Short2

□もしもシリーズ
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もしもるろうに剣心の世界に行ったら(銀魂)


(ナマエ視点)


昼ご飯を食べ終わり仕事を再開しようと部屋に向かう途中、何故か急に眠気が襲ってきた

思わずアクビをしながら廊下を歩くが、どうにも眠気は覚めそうにない、どうしようかと悩んでいると途中柱を見つけ、少しだけならと思い、柱に凭れて瞼を閉じた

すると驚く程の早さで私の意識は無くなり、深い睡眠に入っていった


(薫視点)


「ふぁ……やっぱり朝からの練習は疲れるわねぇ」

「おい薫、あれぐらいで疲れるなんて体力ねぇなお前」

「なによ」

「まぁまぁ、薫殿も弥彦も抑えて抑えて……」


早朝の剣術練習も終えて弥彦と剣心と道場に帰る、途中弥彦と言い合っていると剣心に止められた

それでもまだ茶々を入れてくる弥彦と睨み合いながら歩き、道場の門の前に着くと門に凭れている何かを見つけた


「え、なぁに……アレ?」

「人……か?」

「……薫殿、弥彦……拙者の後ろに隠れるでござる」


目を細めながら眺めているとどうやら人のようで、剣心が腰に差している逆刃刀を構えながら後ろに隠れろと言ってきた

剣心に言われた通り隠れるとゆっくりと剣心は持たれている人に近付いた

その人は見た事がない黒い服を着て、この明治には似合わない刀を抱えるように寝ていた

剣心はその人が本当に寝ているのかを確認してから私の方を向いて少し難しい顔をしながら


「……薫殿……どうするでござるか?道場に運ぶでござるか?」


と聞いてきた見知らぬ人を家に入れるなんてあまりしたくはないけれど、まだ少し冷える時期、起きるまでは入れてもいいだろう

そう思い私は剣心にその人を家に入れるように言った


「剣心、俺も運ぶの手伝うぜ」

「弥彦…頼む」


私の言葉を聞いてから、剣心と弥彦は寝ている人をなるべく起こさぬようにゆっくりと道場に運んだ

空いていた一室に布団を敷いてその人を寝かせた、静かに寝ているその人の髪は朝よく見る霧のように真っ白な色をしていて、どこか浮世離れした雰囲気がした


「ねぇ剣心、この人なんだか変じゃない?着てる服とか……」

「確かにそうでござるな……」


思わずそう剣心に聞くとどうやら剣心もそう思っていたようだ、起きる様子がない人を見ていると部屋の襖が開いた


「よぉ剣心、嬢ちゃん」

「あ、左之助」

「左之……」


左之助が道場に来たようで少し面白そうに寝ている人を襖に凭れながら見下ろしていた、弥彦が隣いるのでこの人の事を聞いているのだろう

左之助は少し眉を寄せながら部屋に入って、寝ている人のそばに座った


「剣心、どう思う?コイツの事」

「……なにか変な感じがするのは確かでござる」


左之助は剣心に寝ている人の事について聞き始めた、どうやら二人もなにか違和感を感じているようで、私達はモヤモヤしたままとりあえず刀を預かって部屋を後にした


(ナマエ視点)


目が覚めると見知らぬ天井と見知らぬ部屋が広がっていた、置かれている物や雰囲気からして屯所内のどこかと言う訳でもないようだ


「ん?……あれ?どこ、ここ……なに、ここ……やだここォォォ!!」


思わずそう叫ぶのも無理はないだろう、なにせ柱に凭れて寝ていたのに覚めたら部屋で布団の中に入っていたのだ

隊士達が運んでくれたとは思えない、第一知らない部屋なのだ、あまりに驚いてパニックを起こしてしまう


「……刀……」


ふと、自分が寝る前に持っていた刀が無い事に気が付いた、その直後サーッと血の気が引く感覚と冷や汗をかいてしまう

いよいよ異常な事態だと言う事が分かり、布団から飛び上がり周りを警戒していると、襖の向こうから人の気配がした

天人かと構えたが話し声のトーンから考えると人間のようだ、仕方が無いがこの人達から聞く事にする、襖の横に身を置いて息を潜めながら向こうの会話を聞く


「しかし危険……」

「大丈夫……覚ましてないし」


やはり人間の話し声が薄ら聞こえる、どうやら男と女が一人のようだ、男の方は声が高めだったが話し方から聞いておそらく男だ

会話を聞くあたり女の方がこちらに入ってくるようだ、女なら安易に捕まえられるだろう、そう思った時襖が開いた

その瞬間に女の腕を掴み引っ張る、そして自分の身体と相手の背中をくっつける、いわばコ●ンなどの犯人がよくやる"コイツがどうなってもいいのか!?"の構えだ


「えっ!?ちょっ……」

「薫殿!!」

「止まれッ!!」


赤い髪の男が女を助けようと私の方に向かおうと動いたが声を上げてその動きを止める、女は驚いているのか少し息が荒い

男の目を見ながらゆっくりと脅すように女の首に手を添える、殺る気はないがこうしていた方が少なからず有利だ


「少し、質問に答えてもらおうか……」


男に向かって普段出す機会が少ない低めの声でそう言うと少し困ったように眉を寄せた


「……薫殿には手は出すな……」

「剣心……」

「分かってるって……まぁ、返答次第では……だけど」


男が女の名前を言いながら手を出すなと言ってきた、それに女は男の名前を静かに呼んで身を固めた、どうやら男と思わしき人物は剣心と言うらしく、女は薫と言うらしい

傍から見たら悪者だがこれでも私は一応真選組だ、善い人だったらあとで真選組饅頭でも渡して詫びを入れよう、そう思いながら私は本題に入る事にした


「私の刀はどうした」

「念の為、拙者が持っているでござる、だが生憎刀は別の部屋にござる……」

「……チッ……」


刀が今この場に無い事を知って思わず舌打ちをしてしまう、刀が無いと少し不安なのだ一応侍の魂なのだから

とりあえず無いものは仕方ないので刀は諦めて、ここがどこなのか聞く事にした


「ならもう一つ、どこの手の者だ?」

「それは!!お主がこの神谷道場の門の前に居た故、介抱をしようと……」


どこの回し者なのか聞いたがなにか予想外な返事が返ってきた、思わず聞き返そうとした時


「剣心、何騒いでんだ?」

「まさかあの野郎が目ぇ覚ましたか?」


私が口を開く前に子供と大人の男の声が廊下から聞こえた、思わず目を向けるとそこには長身の男と少し幼い男の子が立っていた


「左之!!弥彦!!」

「あ?」

「剣心……コイツは……」


剣心が慌てたように名前を呼ぶと左之と呼ばれていた長身の男が私を睨みつけた、どうやら大人は左之、子供は弥彦と言うらしい

それよりも、大丈夫だろうかこの人数……剣心とか言う奴はかなりのやり手みたいだし、子供と女は平気だが男二人、しかも刀無し……どうやって逃げよう

新しい人の登場に内心焦りながらも顔色を変えないようにする、逆にコイツらにも質問をする事にした


「丁度いいな、お前らにも答えてもらおうか?」

「だから、先程も言った通り!!……」

「オイ、テメェ…嬢ちゃんを離せ話しはそれからだ」

「人が助けてやったのにそれはねぇんじゃねぇのかよ!!」


私が話を聞こうとした時、少し慌てたように剣心が何かを言おうとしたが弥彦の言葉に私は思わず目を見開いた


「ちょっと待て……助けた……?」


弥彦は確かに"助けた"と言った、思っても見なかった単語に私は焦った、助けたとは一体何の事だろうかと考えていると剣心が少し控え目に口を開いた


「お主が門の前に居た故に運んだのでござる」


私がここの門の前に居たと言った剣心の言葉に私は思わず驚いてしまい叫んだ


「馬鹿言うな!!私は屯所に居たはず……なんで門なんかに……」


思っても見なかった事実に私はひたすら考えるが、どうしても"寝相"と言う答えしか思いつかない

そんな考え事をしていると自然に隙は生まれてしまうもので、それを好機と見たのか弥彦の声が聞こえた


「!!薫、隙が出来た!!」

「ソイツをぶっ飛ばせ!!」


弥彦と左之が薫に向かってそう叫んだ、この声に思わず腕を掴んでいる力を強めようとする、だが薫は私の腹に肘鉄を食らわせようと腕を引いた


「ッ!!危なッ!!」


慌てて避けると思わず手の力を緩めてしまい薫は自力で私の拘束を解き、前に倒れた、薫が抜けたのを確認して左之と剣心が私に向かってきた


「おらァァ!!」

「はァァ!!」

「ッ……」


左之とか言う奴が拳を振り上げ、剣心とか言う奴が刀を抜いてきた


「刀が!!無いとやっぱ無理ッ!!……」


そう言いながら左之の拳を避けて、剣心の刀を畳返しで防ぎ、後方に飛び間合いを取った

その一連の動きを見て弥彦が驚いたような声を上げた


「左之助と剣心の攻撃を避けた……!?」

「テメェ……」

「落ち着くでござる左之…とりあえず薫殿が無事だったのだから」


弥彦が攻撃を避けた事に驚いていたが剣心は冷静で私に向かおうとする左之を止めていた、それよりもどうやら左之と言う奴は左之助と言うのが本名のようだ

剣心と左之助か……なんだが時代を感じる気がするが多分場所はさほど変わらないだろう

だがどうにも奇妙で、真選組の隊服を着ているのにさっきの攻撃を避けた事に驚いている、それは明らかにおかしいだろうニュースなどでもやってるので真選組と言うのは分かるはずだ

少し疑問に思いながらも私は警戒を解かずにそのまま質問をする事にした


「アンタらまさか、真選組が目的か…?門の前に居たなんて事も嘘か?」


そう言うと四人はポカンとしながら私を見てきた


「「「「……新撰組?」」」」


口を揃えてそう言ってから困ったように顔を見合わせた、そんな中剣心が若干汗をかきながら


「新撰組は…もう無いでござるよ?」


と言ってきた、それに便乗するように残りの三人が口を開く


「お前、寝ぼけてんじゃねぇの?」

「新撰組だなんて…そっちこそ嘘じゃない」

「ついていい嘘と悪い嘘があるぜ」


真選組が無いと言ってくる四人に私はただひたすら混乱するだけだった


「は?……真選組が無いだと?……アンタら嘘も大概にしろ!!真選組が無くなるなんて、幕府が潰れるようなものだぞ!?」


流石に怒りながらそう言うが四人はさも当然のような顔をしている、なにか変な違和感を感じるが一体ここはどのなのだろう

あまりに混乱しすぎて頭が痛くなってきた頃、四人はまた私に向かって口を揃えて


「無くなったのは事実でござる」

「アンタ……いい加減にしろよ!!」

「お前……そこまでいうなら証拠見せやがれ」


と真選組が無い事を当然のように言ってきた、証拠を見せろと言われてももう見せているようなものではないのか

そう思いながら私は自分の隊服を軽く引っ張り、四人に向かって言った


「見れば分かるだろう…?この隊服……」

「……馬鹿言うなよ、新撰組の隊服はそんな色じゃねぇし、見た事ねぇよ」

「……は?……」


私の言葉は最後まで言えず左之助の声にかき消された、隊服も知らない上に色まで違うと言われてしまう始末

左之助の言葉に唖然としていると、周りの三人も同じ意見のようで頷いているのが見えた

動揺しながらも私はそのまま胸ポケットにある手帳を差し出しながら声を上げた


「じゃ…じゃあ、これは見た事あるだろ?真選組の手帳!!」


幕府のマーク入りの手帳ならどんなやつでも幕府の者と分かるだろうと思い見せたが四人は納得していないような顔をしているままだ


「見た事無いでござるよ?」

「お前……本当嘘も大概にしろ」

「呆れてくるぜ」

「ちょっと……ねぇ……」


遂には呆れられ私はただ立ち尽くすのみだった、まさか幕府のマークすら知らないなんてありえない

そう思いながらも弱々しく幕府のマークの事を話す事にした


「幕府の印もあるだろ……?江戸幕府の……」

「江戸?」


江戸幕府の事を言うと弥彦が私の言葉を聞き返してきた、江戸幕府になにか問題でもあるのだろうか、そう思っていると剣心が


「江戸幕府なら、滅んだでござるよ?」


と少し頬を掻きながら衝撃的な言葉をサラリと口にした、その言葉に私は思わず声が引き攣ってしまった


「江戸幕府が……滅んだ?……じゃあ天人は!?ターミナルはどうなった!?」


引き攣って上手く出せない声を必死に絞り出し、私は天人とターミナルについて聞こうとしたが四人は少し困ったような顔をした


「あまんと?たーみなる?……それは分からないけど……ここは明治時代よ?」


首を捻りながら薫はそう言ってきた、自分の呼吸が荒くなるのを感じた、江戸幕府が滅び、天人もターミナルもない明治時代……?

フラフラとした足取りで外に降りて空を見上げた、すると私の視界にはかつて私達が失った、宇宙船も何も無い……真っ青な空が広がっていた


「……おい、剣心……」

「弥彦?なんでござるか?」

「これ、字違くねぇか?」


久しぶりに見た真っ青な空に感動していると、弥彦と剣心の会話が聞こえた


「新撰組って……新しいにてへんの撰だろ?」

「そうでござるな」

「え?」


弥彦の言葉に私は衝撃を受けた、新しいにてへん、つまりは真選組ではなく"新撰組"と書くらしい

そんなはずはない、真選組は真選組と書くのは局長や副長が決めたのだ


「これ、真に選択の選だぞ?」

「え?じゃあ、この人が言う新撰組って……別の新撰組?」

「……え……えぇ……?」


薫のトドメの一撃の言葉を聞いて、私は理解した、ここは江戸時代じゃない……いや、私のいた世界じゃないとそう理解した


「神様ァァ!!私が何かしましたかァァァ!?」


宇宙船も何も無い真っ青な空に向かって私は思わず叫んだ、私の声は周りに響いてそのまま消えていった
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