Short2

□初恋
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初恋は叶わない……そんな言葉を言った人は誰だろう……本当に恨むだろうその人を

そう思いながら、私は絵の向こうから二人を見つめる

イヴとギャリー……どうやら二人は私の事はおろか、あの美術館での出来事を忘れているようだ

何も言わずに私の絵の前を通っていくイヴ、そんなイヴは一瞬こっちを見たかと思うと、すぐに両親のところに向かって行った


「……バイバイ、イヴ」


私はゆっくりとそう呟いた、たとえイヴが忘れていても私だけは覚えておこう……

そう思いながらギャリーを探した、すると私のすぐ隣の絵を見ていた


「ギャリーも…忘れているんだよね……」


自嘲的に笑いながらゆっくりと静かに涙を流した

そして、お決まりのようにギャリーは私の絵を見たがすぐに別の絵のほうに向かって行った


「初恋は叶わないってね……」


私の言葉はゆっくりと響き、少しして消えていった

しかし、ギャリーは戻ってきた、何事かと思いながら見ていると


「……なんか見たことあるわね……パンフレットかしら」


と、ギャリーは首を傾けながらそう言っていた

しかし、それもいずれ終わるだろう、彼は私の事を覚えていないのだから

そう思い、期待せずにギャリーを見続けていると


「んー……分からないわ……アナタは分かる?ナマエ」


と、ギャリーは急に私の名前を呼んできた、しかし、すぐにハッとして


「あら?ナマエって誰かしら嫌だわアタシったら」


と、自分でツッコミを入れていた、でも、私はそれが嬉しくて仕方が無くて、届かないのに手をギャリーの方に置いて、ギャリーと頭と頭をくっつけるように頭を付けた


「ギャリー……ごめんね、私はもう一緒にマカロンも食べれないし、一緒に話せない……でも、それでいいんだ……イヴとギャリーを守れて……嬉しいんだよ……」


聞こえる筈もないのに私はギャリーに向かってそう言った

ギャリーは未だにパンフレットと絵を見比べている


「ギャリー……最期に一つだけ言わせて……ギャリー……」


ギャリーが見てなくても、私は涙声でゆっくりと口を開いた

今まで思っていた事を、一緒に行動をして一緒にイヴと手を繋いで一緒にメアリーとも話して……そんな大切な存在になっていった私達

ギャリーが友達以上恋人未満だと思っていてもいい、でも、私は


「大好き……大好きなんだよ……ギャリー……ギャリー」


その言葉を言った瞬間、私の目から止めどなく涙が溢れてきた、涙は止まることを知らず私の頬を伝って下に落ちていく

口の隙間から出てくる声を必死に押さえ、涙を流す

そんな中、ギャリーはパンフレットに書いてあった私の絵の説明を見て、不思議な絵ね……等言ってどこかに行ってしまった


「本当……初恋は叶わないね……ギャリー……最初で最後の私の好きな人になってくれて……ありがとう……」


ギャリーの背中に向かってそう呟いた、聞こえないギャリーはそのまま下の階に降りて行った

私はその後、また静かに泣いた


「……ナマエ……」


泣いている最中、後ろから私の名前を呼ぶメアリーの声がして、涙を拭い、笑ってメアリーとこの美術館の部屋に向かった

これからは、メアリーと共に暮らすんだ、二度と、私のような犠牲者を出さないように、二度と、イヴとギャリーのような大切な記憶を失った人が出ないように……

そう思いながらメアリーと遊んでいると、ギャリーの様な声色の声で


「ナマエ、また会いましょう」


と、聞こえたが、気にせずメアリーと遊んだ

イヴとギャリーが私の記憶だけの存在になってもいい、記憶の中にあるだけで充分だ
 

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