白銀花が咲く夢を見る

□第八訓
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逃げ惑う人達に押されながらも将軍の場所へ向かおうとした私だが、途中会いたくもない人物に出くわしていた

こちらも向こうも驚いている、出会う事は想定内だったがまさかこんなにも早い再会だなんて思っていなかった

花火はいつの間にか止まっていたが人がいなくなった通路は提灯の光を沢山浴びて以前より明るくなっており、簡単にお互いの顔が確認できた


「高……杉……?」

「花無為……か……?その服は……なんだよ……」


久しぶりに聞く高杉の声は記憶にある声とは少し違った、今の高杉の声は以前より少し低いような気がする

目も昔より鋭くなっているような雰囲気がある、銀時は以前より劣化している気がしたが高杉は嫌な意味で成長している

包帯を巻いている左目はあの忌々しい出来事での傷だろう、残っている右目は真っ直ぐと私を捉えているがなんとなく別の物を見ているようにも見える


「高杉……お前……」

「……その服は一体なんだと言っているんだぜ……真選組、幕府の犬に成り下がっちまったか?」

「……そうだ、私は今は真選組だ」

「花無為が生きている事はなんとなく分かっていた、だが真選組についているのは腹が立つって物だ」


高杉はゆっくりとした口調だが確かに怒っている言葉使いだ、思わず足がすくんでしまうがなんとか刀に手を置く事が出来た


「クククッ……花無為ィ、俺を斬るつもりか?」

「……真選組になった時からその覚悟はしている」

「忘れたのか?アイツらの事を、死んで逝っちまった仲間の事を」

「忘れるわけないだろう!!……今でも時々夢に出てくるよ……」


高杉の言葉を私は叫んで遮り勢いに任せて刀を抜いた、そんな私の行動に高杉は少しだけ目を細めた

高杉はまだ刀を抜こうとはしていない、ただじっと私を睨み両手を着流しの中に入れているだけだ


「刀を抜け高杉……お前はもう私の敵なんだよ」

「クククッ斬れんのかぁ?テメェのその折れた牙で」

「私に牙なんてないけどな」

「比喩だ、相変わらず馬鹿だな」


高杉とそんなくだらない言い合いをする、こうしているとまるで今が敵同士なんて嘘みたいだ

まるで昔に戻った様な錯覚が起きてしまうが、今は確かに高杉は敵で斬らなくてはいけない以前なら迷っていただろう剣も今は覚悟して振るえる

高杉が一向に刀を構えないのは気に食わないが、今はいち早く局長達の元へ行く事が重要なので私は刀を握り直した

私が斬りにかかる事が分かったのか、高杉は着流しの中に入れていた手をゆっくりと外に出した

だがまだ刀には手を触れようとはしない、ヘラヘラと嫌な笑みをこちらに向けているだけだ


「……高杉、馬鹿にしているのか?」

「そんな事はしねェよ、ただある奴に刀ダメにされてな……多分次振ったら折れちまう」

「……それは好都合だ……」


高杉の言葉に私は静かに笑みを浮かべた、なら高杉は二回の攻撃は出来ない事になり圧倒的に有利に立てる

ただ、気を付けなければいけないのは折れた刃、高杉なら折れた刃だけでも斬りかかってくるだろう、中途半端に折れたら間合いが取りにくくなる

だがとりあえず今は高杉の武器破壊が第一目標だ、そう考えて私は高杉に斬りかかった

硬い方の峰を高杉の刀向けて振るうと高杉は刃をこちらに向けて斬りかかった、金属音が響いた瞬間私の刀が高杉の刀をへし折った感触が伝わってきた
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