Short2

□関係なんて
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「そう言えばナマエちゃんは恋してないのかい?」


急に何を言い出すのかと思えば……慶次さんはいつもこういう事を言う……

そう少し呆れながら、お茶を啜り


「いる訳無いじゃないですか、今は戦う事しかできないんですから」


と、言った、すると慶次さんは少し悲しい顔をして


「そっか……」


と、小さく呟いた

……ごめんね、慶次さん、私本当はいるんだよ……大切な…大好きな人が……

そう心の中で慶次さんに謝りながら片倉様のことを思い出す

少しの間、沈黙が続いたが慶次さんのある衝撃的発言で沈黙は壊された


「じゃあさ、ナマエちゃん俺に恋してみなよ」


その一言を聞いて私は目を見開きながら慶次さんを見つめた


「……頭大丈夫ですか?」

「ハハッ!!酷いなァ……」


慶次さんにツッコミを入れると、お茶を啜りながら慶次さんはそう言った

そして、お茶を一気飲みすると、勢い良く湯呑みを置き


「一回さ、恋したら分かるよ、口に出すだけでも違うって」


と、ドヤ顔で言ってきた


「い……いや私は別に……」

「いいからいいから」


好きでもない相手にそんな事は言えず、引いていても慶次さんは距離を縮めてくる


「いいから、言ってみなって」


そう言われ、慶次さんは、はいと言うまで言ってくるつもりだと確信した

そして、私は小さく溜め息をつきながら湯呑みを置いて


「……慶次さん…………好きです」


と、小さく呟いた

もちろん、慶次さんは好きでもなんでもない、頭の中では片倉様に言ったと思い言葉を発した

すると慶次さんはニコニコしながらどうだい?と聞いてくる、それに答えようとした時


「前田慶次、いつまでナマエと話してやがる、いい加減出ていけ」


と、低い声色が聞こえ、襖が開いた

そこには眉間にシワをかなり寄せた片倉様がいた


「おっと!!竜の右眼に言われちゃ帰るしかないな……じゃあなナマエちゃん」


慌てた様子で慶次さんはそう言い、刀を担いで出て行った

残されたのは眉間にシワをかなり寄せた片倉様と私……


「あっ……すいません片倉様……慶次さんにどうしても居てくれって言われてしまって……」


慌てて謝ると、片倉様は部屋に入ってきて後ろ手で襖を閉めた


「……いや、いい……」


そう言う片倉様はなんだか少しだけ悲しい目をした


「……片倉様……?」


私が名前を小さく呟くと、片倉様は一度目を閉じてもう一度開き


「ナマエ、一つ聞いてもいいか?」


と、聞いてきた


「え?別にいいですけど……?」


なぜ急にそんなことを言うのか分からなかったがそう言った

すると、片倉様は真剣な目で私を見ながら手を掴んだ

何がなんだか分からず、ただ慌てていると、そんな私を無視して片倉様は私の目を見て


「お前は……前田慶次のことが……その……好きなのか……?」


と、言ってきた


「は……え?」


全く分からない事を言った片倉様を見ながら気の抜けた声を出してしまった


「ハッキリしやがれ……!!」


そんな私を無視して片倉様は今度は肩を掴み言ってきた

なぜそんなことを聞くのか分からなかったが、取りあえず答える事にした


「えっと……別に慶次さんは別に……」


そう言うと片倉様は眉間のシワを少しだけ緩めて小さくそうか、と言ってきた


「あ……もしかして……聞きましたか!?さっきの!!」


ようやく理解できて、片倉様に聞くと、片倉様は私からゆっくりと離れて、小さく頷いた

さ……最悪だ……!!!!慶次さんめ!!紛らわしい事させるから片倉様が!!片倉様が怒ってしまったじゃないか……!!そりゃそうだ!!敵同士なんだから!!

そう心の中で思いながら焦りまくる


「か……片倉様!!これは別に…慶次さんに無理矢理言われたというか……強制的と言うか……!!」


誤解を解くため、そう言うと片倉様は


「……ナマエ……俺がもしお前を好きだって言ったら……お前はどうする……」


と、今日二度目の衝撃的発言をした


「………え……ええええ!?」


思わずそう叫んでしまう、だが片倉様は少し頬を赤く染めているだけだ

どうしようか……このまま本音を言ってしまっていいのか……でも……でも……片倉様はただ聞いてるだけかもしれない……

そう思い、私は思わず俯いてしまった、そしてそのまま


「片倉様…私と貴方様は結ばれる筈のない関係なので……そのような質問は駄目ですよ……」


と、言った

そんな私の言葉を聞いて片倉様は私の腕を掴んだ

怒られてしまうのかな……?片倉様怒ると怖いんだよね……

そう思っていると、片倉様は掴んだ腕を引っ張り、私を抱きしめた


「ちょっ……何を……!!」

「ナマエ……身分が違くてもいい……それでも俺は……俺は……」


片倉様はそのまま黙ってしまった、私は片倉様の体温を感じながら片倉様は本気なのだと理解した

たとえ、結ばれる筈のない関係でもいいと、片倉様は言ってくれた、その言葉はだけで私は嬉しかった

そして、私は片倉様の背中に腕を回しながら


「……せっかく……隠し通そうと思ってたのに……」


と、呟いた

それを聞いて片倉様はより一層強く私を抱きしめた

少し苦しかったが、その苦しさも嬉しいと思った


「……ナマエ……好きだ……」

「……私もですよ……片倉様」


私達はそう言い合い、少しの間抱き合っていた

離れたのは政宗様が私達のいる部屋に繋がっている廊下を歩く音が聞こえてからだった

結ばれる筈のない関係なのに、それでもいいと私は思った

好きなのには変わりないから……
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