Short2

□止まる音
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ドクンドクンと心臓がやたら強く鳴る、それに合わせて傷口から血が溢れ出る

ああ、こりゃもう駄目だ……

そう思いながらも、泣きそうな顔で傷口を押さえる高杉の顔を見ると口が動かない


「大丈夫だ……ッ……だから……」

「しっかり……し……ろって?」

「ああ……ナマエ……きっと大丈夫……」


大丈夫大丈夫と連呼する高杉だが、なんとなく心のどこかでは察しているような気がする

言いたいなら言えばいいのに……

そう思いながら苦笑して、自分の傷口を見る

ドクンドクンとまだ心臓が激しく動く中、傷口からボタボタと血が溢れ出る

それを押さえる高杉の手は真っ赤になっている、綺麗な手が台無しだな……なんて思っている私はつくづく呑気だと思う

だが、そんな呑気さもそろそろ無くなるだろう……頭がボーッとしてくる

貧血のように視界にチカチカと花火のようなものが現れ、耳鳴りがする


「ナマエ!!しっかりしやがれ!!」


私を叱咤する高杉の声もどこか遠くに聞こえる、なんとも気持ち悪い空間なのだろう


「高……杉……」

「喋るな……」

「私、死んだら……天国かな?……地獄かな?」

「どっちでもいい……喋るな」

「酷いなぁ……これでも意外……に、悩んでるんだよ……」

「俺はお前をそんな所に逝かせない」

「ハハッ……束縛高杉」

「なんでもいいから……喋るな……喋らないでくれ!!」


口に血が溜まり、喋りにくい中で高杉に話すと柄にも無く高杉は涙を流した

思わず笑ってしまう、それと同時に力も抜ける、そろそろかも知れない……

私は最後に私の傷口を必死に押さえている高杉の手を掴んだ


「ナマエ……手を離せ……傷口を圧迫しねぇと……」

「もう無理……分かってる…でしょ?」


顔を伏せながら傷口を圧迫しようとする高杉に子供に言い聞かすように言う

高杉は一瞬肩をビクつかせ、まだ押さえている片方の手を私の手に合わせた


「痛い…よ……強く握り過ぎ……」

「……ッ……くッ……」

「泣かないでよ……傷口に滲みる……」

「ナマエ……ッ……頼む…逝かないでくれ」

「ハハッ……そりゃ無理って……もんだよ、高……杉……」


私の手を強く、キツく握る高杉に笑いながらそう言う

高杉の涙が私の頬に落ちる、それがなんだか私も泣いているみたいで、むず痒い

遂に視界もボヤけてくる、全体的に力も抜ける


「じゃあ……ね……高杉は、しっかり……生きるんだよ……」

「ッ!!……ああ……ナマエ……そっちでも元気でな……」

「当たり前……」


最後に私は笑ったのに、視界がボヤけて、頬に熱いものが伝った

そして、高杉に皮肉を言うと、私はスッと力が抜けた

さっきまでうるさかった心臓の音も、気が付くと静かになっていた
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