白銀花が咲く夢を見る

□第四訓
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まるで時間が止まった気がした、それ程までに一秒が長く感じた、どうせなら時が止まっている間に私がすぐにこの部屋から出てしまいたかった

副長は固まってしまった私に心配そうに声をかけて、神楽ともう一人の少年は銀時の名前を心配そうに呼んでいた


「花無為……なのか?俺、幻覚でも見てんのか?」

「……銀時、お前……なんで、なんでここに」


私達以外の三人を置いて私達は二人で話を進める、フラフラとした足取りでこちらに来る銀時と、なんとなく怒られてしまいそうな気がして二、三歩後退る私

きっとなんで真選組にいるのかと怒鳴られてしまうだろう、なにせ銀時は桂の拠点から捕まえられた人物なのだからきっとまだ攘夷活動をしているのだろう

そう思うと何故かとても銀時が怖くて、拒絶されるのが怖くて私は後退りをしたが私の足は四歩目まで動かなかった、ガシリと銀時に腕を掴まれていたからだ

ビクリと密かに肩を揺らした私に銀時は若干俯いていた顔を上げた、銀時は怒っているのでも泣いているのでもなかった

笑っていたのだ、安堵の息を微かに吐いて銀時は安心したように笑っていた、そんな銀時の表情を見て私は今まで感じていた恐怖が嘘のようになくなったのを感じた


「花無為よかった……生きててよかった……」


銀時はゆっくりと私を掴んでいた手を引いて私を数歩近付けた、久しぶりにこんなに近くで銀時を見た気がするが今は少し感動さが薄れてしまう、背後からの副長の視線が突き刺さっているからだ

そんな私を他所に銀時は小さく何度も何度も私の名前を呼ぶ、きっとその分銀時には心配をかけてしまったのだろう


「久しぶりだな……銀時……すまなかったな」

「いや、いい謝るな」

「あの日の事はまた後日詳しく話そう」

「ああ……だが今は、あと少しだけこの嬉しさを噛みしませてくれ」


銀時とそう会話を交わすと銀時はゆっくりと掴んでいた私の手を自分の頬に持っていった、暖かい体温が手に伝わってくるがこれは結構勘違いされるのではと思う

言っておくが私は銀時とは"元同僚"と言う立場だ、会社で元同僚に偶然出会ってこんな事をする人物はいるのだろうか

なんて今の状況とはあまり関係がない事を思いながら私は銀時の頬を軽く抓った、痛いと言いながら私の手を離した銀時に席に戻れと伝えて早くこの場から去りたくて湯呑みを適当に置いた


「じゃあ……私はこれで」


まだ扉の前でポカンと私を見ている副長の横を通って部屋から出ようとすると、銀時が急に私の方まで来て何か名刺のような物を渡してきた

何かと聞こうと思ったが銀時が背中を押して来たのでそれは叶わなかった、部屋から出された後ワンテンポ遅れて副長の慌てるような声が聞こえる中、銀時に渡された名刺のような物を見てみた

文字が書いてあるのを見るとやはり名刺なようで、表には"万事屋 坂田銀時"と書かれた文字と住所が小さく書いてあった、どうやら銀時達は桂の仲間ではないようだ

一人の仲間を斬らなくていい事を知って私は密かに安堵の息を吐いた
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