白銀花が咲く夢を見る
□幼少期
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私の目と髪色は皆とは違った、それに気が付いたのは自我と言うものがしっかりとしてきた時
鏡で見る自分と周りの皆との違いは一目瞭然で、母親はきっとこんな私が大嫌いだったのだろう、今はそう割り切れるが昔の私は何故母親がこんなにも自分の嫌うのか謎だった
そんな母親を持ちながらも大きくなれたのはきっと記憶にない父親のお陰だろうか、どんな声だったのかもどんな髪色だったのかも全く覚えてないが……
「貴方なんて産むんじゃなかった、近付かないで化け物、私を母なんて呼ばないでよ」
母親は私を見るといつもそう言っていた、子供になんて酷い事を言うのかと思うが私の母親はそう言う人だった
私の目は右目だけ猫のように瞳孔が縦に伸びており、右目だけ別人の瞳の様になっている、髪色は真っ白で祟だとか呪いだとか私を見た人はそう言っていたが今でも私は全く心当たりがない
好きでこんな目と髪色を持って産まれる人がどこにいるだろうか、だが持って産まれてしまった私は理不尽も苦痛も全て受け入れて生きて行かなくてはならないだろう、その覚悟が昔にはなかったが今はしっかりとある
覚悟も持てなかった頃の私がどうやって自分を嫌う母親から逃げ出す事が出来たのか……それはある出来事が始まりだった
私の家に養子がやってきたのだ、今となっては記憶はあやふやだが確か養子は当時の私と同じ位の年齢だった、当然髪色も目も正常……黒い髪色で両眼とも瞳孔が縦に伸びているなんて事はない
初めはなんとも思っていなかった、家に人が増えただけ……そう思っていたがその子は母親に酷く溺愛されていた
「いい子だね」
母親の言葉に嫉妬した、私には一度も言われた事のない言葉をかけられている養子を羨ましく思った
それ以前に、養子と言う物が来たこの家に自分が必要なのかと幼い頭で考えた
いつも物置のような狭い部屋で考える、私は必要なのかこの容姿はどうすればあの子のようになるのかと、答えなんて出るわけでもなかったが当時の私はそんな事を思う程賢くなかった
いつも部屋に潜むようにしている私の事が気になったのか、ある日養子が私の部屋に入ってきた、そして座っている私に向かって無邪気に
「ねぇ、なんで髪の毛白いの?」
と聞いてきた、素朴な質問だったのだろう、私はその問には普通に知らないと答えた、問題はその後の言葉だった
「その目……物語に出てくる化け物みたいだね」
不思議に思っただけかもしれない、前日に母親から聞いていた物語に出てくる怪物の想像に似ていただけかもしれない、今となってはそんな質問した理由はわからないが私がやった事はどんな事をしても変わらない
何故か養子に化け物と言われた瞬間、とてつもない憎悪が私を包んだ、そんな事を言われたくない、何も知らないくせに母親から愛されているお前にそんな事を……そう思ったからかもしれない
私は養子に飛びかかり、馬乗りになりながら養子を殺す勢いで首を締めたのだ、無論子供の私にそんな力はない
「離し……てッ……お母さんッ!!」
私の手をこれ以上近付けまいと腕を押さえながら養子は外にいた母親に助けを求めた、養子の叫び声にいち早く気が付いた母親は私の部屋に入ると目を見開いた
自分の子供が養子を殺そうとしている、こんな状況にあったら全国の母親はどうするのだろう?
自分の子供を叱る、養子を助ける、誰かに助けを求める……沢山選択肢はあるだろう、だが私の母親はその中でも恐らく異常であろう選択をしたのだ
私に薙刀を向けたのだ、もの凄い形相だったのを覚えている、しばらく人の顔が見れない位恐ろしかった
「消えなさい……この家から……この世界からッ!!」
「おかあ……さ……ん」
「消えろォォォォ!!」
母親はそう言っていた、私は放心状態で母親を呼んだが私の声をかき消すように母親がそう叫んだ
目が本気だったと思う、じゃなきゃそのまま家から飛び出さない、だが今となっては家から飛び出して正解だったと思う
その数日後、私は恩人と出会うのだから……今思い出しても幸運だったと思う、私、裟維覇花無為の人生はあの日を堺に変わった事は確かだ