Short2

□襖一枚分の怒り
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それから、頼りない俺自身の記憶や長谷川さんの証言によって、俺がやったナマエがキレる理由が分かった

俺は、酔った勢いで居酒屋の店員、しかも女店員に俺には似合わないぐらいのキザな台詞を言った様だ

更に、俺を迎えに来たナマエの前でだ、そんな現場を目撃したナマエは黙って俺に近付き、まだ食べかけだった熱々おでんの卵を俺に投げつけ、万事屋の方向に走って行った

と言う事がナマエがキレた晩にあったようだ


「……ナマエ、悪かったって……」

「……」

「なぁ、聞こてえんだろ?」

「……うるさい」

「へへっ……ようやく返事しやがった」

「……この変態、うるさいって言われて喜ぶな」

「はいはい、俺は変態ですよ、でも、そんな変態の彼女のナマエはどうなんですかァ?」

「坂田銀時と言う変態をいいように扱うスタンド使い」

「なにそれ!?俺はお前のスタンドかよ!?」

「そうだー、分かったらその薄汚い口を閉じろ、このマヌケがァ」

「……やっぱお前にジャンプ読ませるんじゃなかった……」


そんな事を言い合いしながら俺達は襖を一枚挟んで座っていた

見えないが、なんとなくナマエがそこにいる気がする……ナマエの体温を襖を通して感じる……

そこまで思って俺は苦笑した、とことんナマエに惚れてるな……と、でも、一瞬その考えを疑った

こんな事になったのは他でもない、酔った勢いとは言え、俺がナマエ以外の女を口説いたからだ

今は喧嘩中と、考えるとなんだか悲しい気持になる


「……ナマエ、どうしたら許してくれる?」

「……銀時がナマエに許されるまで、後15000の経験値が必要だ、トル●コは500の経験値、ク●フトは1000の経験値、アリ●ナは20の経験値だ」

「なに!?なんなのお前!!さっきか、吹っかけるネタが古い!!」

「ドラクエは世代を超えても伝わる神ゲーだ、だから大丈夫」

「大丈夫じゃねぇんだよ!!4とか古すぎ!!せめて8とかにしてくれ!!」

「……」

「……なあ、本当に15000も経験値貯めないとダメ?」

「……神の言うことは絶対だ」

「結局ナマエは神父なのな……」


俺の本気の質問をドラクエネタで返してきたナマエとまた少し言い合いをして、話を元に戻す


「……なあ、いつもはそんなにツンケンしてるくせに、どうして女を口説いただけでこうも怒ってるんだ?」


そう言いながら俺は目を瞑り、ナマエに意識を集中させた、するとナマエは


「……銀時に……口説かれた女の人に……嫉妬した……」


と、ゆっくりとだが"嫉妬"とはっきり言った、そんなナマエの言葉に内心嬉しくなるのを感じて


「嬉しい事言ってくれるな……なあ、どうしたら許してくれる?銀さん、ナマエが居ないとダメみたい……いつもの調子が出ないんだよ」


と、少し自嘲的な笑みを浮かべながらナマエに言うと、ナマエは


「もう少し反省したらね」


と、心なしか嬉しそうに言ってきた

それから俺達は襖を一枚挟んで会話を続けた、これからは冗談でもあまり言わないで欲しいとか、言わないからその分一緒に居させてとか……

そんな会話をしていると、たまに嫉妬させるのも悪くないと思ってしまうが、口に出したら怒られるので心の奥底にしまっておく
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