10000HIT御礼企画
□4、耳
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4、耳
ほんのりと朝に煎れたコーヒーの匂いが残る部屋で、ソファーに座りながらノートパソコンで書類をまとめる私
その後ろで、私とソファーの間に座り、私を抱き締めて背中に顔を押し付けている奴がいる
私よりはるかに大きいソイツは、さっきからずっとこの調子だ、私より遅く起きて、急にフラフラと私の方に寄ってきて抱き締めてきたのだ
「ジョセフ、ちょっと……苦しいんだけど……」
「……おう」
「いや、おうって言う割に力緩めてないじゃん」
ジョセフ・ジョースター……まだ二十歳前の少年……と言うには大きいか……出会ったのは極々簡単な理由だ
私が就職した先のSPW財団の親族と言うか、家族のような存在の一人
ジョセフは上と下にいるジョナサンと承太郎と違って、茶目っ気があり、なんだか犬のような奴だ
そんなジョセフと私は、これでも付き合っている関係……なのだが、どうも実感がない……デートのような事はあまりしてないし、その……キスとかもしてない……
もしかしたら、今はそれで拗ねているのかも知れないと少しだけ思ってしまう
「もしかして、怖い夢でも見た?」
「……違ぇよ、俺はガキか」
「こうして私に抱き着いている時点でガキでしょ」
「…………」
「……どうしたのさ」
からかうようにして説得をしたが一向に抱き締める手を緩めない
一旦ノートパソコンを置いて、ジョセフに凭れながら、腰を抱き締める腕を撫でる
すると、ジョセフは一瞬ビクついたがすぐに落ち着き、グリグリと私の背中に頭を付けてきた
「ナマエ……」
「ハイハイ、なんですか」
「……ナマエを抱き締めていると落ち着くんだよ」
「……いつまでも抱き締められるこっちの身にもなってよ……」
「後少しだけ、このままで」
「……仕方ないなぁ……」
甘えてくるジョセフの言う通りにしてしまう私も、なんだかんだ言って甘えたいようだ
しばらくそのままでいると、少し眠くなってきて目を瞑った、そんな私を起こすようにジョセフは時々強く抱き締めたり、頭を付けたりしていた
そして、何回か半ば強制的に起こされた時、ジョセフは急に私の手を握ってきた
「ん?……どうしたの」
「……そう言えば、手を繋いでなかったなって……」
「そうだね……思えば、恋人らしい事してないね」
「……今度、デートに行こうぜ」
「仕事が片付いたらね」
のんびりとした口調でそう言い合った後、また私達は黙った
シン…とした完全な無音がしばらく続いて、次にジョセフがやった事は背中から私の首に頭を移動させる事だった
「ちょっとジョセフ……くすぐったい」
「ナマエ、いい匂いするな」
「嗅ぐな!!くすぐったいから離れて」
「やぁだ」
「可愛くないから、そんな風に言っても」
しばらく私の首に顔を埋めて、ジョセフは急に私の耳にキスをしてきた
くすぐったいような、なんとも言えない感覚がして、思わずジョセフの腕に爪を立ててしまったが、本人は全く気にしていないようだ
「んー……柔らかい」
「ちょっ……ちょっ!!」
耳元で話してくるのでどんどん顔が熱くなるが、ジョセフは気にせずに何度も耳にキスをしてくる
結局、ジョセフが満足するまで私は顔を真っ赤にして耐えていたので、その日は仕事は全く出来なかった
「耳柔らかいな」
「変な趣味に目覚めるなぁ!!」
「もう一回キスさせてくれよ、ナマエ〜」
「だが断る」
それから何度も何度もキスをしようとしてくるジョセフの攻撃を私は避け続けた
だが、耳フェチに走ったのはその日だけのようで、次の日からは普通に甘えてきたので、私の謎は深まるばかりだ
耳……誘惑(人の心をまどわし、その人にとって本来ためにならない状態へとさそいこむこと、また、そのさそい)