10000HIT御礼企画
□5、鼻梁
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5、鼻梁
蝉の声が遠くから聞こえる中、少し調子の悪いクーラーが効いた部屋で、私は総悟を待ちながら一人、課題をやっていた
夏休み、沢山の休みと同時に、それを超えようとする程の量の課題が出る日
夏休みになって、早くも一週間が過ぎても、私の課題は渡された当時のまま、綺麗なままでいた
それを見かねて、幼馴染みの総悟はスイカを食べさせると言う約束で私と課題をやってくれると言った
約束の時間まで後三十分……長いような短いような時間の中、私は一人で唸りながら問題とにらめっこをしていた
「駄目だ……分からん」
そう言いながらソファーに凭れるように横になる
あ、なにこれ……なにこの最高の位置……フワフワしてきて眠くなってきたぞ……!!
そう思いながら睡魔に誘惑され、寝ようとした瞬間
「ナマエ〜来てやったぜ」
と、総悟の声がして目が完全に覚めてしまった
「……」
「おっ!!開いた開いた」
「……クソが……」
「え?今なんか言った?」
「いや別に」
総悟に小声で文句を言いながら私は部屋に招いた
そして、テーブルに広がる勉強用具を見て、総悟は頑張ってんなーなどと言いながら勝手に麦茶を飲み出した
「ちょっと、それ私の麦茶」
「いいじゃねぇか、あ、なに?もしかして関節キス?」
「違うわ馬鹿、まだ一口も飲んでないわ馬鹿」
そう言い合いながらクッションに乗り、さっき解けなかった問題を見る
総悟は持っていた鞄から私のとは違う課題を取り出して解き始めた、どうやら分からなかったら呼べと言う事らしい
私は気にせず、分からなかった問題を飛ばして次の問題に移った
それから、スイカをご馳走した後、ある時は休憩を挟んで、またある時は教え合いながら課題を終わらせていった
「あー!!疲れたァァ!!」
「おい、まだここ残ってんじゃねぇか、やれよ」
「うるさいなー……疲れたんだよ……」
「……」
総悟の言葉に口を尖らせながら答えると、一瞬顔をしかめてから総悟は少し速いスピードで白紙の紙に何かを書き始めた
何事かと思い、視線だけ総悟に向けていると、書き終わった紙を私に渡して
「ほら、これに代入すれば解けるから、それだけやれよ」
と、言ってきた、総悟の目が珍しく本気だったので私は渋々受け取り、言われた通りに代入して解き始めた
ものの数分で終わった問題を総悟に渡して確認してもらうと、少し目を通してから微笑みながら総悟は
「しっかり覚えてんじゃねぇか」
と、若干嬉しそうに言ってきた、そして私に返すと同時に顔を近付けてきて、気が付いたら総悟は私の目の前にいた
呆然と目を見開いていると、笑ったままの顔で私の鼻にキスをしてきた
「………………は?」
「この調子で頑張れよ」
「……………………ん?」
あまりの出来事に頭がついて行かず瞬きを繰り返していると、総悟はその間に荷物をまとめた
そして、総悟が部屋から出ていく時、ようやく何をされたか気が付いて、自分でも分かるぐらい真っ赤な顔で私は総悟を睨んだ
「総悟ォォォォ!!!!」
「じゃあ、俺は帰るんで、明日は行けないから明後日また来るわ」
「待てやコラァァァ!!何してくれてんの!!」
総悟に目一杯怒鳴ってもヘラヘラと笑い返され、結局総悟を逃がしてしまった
まだ静かになった部屋で、私は親が帰ってくるまでにこの赤くなった顔をなんとかしようと考えていた
鼻梁……愛玩(大切なものとして、かわいがったり、慰みにしたりすること)