Short(log)
□命短し恋せよ乙女
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時は戦国……
その筈なのに私の生活は充実していた
私の仕事はいつも通り母上の呉服店の手伝い
家計は厳しかった……でも、苦しいと思ったことは一度もなかった
でも、苦しくなった時は……
「…前田さん今日はいるかな」
外に出て前田さんを探す
前田慶次さん……この加賀の領主、前田利家の甥の方
同じ身分ではないのにそんな事は気にせずにいつも軽く接してくれる
背景には桜が似合い、祭りが大好きな彼に特別な感情を持つのはそうそう珍しいものではない
私もその一人だ……
「よっ、ナマエちゃん!!どうしたんだい?こんな所でボーッとして」
「まっ…前田さん!!」
「またそんな堅苦しい呼び方……慶次でいいって何回も言ってるだろ?」
「でも……」
前田さんを探してキョロキョロしていると、後ろから声をかけられた
探していた前田さんだ
前田さんはいつも私に堅苦しい呼び方はやめろと言ってくる、だけど身分が違い過ぎるから……
「ま、いいや、で?何してたんだい?」
「ええっと……ちょっと散歩に……」
何をしているか聞かれ、慌ててそう答えた
前田さんを探していたなんて口が裂けても言えない……
答えると、前田さんは目を細めて疑う様な顔をしたがすぐに戻り
「丁度良かった!!なんなら俺と一緒に散歩しないかい?丁度まつ姉ちゃんに追っかけられてて……誤魔化せそうだしな……大丈夫かい?」
と、衝撃的発言をした
「えっ……あの……ちょっとだけなら……」
謝る事なんて出来ず、そう答えた
「そっか!!じゃあ行こうか?」
「あぁ……はい!!」
前田さんはそう言い、手を出してきた、何の事か分からずに首をひねった時
「あーもう!!ほら!!掴んで!!」
「え!?ちょっ!!」
前田さんはそう言い私の手を強引に掴んで歩き出した
手から伝わる体温は、紛れもない本物で……なんだか嬉しいような気もして顔に熱が集まるのを感じた
それと同時に不安もよぎった
私以外の人にもこうしているのではないか、舞い上がってるのは私だけで前田さんはなんとも思ってないのでは?と
そんな考えも吹き飛ぶぐらい、前田さんの後姿は眩しかった