Short2

□こんにちは、先生
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(銀八視点)


朝起きてから日めくりカレンダーを破き曜日を確認すると今日は水曜日だ、思わず口角が上がる水曜日なら今日は少し早く家を出ようと思い慌てて支度をし始める

いつもより少しだけ寝癖に気を使おうとしたが天パだと寝癖はなかなか直らないので早々に諦めた、その代わりに今日は少し気に入っているネクタイを結ぶ

簡単に天気予報を確認してからスクーターのヘルメットを用意して、テレビを消し家を出た、鍵を閉めてからヘルメットを被りながらスクーターに乗る、エンジンをかけると変わらない音が響きそのまま学校へと向かった

何人かの生徒を横目にスクーターを飛ばす、早く会いたい、水木金曜日と非常勤のナマエ先生に

なんて思っている事を神楽辺りにバレでもしたら一気に噂は広がってしまうだろう、女子高生は恋バナが好きすぎる

学校に着くとすぐにヘルメットを取りスクーターに鍵をかけて職員室へ向かった、職員室にはチラホラと教師が机に向かってパソコンを入力しているのが見える、その中に俺は今日のお目当てナマエ先生を見付けた、途端に口角が上がるのが分かった


「おはよーございます」


ナマエ先生との机は運良く向かいなので理由なく声がかけられる、ちなみに俺から挨拶するのはナマエ先生だけ、他の先生は向こうから声をかけないと挨拶はしないと決めている

ナマエ先生に挨拶をするとチラリとパソコンから目を離し俺の方を向いた、必然的に上目遣いになっているのに気付いているのか気付いていないのか気になるが恐らく後者だろう、そこがナマエ先生の可愛い所でもある


「おはようございます銀八先生」


ニコリと作り笑いではない自然な笑みを浮かべてナマエ先生は俺に挨拶をした、その一言だけで俺は今日一日を過ごすやる気が湧いた気がするので俺はもう重症かもしれない

ナマエ先生の言葉に笑顔で返して椅子に座りパソコンの電源を点けた、前言撤回ナマエ先生の挨拶や笑顔は素敵だけどやはりやる気は起きない途端に帰りたくなってきた

しかし作業をしないと後々後悔するのは自分なので今度の授業のプリントを作ることにした、時々作業をやめて肩を揉んだりしながらも進めていると、ふと向かいのナマエ先生がいない事に気が付いた

校舎にでも行ってしまったのだろうかと思った時、目の前に暖かそうな湯気を漂わせているカップが差し出された、ほのかにコーヒーの香りがするので中身はコーヒーだろう


「朝からお疲れ様です、そろそろ朝礼も始まるので一息ついてはどうですか?」

「ありがとうございます」


コーヒーを差し出したのはやはりナマエ先生だった、ふにゃりと笑った顔でカップを俺に渡すナマエ先生を見てなんとも言えない幸福感を味わう

カップをナマエ先生から受け取り、キリがいいところでデータを上書きしてからコーヒーを飲む事にした、チラリと向かいを見るとナマエ先生は既にコーヒーを飲んでいた

そんなナマエ先生を盗み見ながら俺もコーヒーを飲む、俺が甘党だと覚えていてくれていたようでコーヒーの苦味と共にフワリとした甘さが広がった、いつもなら苦いのは嫌になるが朝一に飲むのはこれくらいが丁度いいだろう

ふぅと思わず溜め息をついてしまった時、ナマエ先生の少し笑った声が聞こえた、見上げるとナマエ先生は口元を軽く手で抑えながら


「良かったです、銀八先生甘党なのでココアにしようか迷ったんですが……甘さは丁度いいみたいですね」


と言ってきた、そんなナマエ先生の言葉を聞いて自分がどれだけ緩んだ顔をしていたのかと思ってしまう、少し恥ずかしくなったが嬉しそうにしているナマエ先生を見るとどうでもよくなった

少しすると校長が入ってきて毎朝恒例の朝礼が開かれた、めんどくさい話を軽く聞き流しつつも重要な話は頭に入れておく

俺には関係の無い話が続く中、チラリと横を盗み見てみるとナマエ先生は几帳面に小さなノートに校長の話をメモしている、女性らしい小さい文字がノートに広がる

ずっと見ていたい気もするその文字を見ているうちにいつの間にか朝礼は終わっていた、終わった後もナマエ先生の文字を眺めているとZ組に関係する事が書いてあり思わずナマエ先生を呼んでしまった


「どうしました?銀八先生」

「えっ……その……実は朝礼の事細かく書き取ってましたよね?」

「はい、そうですけど……」

「校長の声聞き取れなくって、よかったら見せてくれるとありがたいんですけど……」


なんだか少し恥ずかしく思い頭を掻きながらノートにメモしていた朝礼の内容を見せて欲しいと言うとナマエ先生は笑いながらも見せてくれた

ナマエ先生の文字だからかすんなりと頭の中に入ってきた内容を忘れないようにしつつ、ナマエ先生に礼を言ってノートを返した


「そろそろ朝のHR始まっちゃいますよ」

「あ、本当だ……じゃあありがとうございましたナマエ先生」

「はい、また後で」


ナマエ先生の言葉に腕時計を見ると確かに朝のHRの時間が近付いている、少し名残惜しいがナマエ先生に改めて礼を言って職員室を出るために席を立った

ふわりと笑いながら手を振るナマエ先生に癒されながら職員室を出た、グッと伸びをするとパキポキと関節が伸びる音がした

今日も頑張ろうと言う気が自然と湧いてきて、それはきっとナマエ先生のお陰なのだろうと自然に思った
 

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