Short2

□さよなら三角
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ヒュオッと言う吹き抜ける音が冷たい風を運んでくる、その直後、私の足と接している床が一気に冷えた

私は次の冷たい風が来る前に早々に部屋に入った


「寒ッ……そろそろ支度時かな」


私の部屋の隅にある七輪に火を付け、両手で足の爪先を温めるようにさする

七輪の熱と摩擦熱で足の冷たさがじんわりとなくなっていく

相変わらず冬になるとこの奥州は寒くなる……

元々寒いのが嫌いで冷え性な私が奥州に居るのがおかしいのかもしれない、しかし、ここには奥州の領主であり、私の幼馴染みの政宗がいる、何故か彼は私を奥州から離れさせないようにするのだ


「やっぱりここにいたかナマエ」

「噂をすればなんとやらってやつ?」

「Ah?」

「こっちの話だよ政宗」


声と共に襖が開き、冷たい風を部屋に入れながら政宗が入ってきた

政宗は後ろ手で襖を閉めながら私の格好を見て眉を吊り上げた


「……寒いか?」

「……まあ、寒い」

「そうか……また行くのか?」

「うん、冷え性の私には冬の奥州は辛い」


政宗は私に寒いか聞いたあと、そのまま七輪に近付いて手をかざし始めた

政宗の言葉を返しながら私は苦笑いを零す

相変わらず政宗は私が出て行こうとすると不機嫌になる、たかが幼馴染み、なんの戦力にもならない上にフラフラしている私に何故そこまでこだわるのか……

政宗に呆れながら一旦七輪から離れて上着を一枚羽織る


「ナマエ、いつ出るんだ?」

「んー……今すぐにでも出たいけど……支度とかあるから…明日かなぁ」

「また急だな……」

「私いつもそうでしょ?」


袖口に手を入れながら政宗にそう言う、そしてまた他愛もない話をして、女中さんが作った美味しいご飯を食べて、夜に支度をする事にした

夜はまた一段と冷えるが仕方ない、昼過ぎにつけた七輪の火をまた付け直して部屋を温める


「政宗、夜に女の人の部屋に来るなんて破廉恥だよ」

「……奥州から離れるのか……」

「今に始まったことじゃないでしょ」

「……そうだけどよ」


着替えなどを風呂敷に入れながら政宗と話す

そう言えば去年も似たような事を言っていたな、なんて事を思い出していると背中が急に暖かくなった気がした

一瞬、何が起こったのか分からなかったが首にある政宗の腕を見て、政宗が抱き着いたという事に気が付いた


「政宗、なにしてるの」

「……ナマエ、行かないでくれ」

「……行かなかったら私は凍死しちゃうから」

「頼む……」

「……政宗、アンタは一応領主なんだからこんな事しちゃ駄目でしょ、身分が違い過ぎる…そもそも、私が城内にいる事自体おかしいのにさ」

「俺はナマエに冬もいて欲しい、もちろん夏も……」


政宗は悲しい声で私にそう言った、そんな政宗の行動に私は困ってしまった

こうなってしまったらきっと政宗は私がいい答えをするまでし続けるだろう、でも駄目なのだ、私は冷え性だからきっと凍死してしまう

いい答えが出せずに私は結局政宗が離れるまで抱き着かれたままでいた、政宗が悲しい顔をして私の部屋を出た時、また冷たい風が部屋に入ってきた
 

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