……前食べさせたら「俺の作る料理の方がうまいな」とか、馬鹿にしてきたくせに……

行儀が悪いが机に頬杖を付きながら一週間程前のことを思い出す

……プロシュートの髪型、結局どう結んでいるのか分からなかったな……


「プロシュート〜」

「んー?なんだよ」

「よくこんなセットが難しそうな髪型してるね」

「ハン!!お前が不器用なだけだろ?」

「えー?知らないのプロシュート?私がディ・モールト器用だって事」

「ほォ……じゃあ今度機会があったら髪の毛結ってもらおうか?ナマエ」

「…………」

「どうした?」

「……いや、ナンデモアリマセン」

「嘘も程々にな」

「……プロシュート女子力高い」

「お前が低いんだよナマエ」


ソファーに座るプロシュートにそんな事を言いながら話した事もあった……

でももう、それが出来ない事だと気付くと私は目尻が熱くなった


「ッ……食べちゃお、冷めちゃう」


そう言いながら私は涙をこらえてパスタを口に含んだ

ゆっくりと咀嚼すると、急に電話がかかってきたからか、少し茹でる時間を間違えて少し薄い味になっていた


「薄っ……」


飲み込みながらそう呟き、私はそれでもまた口に含む

咀嚼を繰り返す度、さっき突きつけられた真実を思い出す

もう二度と、プロシュートには会えない、もう二度とプロシュートと話せない、もう二度とあの大人びた笑顔は見れない……

まるで走馬灯の様に次々とプロシュートの事が頭に浮かぶ

なにが忘れてくれだ……忘れられないよ……だって、仕事から帰ってきたら必ず煙草の匂いが染み付いたスーツで私を抱き締めてくれてたんだから


「ナマエ、そんな強く抱き締めるなよ、苦しい」

「いいじゃん、だってプロシュートのこの匂い好きだもん」

「ハン、匂いフェチとは……またアブノーマルな趣味してるな」

「匂いフェチじゃなくて、プロシュートの匂いがいいの」

「……わかったから離れろ」

「あれ?もしかして照れた?」

「照れてねぇ、いいから離れろ匂いフェチナマエ」

「だからー匂いフェチじゃないってば」


そんな事を言い合いながら一緒に晩御飯を食べた事もあった……

プロシュートの煙草の匂いを思い出した瞬間、さっきまでの薄味パスタが急に塩っけが強くなった

そんな濃い味になったパスタをゆっくりと飲み込んで、私は漏れてくる嗚咽を抑えたが、どうしても目から溢れ出てくる涙は止めれなかった
 

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