Short2

□彼のヒーロー
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※男主注意


久しぶりに戻って来た故郷と言うのは以前いた時よりも変わっていて俺は思わず腰を抜かしそうになった、杜王町は最近発展しだしたとは聞いていたがここまで変わってしまうものなのか

以前より短くなった髪をクシャリと掻き上げながら駅を歩き出す、そうすると記憶とは少しシワが増えた親が俺に向かって手を振っていた

親に会うと杜王町に戻ってきたと実感する、昔の俺は結構ヤンチャしていて迷惑や心配をかけてしまった分社会人になって恩返しをしようとしている

少し古めの車種の車に乗り実家へと向かう、荷物を置き終わると親戚が集まるのは夜だから折角だし杜王町を見て回って来てと言われた、その間に物置になってしまった俺の部屋を片付けるつもりなのはなんとなく分かる

咎めるつもりはないので気付いてないフリをして俺は簡単な荷物を持って家を出た、相変わらず家の玄関は開けると軋む

記憶とは違うが道は同じなのでなんとなく歩いているとカフェが見えた、そう言えば駅の乗り換え等でゆっくりできなかったと思い、俺は店内へと入った

カフェラテを注文してボーッと変わってしまった杜王町の景色を眺める、そう言えば俺の昔の友人はどうしているのだろうかとか、事件がある前にはよく遊んでやったあの餓鬼はどうしているのかとか思っていた


「すいませんお客様、店内が混んでいるので相席でも大丈夫ですか?」


店員が近付いたのでようやくカフェラテが来たのかと思っているたがどうやら違うようだ、そう言えば俺が入ってきた頃から混んでいたので相席ぐらいは仕方ないだろうと思い俺は店員に大丈夫と伝えた

ここで女性ならすかさず連絡先を聞きたい所だがどうやらそうではないらしい、俺の向かいの席に座ったのは男性だった、しかも多分俺より若い

残念と思いながらようやく届いたカフェラテを一口飲む、男だけど折角だからなにか会話をしようと思い男性の顔をしっかりと見た時俺はなんだか懐かしい気持ちで溢れた


「お前…………露伴坊か?」


呆気に取られながらも思わずそう呟くと男性は少し驚いたように俺の方を見た、しかしすぐに顔をしかめて


「僕は君の事知らないけどなぁ、どこかで会ったかい?」


と心底信用してないような口調で言ってきた、俺の知ってる露伴坊よりはるかに性格が悪そうだ、まあ昔からそんな生意気な口調だったが

疑うように俺の事を見てくる露伴坊、そんな露伴坊に俺は昔の話を話す事にした、あまり気が引けないし俺自身思い出したくない事だが


「酷いな露伴坊、昔はよく鈴美さんと遊んであげただろ」

「ッ!!!?」


露伴坊の目を見ながらそう言うと明らかに動揺し始めた露伴坊、ガタリと席を立ち上がり俺を驚いた目で見てきた

そんな露伴坊の立てた音に周りの人達はどよめき始めるが、俺は気にせず露伴坊を見続けた

どうやら俺の事は覚えてないが鈴美さんの事は知っているようだ大方親か誰かに聞いたのだろう、動揺した目で俺を見る露伴坊に俺はいつも持ち歩いてる写真を見せた


「覚えてないか?これが露伴坊でこれが俺、リーゼントの所はスルーでな、そしてこれが……鈴美さん」


写真を見せると露伴坊は驚いた様に俺と写真を交互に見始めた、そして小さく溜め息をついてからゆっくりと席に座った


「……残念だが僕は昔の事はほとんど覚えていない……」

「まあ、あんな事があったしな」

「詳しく教えてくれないか?あの日の事」

「…………気が引けるが、話すよ」


露伴坊の頼み事はいつも大体聞いていた俺は渋々だがあの日の事を話し出した

確かあれは俺が中学生の時だった、あの日は本当は俺も鈴美さんの家に行くつもりだったのだ、女の子と子供一人じゃあ心細いからと母親に言われていたから、だが俺が鈴美さんの家に辿り着いた時はもう事件の後だった

庭で息を潜めながら泣いている露伴坊を抱きかかえて警察に駆け込んだ、そして露伴坊を預けて俺は警察と鈴美さんの家に向かった、正直あの時の事は思い出したくない、アーノルドが無惨に首を斬られ鈴美さんの悲惨な姿を見た俺はショックで涙さえ出てこなかった

葬式も行く気がなかった俺がもっと速く鈴美さんの家に着いていれば……そんな罪悪感に駆られてかは分からない

そこまで話すと店員が露伴坊が注文した飲み物を持ってきた、それを目を伏せながら一口飲み露伴坊は髪の毛をクシャリと掻き上げた


「そんな事があったのか」

「ああ、それからすぐ露伴坊は引っ越したからな、覚えている方が珍しい」


そこまで話すとカラリと露伴坊のグラスの氷が鳴った、俺も冷めてきているカフェラテを飲み干した

しばらく葬式ムードが続いたがそれぞれ改めて自己紹介をして最近杜王町で起きた事を聞いていると段々と明るいムードに戻っていった
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