白銀花が咲く夢を見る

□第二訓
1ページ/2ページ



神楽と出会った日以来見回りがなくて買い出しなどもないので、屯所から出ていない、だがそれ以外にも仕事はある

あくびをしながらいつものようにダルい仕事をしていると、ふと襖の方から人の気配がしたので見てみた、するとそこには局長がなにか言いたげな表情で襖の隙間からこちらを見てた


「なにやってんですか局長、ついにストーカーですか?」


そんな局長に呆れながらそう言うと、局長はガタリと襖を揺らしながら肩をビクつかせた

傍から見ると本当にストーカーだなんて思いながら局長がなんて言うか待っていると


「冗談を言うな!!俺が見守るのはお妙さんだけだ断じてストーカーではない!!」


と局長は襖を勢い良く開けながら手を強く握りそう叫んだ、だが言っている事は全く持って公表できる事ではない


「……転職したくなってきた」


溜め息をつきながらそう言い、副長が言っていた事を思い出す、局長はある女性をストーキングしている、そんな噂が立ったのはつい最近だ

なんでもその女の人をかけた喧嘩にも負けたようだ、どこの馬の骨か知らないがよくもまあ局長との決闘に勝ったものだ

そう思いながら局長を見ていると気まずそうに俯きながら局長がなぜここに来たか話してきた


「……ちょっと俺の部屋に来てくれないか?」

「……いいですけど?」


ここでは話し辛い事なのか局長は私にそう言い廊下に出た、局長は私について来いと言わんばかりに歩き始めている

まさかこの間の見回りの件がバレてしまったのかと一瞬身構える、だがそれなら沖田も一緒の筈だ……だがもしかすると……

嫌な考えばかり浮かんで来て、私は思わず冷や汗をかきながら局長の後を追いかけて廊下を歩いた

局長の部屋に入ると早速局長が話を始めた、これからきっと怒られるのだろうかなんて思ってしまい局長の些細な言葉でも驚いてしまう


「……で、話って言うのはな」

「ッ!!は……はい!!」

「なんで緊張してるんだ……?」


ビクビクしている私をキョトンとしながら見る局長だが気にせずに話を進める事にしたようだ

局長が懐から紙のようなものを出してこちらに渡してきた、疑問に思いながらそれを受け取り見てみる


「これは写真?って……え?」

「この顔に見覚えは?」


写真に写っていた人物を見て私は思わず息を呑んだ、少しだけ中二感をだした包帯を巻いた奴とうざったい長髪の奴がそこには写っている

見覚えはあるのかと聞いてくる局長の言葉に私は返事をする気力はなかった、見覚えもなにもこの二人は私の昔からの仲間だ

黙ってしまった私を見て確信したのか局長は申し訳なさそうに眉毛を下げながら


「……知り合いなんだな?」


と言ってきた、その言葉に頷きながら返事をして写真を渡す、真選組の所に写真があると言う事はつまりこの二人は攘夷志士を辞めていないと言う事だ

私の考えは合っているようで局長はまた私にもう一枚紙を渡してきた、どこかの旅館の見取り図だ


「……実はこの中の一人……桂小太郎の拠点が分かったんだ、その見取り図がそれだ」

「……今だに懲りずに攘夷活動をしている……桂を捕まえると?」


局長にそう聞くとゆっくりと頷いた局長、そんな局長を見て私は小さく溜め息をついてしまう

そんな私を見兼ねてか局長は私から見取り図を受け取りながら


「花無為、無理しなくていいんだ……いくら真選組に入ったからって昔の仲間を斬るなんて」


と少し悲しそうに言ってきた、そんな局長の言葉に驚いたが私はゆっくりと目を瞑り


「大丈夫ですよ……覚悟はしてましたし、それにけじめをつけたいと思っていた所です」


そう言ったすると局長は一瞬目を見開いたがすぐに戻りゆっくりと笑った、優しい局長だきっとこの情報を手に入れてから心配だったのだろう、局長はそのまま笑いながらゆっくりと立ち上がった


「無理はしてくれるなよ、当日トシには事実は隠して伝えておくから花無為は当日捕まった浪士だけ運んでくれ」


局長はそう言い残して部屋を出て行こうとした、どこまでも優しい人だと思いながら私は頭を下げて礼を言った


「ありがとうございます……」


そう言うと局長はまたゆっくりと笑って部屋を出て行った、私はそんな局長の足音を少し聞いた後自分の部屋に戻った

だが部屋に戻っても頭の中はあの事ばかり浮かんでいた、もしヅラと高杉以外にもっさんや銀時がいたら?覚悟はしていたがあの四人を斬る事が私に出来るだろうか

それからずっとそんな事を考えていたら寝てしまったらしく、気付いたら朝になっていた
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ