白銀花が咲く夢を見る
□攘夷時代
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日本が天人に攻め入られてからしばらく経った、最早幕府は負けを認めているようなもの、そんな状態でも私達は諦めなかった
攘夷戦争、幕府が負けを認めても私達侍はそれを認めなかった、大きな戦に私達四人は参加した
無論私の場合女だと言うのは伏せてある、正直言って体格の差とかで指摘されてもいいと思うのだが今ところ誰一人バレてないし疑問にも思っていない
まあ、そんな事を気にする場合ではないが、ちょっとは気にしてしまうのが本音だ
そんな中今日も戦があり私達は無事生き延びる事ができた、今の拠点に戻り大広間で雑魚寝をする
「花無為、そろそろ風呂入ってもいいんじゃないか?」
ヅラが私にそう耳打ちをした、どうやらほとんどの人が入浴を終えたようだ、私はバレるわけにはいかないのでこうして面倒な事をしている、結構大変なのだ
ヅラに小声で礼を言ってから、私は体を起こし浴室へと向かった
周りに人が居ないか確認をしてから服を脱ぎ、大きめの手拭いで体を覆う、いつ天人が来てもいいように刀は離さない
ようやく入浴出来るという事に喜びを感じつつ浴槽へと続く扉に手をかけた時
「おっ花無為!!なんじゃ今からか遅いのォ、ワシはもう済ませたがなんなら背中でも洗って…………?」
と言う聞きなれた声が背後から聞こえた、慌てて振り向くと坂本辰馬……もといもっさんが片手を上げたまま固まっていた
入浴した痕跡は見られるのでどうやら忘れ物でもしたようで、脱衣所まで取りに来たようだ
酷く冷静に判断している場合ではないが、私はもっさんがなぜここに来たのか確認していた
その間にもっさんは上げていた手を下げ、私を頭のてっぺんから爪先まで見る、どうか気がつかないでくれと願う私の気持ちも無駄に終わり、もっさんは目を見開き私に向かって震えながら口を開いた
「おんし……花無為……もしかして……女……」
「フンッ!!」
もっさんが最後まで言う前に私は持っていた刀を勢いよく縦に振る、すると鞘が勢いよく飛びもっさんの鳩尾に命中した
もっさんに心中で謝りながら私は急いで着流しを羽織り帯を締める、このまま記憶が吹っ飛んでくれる事を願ったがもっさんの脳みそは鳩尾にはない、忘れるわけもなくもっさんは鳩尾を押さえたまま私を見上げ
「その反応……本当らしいのォ……」
と言ってきた、どうやら私の行動が仇になってしまったようだが後悔しても遅い
いよいよ私は戦争から離脱かと半ば諦めた時、もっさんは顔は青いがいつもの笑顔を私に向けた
「安心せぇ、誰にも言わん、この戦には花無為みたいな奴が必要じゃ」
「……もっさん……」
もっさんの意外な言葉に私は思わず目を見開いてしまう、そんな私を見てもっさんはニコリと笑いだす
本当に良い仲間を持ったものだ、自分でも絶賛したい……鳩尾に鞘をぶち当てられても私の事を思ってくれる仲間なんて早々いない
もっさんに一言謝ってから礼を言うともっさんは返事をしてからゆっくりと立ち上がった
「しかし花無為が女だとは……全く思わんかったのォ」
「まあね……自分で言うのもなんだけど男らしいもんね……」
「本当じゃ!!アハハハハハ!!」
「……フォロープリーズ」
もっさんの言葉に私は覚えたての外国の言葉を呟いたが誰にも聞かれる事無くもっさんの笑い声でかき消された
後日もっさんにバレた事を三人に話したところ、もっさんは変なところで抜けているので心配されたが多分大丈夫だという結論に達した
その日から四人の秘密は五人の秘密になった、それと同時にもっさんとも前より仲良くなった気がする