Short(log)

□喧嘩人形さんとの会話
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今日は珍しく仕事が早く終わったのでコンビニに寄った

コンビニから出て少し歩くと、途中の公園のベンチに見覚えのある金髪が見え、まさかと思いつつ近付くと


「静雄…?」


やはり私の勘は当たったらしく、公園のベンチに元同級生の静雄が座っていた


「あぁ?」

「やっぱり静雄だ、久しぶり」

「……誰だっけ?」


静雄に挨拶をした瞬間ピシャリとそう言われ、思わず私は固まってしまった

同じクラスで、昼休みとか一緒にご飯食べて普通の人よりはよく話した仲だったんだけどなぁ……

目から熱いものが流れそうなのを必死に耐えつつ私は乾いた笑いをした、その時静雄が手に持っているプリンが目に入った


「……相変わらず…プリン好きだね…」


静雄のプリンを眺めながらしみじみと昔の事を思い出しながらそう呟くと静雄は驚いたように目を見開いた


「……?なんで知ってんだ……!!テメェまさか……ナマエか……?」

「ようやく気が付いた?……プリンか……高校の時よく買ってきたり作ってあげたよね、新羅にもドタチンにも臨……まあ色んな人にね……懐かしいなぁ」


静雄がようやく私の事を思い出してくれた事に少し喜びを感じつつ、昔の思い出を話す

勿論私は当時も今もただの人間、静雄や臨也等に近付くのは危険だけど、同じクラスだったし一緒にいて結構楽しかったので週に二、三日のペースで一緒にいた

私が高校時代を思い出している間に静雄も思い出したそうで、プラスチックのスプーンを手で持ちながら


「そうだなぁ……ナマエのプリン結構美味かったぞ」


と若干うっとりしながらそう呟いた、そんな静雄の表情に思わず口元が緩んだ


「ハハハッそりゃよかった」


静雄が私の事を完全に思い出したので、私は安心して静雄の隣に座った、静雄はこういう時だけは紳士で自然と私のスペースを広げてくれた

そんな静雄の行動に礼を言いつつ、私もコンビニで買ってきたばかりのクリームパンを頬張る


「しかしお前……なんか変わったな」

「?」


静雄の言葉に私は喋る代わりに首を傾ける、一応クリームパンを食べている最中なので話すのはマナー違反だろう

そんな私に静雄は気にせず話し続ける


「いや、なんか……大人っぽくなった……のか?」

「そう?嬉しいなぁ」


静雄の言葉に私はクリームパンを飲み込み、喜びを口にする

昔はよくドタチンに子供っぽいと言われていたので、そう言われると嬉しくなる

しばらく笑った後、またクリームパンを食べ始める、三、四回食べた後、静雄が空のプリンの容器をクシャリと潰しながら


「……ナマエは今、何してんだ?」


と聞いてきた、そんな静雄の言葉に私はお茶を飲みつつ答える


「ん?普通の飲食店の店員、静雄は?」


そう聞くと同時に私はもう一口お茶を口に注ぎ、キャップを締め飲み込もうとした、しかし静雄の言葉にそれは出来なくなる

静雄は持っていた潰れたプリンの容器をゴミ箱に向かって投げ入れたあと


「……借金取り」


と短く答えた、だが私を驚かすには十分すぎる単語だった


「ブフッ!?」

「うわッ!!……汚ねぇ……」

「……ごめん……驚いて…」


思わず口に含んでいたお茶を吹き出してしまったが、幸い目立った被害はない

静雄が若干引きながら私の方を見たが、カバンの中からタオルを取り出し静雄の視線から逃げる

なるべく触れて欲しくないので私は話題を変える事にした


「……でもバーテン服は脱がないのね……確か弟さんに貰ったんでしょ?」


話題を静雄のバーテン服に変えると、静雄はベンチの背もたれに深くもたれ


「あぁ」


と短く答えてきた、相変わらず静雄は素っ気ない返事が多い、そう思いつつ私はまたクリームパンを食べ始める


「いいなぁ私も弟欲しいな……」


少ししてクリームパンを食べ終わり、包装を小さく畳みながらそう呟くと、隣で静雄は小さく笑った


「って言う事で弟さんくれない?」

「やるもんかよ」

「なんてね、嘘嘘」


弟さんの事を言うと静雄の雰囲気がなんとなく怖くなったが気のせいではないだろう、多分静雄にとってなんとくタブーだったのだろう

雰囲気一つでこの怖さ……流石自動喧嘩人形……

若干冷や汗をかきつつ嘘だと言い、包装をゴミ箱に入れた時


「へぇ、静ちゃんなんで弟の話題が出たのに怒らないの?……もしかしてナマエの事が?あの自動喧嘩人形がねぇ……」

「!!!?」


静雄を茶化すような口調が聞こえ、思わず振り向くと犯人は当然情報屋もとい臨也だった


「いざ…」

「臨也ァァ!!テメェェ!!何言ってやがる!!」

「アハハハハ!!じゃあねナマエ、またゆっくり話そう」

「待ちやがれ!!臨也ァァァ!!」


臨也の名前を呼ぶ前に私の声は静雄の叫び声によってかき消された挙句、二人はどこかへ行ってしまった


「……」


なんとなく悲しくなったが、静雄が置いて行ったコンビニのレジ袋の中にもう一つプリンがあったのを見付けた

私は無言で静雄が置いて行ったプリンを食べながら家に帰った

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