白銀花が咲く夢を見る

□第六訓
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そろそろ子供は寝る時間になってくる頃、私は押し入れに入っていく神楽に挨拶をして帰る事にした

新八君に挨拶をすると晩ご飯を手伝ってくれたお礼と名前の呼び方を呼び捨てでいいと言ってくれた、確かに何度も新八君と呼ぶのは結構大変だったので喜んで呼び捨てで呼ぶ事にする

そんなやり取りをして私は玄関に向かって歩いた、見送る新八の視線を感じつつ草履を履いた時


「屯所の前まで送ってくぜ花無為」


と言いながら銀時がブーツを履いた、私が断る前に銀時は早々と勝手に玄関の外に出てしまったので結局送ってもらう事にした

新八にもう一度礼を言ってから玄関を出ると、空はもう暗くなっていて銀時が提灯に火をつけていた、それを私に無言で渡して銀時はまた私より早く階段を降りた


「悪いな銀時」

「まあこれで晩飯の貸し借り無しな」


私も階段を降りて銀時に礼を言うと頭を掻きながらそう言ってきた銀時、別に私は貸しなんて思ってないのに結構律儀な奴だと思いながら屯所に向かって歩いた

しばらくなにも話す事がなく無言で歩いていると、銀時が気まずそうにキョロキョロと周りを眺め始めた

銀時がそんな動きをするのでなんだか私も気まずくなってしまい話す事が出来なくなってしまった

二人でしばらく終始無言で歩いていると銀時が不自然な咳払いをしてから私に声をかけてきた


「な…なあ花無為」

「……なんだ」


話が始まった事により少しだけ気まずかった空気が緩和されたが、まだなんとなく嫌な空気が漂っている気がする

とりあえず銀時の言葉に返事をすると、銀時は私から視線を逸らし提灯を眺めながら口を開いた


「真選組は……どうだ?」

「……まあ楽しいさ、皆面白いしな」

「そうか……」

「お前はどうだ銀時?万事屋は」

「ああ、居心地は悪くねぇな」


銀時の言葉から私達の会話は少しずつ盛り上がっていく、銀時の素直ではない言葉を聞いて思わず昔の事を思い出した

銀時らしい天邪鬼に似た言い方、以前はよくムカムカしたが今となっては慣れてしまって気にならない

私の草履が地面に擦れる音と、銀時のブーツが地面に擦れる音がやたらと聞こえる気がする、それがなんとなく私達の間に緊張感溢れる雰囲気を引き立てる


「銀時、お前は私を恨んでないか?」


前から聞きたくて仕方がなかった事をその時つい口に出してしまった、チラリと銀時を見ると驚いた表情で私を見て足を止めてた銀時

この事は銀時と再会してからずっと思ってた事で私が今一番気にしている事だ、死んだと思わせておいてあの時は立場が逆の真選組にいる私を見て銀時はどう思っているのか……

私は銀時より二、三歩前の方に立ち止まり、銀時が口を開くのを待つ事にした

一瞬、私達の間に強めの風が吹いた、髪の毛がうねり思わず目を瞑った時、銀時の声が聞こえた


「別に恨んでなんかねぇよ」


その言葉を聞いて私は閉じていた目を大きく開けた、そのまま銀時を見ると昼の時も見たあの死んだ魚の目ではない確かに侍の目をした銀時の目が真っ直ぐ私を見ていた

私は思わずフッと息を吐いてもう一回ゆっくりと瞬きをした、次に目を開いた時は銀時は元の死んだ魚の目をしていて少し残念に思えた

しかし、銀時の言葉に少しでも救われたのは確かで、私は息を吐いた時一緒に肩に乗っていた重しが落ちたかのように軽くなった気がした


「……そうか……」


安心した私の口から出たのはその素っ気ない一言で、今度はなんだか銀時に申し訳なくなった

私がそう言うと同時に銀時は止めていた足を動かしたので、私もそれに釣られて歩き出した
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