Short2
□もしもシリーズ
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もしも吸血鬼だったら(銀魂)
「あー……腹減った」
ある日の昼下がり、真選組屯所内で私の声が響いた
私はある病気にかかってしまい吸血鬼の様な生活をしている、いつもは副長が寝ている時や銀時から血を貰っているのだが
「だめだ…我慢できん…」
あまりにも腹が減りすぎて死にそうなので私は獲物を探す事にした
銀時は仕事が入ったって事で居ないって聞いたが他に獲物はいるのだろうか
なんて考えながら私は屯所中を歩き回った
「ナマエさん?どうしたんですかそんな血の気が無い顔して……貧血ですか?」
「……山崎…」
「はい?」
私の顔色を心配してか山崎が話し掛けてきた、だが私はどうしても今の山崎は獲物でしかない
とうとう我慢しきれず私は山崎にかぶりついた
「ギャァァァァ!?」
「むぐむぐ…」
あぁおいしい……この一杯で私は生き返る……
口いっぱいに広がる血の味を堪能しながらそう思う、つくづく吸血鬼に成り果ててしまったようだ
そう思いながらも口は止まらず、私は山崎の腕に食い付き血をチューチューと吸っていた
「ちょ、ナマエさん…なにしてんですか…」
「おやつ…」
「エエエエ!?」
山崎は動揺している様子だったが仕方ないだろう、こいつは私が吸血鬼になった事を知らないのだから
なんて言い訳しようか、なんて考えながらも山崎の血を堪能する、微妙にドロドロとしているのはきっと山崎が偏った食生活をしているからだろう
偶にはあんぱんだけでなく他の物を食べて張り込みをすればいいのに……
なんて考えていると山崎が騒いだせいか沖田がこちらに向かって歩いてきた
「何やってんですかいナマエさん?新しいプレイですかい?」
「違う」
「沖田隊長!!助けてください!!急にナマエさんが!!」
「ふーん……ナマエさんまた発作ですかい?」
「ああ」
沖田は棒読みで私に質問をしてきた、ちなみに沖田は私の病気の事を知っているので話が早い、一応発作と言う事になっているが理解者なのには変わりない
「ナマエさん、俺のだったらあげやしょうか?」
「マジか!!」
「ただし、今日一日俺の言う事を聞いたらでさぁ」
「……」
沖田の発言に思わず喜んで山崎の腕から離れたが次の発言に私は静かに沖田から距離を置いた
明らかに罠なのは分かる、この提案に乗ったが最後、私は生きてはないだろう
「どこ行くんですかい?」
「……万事屋」
「てか、これ血が止まんないんですけど……」
ゆっくりと二人から離れて私は屯所の門をくぐった、後ろから沖田の声がして振り向きながら答えてからまた万事屋に向かって歩き出した
山崎が何か言ったが私の耳には届かないな、断じて届かない、貧血気味だし
なんて思いながら万事屋に一直線に向かって行く、この際だ居ても居なくてもどうでもいい、待ち伏せをしてまでも私は銀時の血を貰う事にする
「銀時居るかァ?」
「あぁ?」
万事屋に着いて銀時の名前を呼びながら玄関を開けるとすぐさま銀時の声が聞こえた
仕事の件はどうなったのかと一瞬困惑したが、朝からの仕事ならこれぐらいの時間に戻ってもおかしくないと思った
「どうした?ナマエ」
「あ……あぁ、マスターいつものくれ」
「……」
いつも血を貰う時に言う言葉を言うと銀時は何も言わずに渋々だが腕を出してくれた
「やったね!!」
「早く終わらせてくれよ、最近朝が弱くなったんだよナマエのせいだぞ?」
「わかってるって、悪い悪い」
銀時の愚痴を右から左へ聞き流し、私は銀時の腕に歯を立てた、一瞬銀時が唸ったような声を上げたが気にならない
血が口いっぱいに広がると同時にほのかに甘味が広がってきた、どうやらまた甘い物を食べたようだ
だがこれも慣れで私は何も言わずに新八と神楽が帰ってくるまで、銀時の血を吸い続けた
あぁ、もし病気にかからなかったらこんな腹が減る事もなかったのに……吸血鬼は辛い