白銀花が咲く夢を見る

□真選組上京
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医者に絶対安静だと釘を刺されしばらく布団から出る事すら許されなかった生活のお陰か、私の左足はピッタリと骨がくっつき歪みなど後遺症はなく完全に治った

だがまだ少し左足を激しく動かすのはいけないようで敷地内を歩くぐらいなら許された程だ、だがきっと次に医者が来る日には許可が降りるだろう、これでも結構治癒力や回復力には自信がある方だ

さて今日はどこを探検しようかなんて考えながら読んでいた本を閉じる、ちなみにこうして文章を見るのは結構好きな方だが肩が凝るものだ

グルグルと腕を回して凝りを解していると控え目な声と共に襖がゆっくりと開いた、この声と襖越しに見えるシルエットは近藤さんだ


「裟維覇、いるか?」

「どうしました?バナナなら私持ってませんよ」

「いやそうじゃなくて……って何それどう言う事?」


近藤さんが部屋に入ると同時に返事も含めて少々ボケを振る、すると近藤さんはそれを真顔で返してきた中々ノリのいい人だ

しかしそんな雰囲気もすぐに終わり、近藤さんの真剣そうな表情を見てただ遊びに来た訳ではないと言う事がなんとなく分かった

とりあえず座布団を置くと礼を言いながら近藤さんは座ったので私も向かい合う形で座る、私が座ったと同時に近藤さんはゆっくりと口を開いた


「実は……俺達はこれから上京して幕府の下に就こうと思っているんだ」


その言葉を聞いて私は目を見開いて近藤さんを見つめてしまう、"幕府"と確かに近藤さんは言った

国を見捨て私達に凄まじい損害を与え、何もしていない先生を捕えて銀時に殺させた幕府……私はそんな幕府を今だに許せていない、そんな幕府の下に就くだと?

怒りなのか戸惑いなのか膝の上に置いていた手がフルフルと震え出す、しかしその直後昔交わした先生との約束が頭を過ぎった

"人からもらった恩は必ず返す事、そして、それ以上に仲間を助ける事"

昔の記憶なのに今でも鮮明に覚えている先生の言葉、その言葉が私を動かしてくれている気がした


「花無為……?どうかしたか?」

「……近藤さん、話さないといけないと思っていた事があるんです……」


近藤さんが心配そうに私を見てきたのに対して私はそう言って洗いざらい全てを話す決断をした

昔の攘夷戦争に参加していた事、自分の恩師が幕府の下に就いているであろう集団に攫われ殺された事、私がここに落ちてきた本当の理由を

始めこそは驚いていた近藤さんだが終わりに近付くに連れて段々と顔が真剣になっていたのがよく分かった


「……それで、私は今ここにいます」

「……これが本当の花無為の過去……そう言う事か?」


話が終わると近藤さんはゆっくりと私に確認を取ってきた、それに頷くと近藤さんは少し困った様に顎に手を添えた

何を悩んでいるのかと思った時、近藤さんからその悩みの理由を話してくれた


「折角花無為の様な人物に出会えたのに……流石に無理だよな、ここに残るか?」


人付き合いのいい近藤さんの優しい声色は終始私を心配するような事を言って、近藤さんの表情は困った様に眉毛を下げていた

そんな近藤さんの顔に思わず噴き出してしまいそうになるがグッと堪えて


「ッ……いえ、私は近藤さんに着いていきますよ、約束なんです、借りた恩は必ず返すと」


と近藤さんに向かって話した、すると近藤さんは少し疑問に思っているのか首を傾げたが詮索はしない事にしたのかそのまま私に着いて来てくれと頼んでくれた

しかし元攘夷志士が幕府の下に居ていいのかと近藤さんに聞くと、やはりそれは幕府に聞かないといけないようだ、これで駄目だったら私はここに残る事になる

運命の返事は丁度医者が私の足の様態を見に来る日だった、足が完治して動き回ってもいいと言う許可と近藤さん達に着いて行ってもいいと言う許可が降りたのはほとんど同時の事だった
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