Short2

□キオク
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(ギャリー視点)


イヴの命を救うため、アタシのバラをメアリーに渡した

だって、あの子はまだ子供……子供を守るのは大人の役目なんだもの

ジクジクと痛む身体を引き摺って歩くのは辛い、気が付いたらアタシは壁に凭れていた


「ギャリー?」

「ギャリー……大丈夫?」


イヴとナマエがアタシの異変に気が付き、名前を呼んでいた、ナマエは状況を薄々感じているのか悲しそうな顔をしていた

そんな二人にアタシは心配させないために


「だ……大丈夫よ、ちょっと具合が悪いだけ……」


と、言い、心臓を押さえる、ドクドクと激しく動く心臓は動く度に弱まってる気がする

そろそろアタシはダメかもしれない……

そう思うと、頭より身体が先に動いた、アタシはイヴとナマエを抱き寄せると


「ありがとう……最期まで一緒にいてくれて……楽しかったわ……」


と、言ってしまった、すると微かに震える手がアタシを抱き返してきた


「ギャリー……イヴとマカロン食べるんじゃないの?約束破っちゃダメだよ……」


そう涙声で言ってきたのはナマエだ、掠れていく視界で見えたのは静かに涙を流すイヴと、見た事も無い程涙を流しているナマエだった


「嫌だよ……ギャリー……ギャリー……!!」


アタシの名前を何度も呼ぶイヴ、涙を流し続ける二人にアタシは笑いながら


「ごめんなさいね……」


と、言った、その瞬間今までドクドクと激しく動いていた心臓が動きを弱めていった

力も入らないアタシは二人に完全に凭れかかった


(ナマエ視点)


ギャリーが事切れた事はなんとなく分かった

まるで生にしがみつく様に私達を抱き寄せていたギャリーは力が抜けていたからだ

ゆっくりとギャリーを壁に凭れさせると、まるで眠っているようだった


「ギャリー?ねぇ……ギャリー……!!」


イヴがギャリーの体を揺すりながら名前を呼ぶがギャリーは答えてくれない

私はそんなイヴの行動を止めることも、何もできなかった

ただ、静かに涙を流し、様子を見ている事しかできなかった


「ギャリー」


私が震えながらようやくギャリーの名前を呼べたのは美術館を出てからだった

イヴとすれ違ったが私の事は分からなかったようだ

ギャリーは"忘れられた肖像"と言うタイトルの作品になっていた


「ギャリー……」


ギャリーと分かったのはいい、でもこんどは記憶がまるで、インクが滲むように薄れていくのを感じた

忘れたくない、せめて私だけは貴方の事を覚えていたい

そう思っても記憶はどんどん無くなって行く


「ギャリー……!!」


三度目の名前を呼んだ瞬間、完全に何かが無くなった気がした


「……?忘れ物でもしたかな」


何かを忘れてしまった気がして、鞄の中を探ったが来た時と変わらないので気のせいだと理解した


「うーん……あ、お土産買わないと」


考えたら友達にお土産を買ってなかった事に気が付いた

うっかりしていた……買わないと怒るんだった……

少し欲深い友達の顔を思い出し、苦笑しながら私は美術館を出た


「ナマエ……さようなら」

「え?」


美術館の方から私の名前を呼ぶような声が聞こえたが、振り向いても誰もいなかった

気のせいかな?今日はやたら勘違いが多いな……

そう思いながら私は美術館とは逆の方向を歩いてお土産を買いに向かった
 

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